第一章 商店街、中小商店の危機に歯どめをかける3つの緊急対策

 「大型店やコンビニが次々できて、雑貨屋が4軒もつぶれた。売上げは最盛期の半分になっている。3日も4日も客が来なくても、当たり前になっている」(雑貨店)「大手スーパーの進出で売上げは落ちる一方で、夫婦2人で食べていくのがやっと。生きていくのが恐ろしくなる」(食品小売)といった、中小商店の悲鳴が全国津々浦々から聞こえてきます。
 私たちは、90年代流通ビジョンで「いま、本当に『消費者のため』の流通、住民本位のまちづくりをすすめようとするならば、国民生活に密着した中小業者の発展をはかるような政策方向こそ国民が求める流通政策の基本」という立場に立って、流通大資本に対する規制強化、住民のためのまちづくり、国民とともにつくりあげる地域経済と流通、などの提案を行ないました。
 しかし、この間に講じられた政策は、大企業本位の規制緩和、増税政策などことごとく国民要求をふみにじるものでした。
 この結果、商店数は22年ぶりに150万店を割り込み、商店街の95%は「停滞及び衰退している」という、戦後の混乱期を除けば例のない危機的な状況に追い込まれています。
 21世紀の展望をきりひらく上で、今日の事態は、一刻の猶予も許されないという情勢認識の上にたって、次のような緊急の対策を講じることを提案します。

1、地域を限定して大型店の進出を禁止する「緊急立法」を
 小売業(外食産業を含む)の倒産件数は、92年以来年間2000件を超す水準が続いています。なかには、ディスカウントのブルーハウスや、外食チェーンの京樽の倒産も含まれています。これらの背景の一つに、「大規模小売店舗法などの規制緩和による出店・開業ラッシュがある」(97.2.7「日経」)ことは明らかです。しかも、横浜市南区にみるように、1キロメートルの範囲内に三越、京急、ダイエー、マルエツが営業しているところへさらにイトーヨーカ堂が出店を計画、地域で大問題になるとか、小さなまちに大型店数店が一気に出店するなど、異常な事態が全国各地で生まれています。このような無秩序な出店は、商店街の衰退、中小小売店の廃業続出、まちづくりの障害など、被害をひろげつつあります。
 この事態に、確実に歯止めをかけることがまず必要ではないでしょうか。
 その点では、82年に、通産省が「出店抑制地域」を指定し、出店の一時凍結措置を行政指導で行なったことがあります。この経験を発展させ、公正、透明性と民主性も確保した、特別法の制定が必要です。
 私たちは、そのために、都道府県知事が指定した地域では、大型店の出店および拡張を当分の間、禁止とする「緊急規制法」を制定することを提案します。

2、独占禁止法違反の不公正取引の摘発、是正を
 1円テレビや0円プリントに代表される「価格破壊」や、正月営業、24時間営業など、商業道徳や業界秩序、地域の伝統的な慣習をかく乱・破壊する行為がひろがっています。このような大企業・大型店の行為が中小業者、住民、労働者など広範な層に大きな影響を与えています。
 「独占禁止法」では、大企業がその優越的地位を利用して、中小企業などに対して、不利益を押しつける取引を禁止しています。このような「不公正な取引方法」を政府の責任できちんと摘発、是正させることは当然です。
 いますぐできることを確実に実行することから、公正な取引ルールを確立していくことは、活力ある流通・商業の確立、日本経済再建の緊急の課題だと考えます。

3、空き店舗対策など商店街に対する行政支援の格別の強化を
 活気ある商店街の存在は住みよいまち、地域づくりにとって欠かせません。商店街が自らその役割を自覚して、まちの顔としての商店街づくりに消費者、住民とともに系統的な努力を続けているところも各地で生まれています。こうした自主的な努力を実らせる上で、行政が住民と共同する立場に立ち、資金や情報その他の最大限の支援を行なうことが必要です。現状では、予算も体制もきわめて不十分です。
 たとえば、国の「中小小売商業・サービス業振興対策」予算(97年度)では、商店街駐車対策モデル事業、商店街活性化モデル事業、商店街空き店舗対策モデル事業を「目玉政策」としていますが、これを利用できるのは、初年度全国で69の商店街にすぎません。
 国、自治体が、これまでの施策を見直し、商店街、中小商店が果たしている役割にふさわしい位置づけをして、支援策を格別に強化することを提案します。