業者婦人の地位向上を
学習重ね権利語って

全国商工新聞 第3372号2019年8月5日付

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全自治体での採択を祝う高知県連、県婦協の仲間たち。12年の道のりを語り合い、喜びを爆発させました

 「やった!」「全ての自治体で、私たちの思いが通じた」-。高知県ではこのほど、所得税法第56条
廃止を求める意見書採択を、県内35の全ての自治体で実現しました。業者婦人の地位向上を掲げ、初めての採択を勝ち取ってから12年。高知県内の各民主商工会(民商)、婦人部、県連、県婦協が粘り強く続けてきた運動が結実したもので、婦人部員や役員らは手を取り合い、喜びを爆発させました(関連記事)。

 「遠くまで行って、悔しい思いして帰ってきたこともあったねぇ」「県で最初に採択されて、全国業者婦人決起集会で発表した時のあの大きな拍手、忘れられんわ」。高知県内民商の婦人部長、役員たちは7月16日、晴れ晴れしい表情で県連事務所に集まって、12年の道のりを語り合いました。

12年間の頑張り

 「最初は56条って分からなかった。けど勉強して覚悟決めた。店のお客さんの紹介で議員さんにお願いしたら、『わしがやっちゃる』と言ってくれてうれしかったわ」と片山澄子県婦協副会長=スナック。
 高知民商婦人部副部長で全婦協常任幹事でもある中村秀子さん=建設=は「単価が下げられ、お父さんの稼ぎではやってけんとか、大変な中、時間をやりくりしてみんなで頑張ったが」と仲間に思いを寄せます。
 「56条の運動を通じて本当に強うなったよね。数年前は県婦協の役員さんの後をついて回るだけやったけど、今では自分からガンガン話しゆうけんね」と言われたのは、安芸民商婦人部の近藤恵子部長=建築。「自分では気付かんけど…」と照れ笑い。
 「本当に感動したし、ほっとした」と、みんなの思いが共通して出されたのは、最後の採択自治体となった室戸市。6月議会(7月5日)で、安芸民商の鈴木善久副会長ら3人が陳情した意見書を全議員が紹介議員となって、全員一致で可決しました。県婦協の山﨑真理副会長=刃物製造=は「私たちはこんなすごい運動しよったがや、とあらためて思ったわ」と涙ぐみます。

差別は許せない

 高知県婦協は15年以上前から、役員を中心に学習を重ねてきました。先頭に立ってきたのは、田村成子県婦協会長=建築塗装。「56条は業者婦人の立場を無視している」とはっきり認識したのは、交通事故の経験でした。「白色申告の業者婦人は、86万円の専従者控除を基に算出して、保険会社から1日約2000円の保障しか認められない。主婦だったら4500円。私らは家事もして、仕事だってしてる。その分はどこへいったが、おかしい」
 この思いを胸に「56条は私たちへの差別」「後世に残しちゃいかん」と仲間とともに立ち上がり、05年には県内の女性団体に賛同署名を呼び掛け、議会にも請願。しかし「青色にすればいい」という反応で賛同や採択に至りませんでした。これを受け、2年後に作成した意見書には「税制上は、青色申告にすれば給料を経費にできるが、同じ労働に対して、青色と白色で差をつける制度自体が矛盾している」と明記。JA高知女性組織協議会で賛同を受け、県議会でも採択を勝ち取りました。
 その後は、県内の自治体をくまなく回りました。大切にしたのは議員に会って熱意を伝えること。不採択や冷めた反応が続いても、「さあ次はどう切り崩そうか」「断られても土佐の女はへこまん」と知恵を絞り、行動を続け、12年に25自治体まで採択が進みました。

共感広がり力に

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最後の採択となった室戸市役所前で。中心となった安芸民商は半年で5自治体の採択を勝ち取りました

 全自治体採択に向け、最後の原動力になったのは、昨年8月に高知県で開かれた日本母親大会でした。民商婦人部も成功に向けて大奮闘。安芸地区では、近藤部長が実行委員長を引き受け、その中でつながった女性たちに56条の矛盾を訴え、「話ができる議員を紹介してほしい」とお願いすると、すぐ連絡を入れてくれ、懇談が次々に実現。民商役員の協力を得ながら、12月議会では3自治体で採択されました。
 高知県連常任理事会と県婦協幹事会は「9月の全国業婦人決起集会までに、やりきろう」と確認。仁淀川民商、中村民商も、婦人部と民商役員が一体となって行動し、全自治体採択を達成しました。
 田村県婦協会長は「婦人部のみんなが同じ思いを持って行動し、それにたくさんの人たちが力を貸してくれて道が開けた。意見書を現実のものにするため、これからも歩んでいきたい」と意気軒高です。

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※所得税法第56条とは業者婦人など家族従業者の「働き分」を必要経費として認めず、申告の仕方で不当に差別するもの。白色申告では、配偶者は年間86万円、その他の家族は50万円の控除しか認めておらず、社会的にも経済的にも自立できない状況を生んでいます。
 「所得税法第56条の廃止を求める意見書」は、全国の523自治体で採択されています。(7月24日現在)

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