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国民年金
国民年金保険料の滞納で妻の給与の差し押さえも
社会保険事務所が「文書」送り付け 各地で徴収強化
広島・府中民商の谷本進さん(54)
生活実態訴え交渉
 「国民年金の滞納処分がにわかに厳しくなっている」‐。広島・府中民主商工会(民商)の谷本進さん(54)=トラック運送=に昨年12月、国民年金保険料の滞納で「妻の給与を差し押さえる」という文書が社会保険事務所から送られてきました。

全商連は国民年金保険料の強制徴収や資産の差し押さえをやめるように、社会保険庁と交渉しました(04年10月20日)
 広島社会保険事務局・備後府中事務所から届いたこの文書は、「国民年金法第88条第3項の規定により『配偶者の財産(給与・預貯金等)を差し押さえる』」という警告文書でした。
 さらに「事業主・給与担当者(カッコ内に妻の勤め先の会社名を明記)に面談し給与支払日・支給金額を聴取、即日差し押さえを執行します」「金融機関の預金担当者に面談もしくは文書照会」とも書かれており、驚いた谷本さん夫妻は府中民商に相談し、社会保険事務所と交渉しました。
 谷本さんは不況下で業績が低下、00年と01年の国民年金保険料は免除が認められていました。しかし、03年に申請が却下されてからは保険料が払えず、何度か「納付勧奨通知書(催告状)」が届いていましたが、「ぎりぎりの生活費の中では、なかなか国民年金保険料にまで手が回らなかった」と言います。妻は市内の企業に勤めています。
 交渉の結果、滞納分を少しずつでも払っていくことになり、後日になって民商事務所を訪れた担当課長は、「強制徴収をしないための文書だった」と釈明。「このような滞納処分は社会的影響が甚だしいことは分かっていたが、『業務命令』であるからには致し方ない」と強調していました。
 社会保険庁は「支払う能力があるのに納付する意思のない人」を対象に、徴収体制を強化し、全国で3万人に「強制徴収」することや、催告状や警告文書を乱発して、当事者に注意を喚起する方法をとっています。
 徴収にあたる社会保険事務所の職員の間では、こうした強制徴収は「多くの滞納者がいるので、社会問題にもなる」と、とまどいや反発の声もあるようです。
 国民年金の未納率は増えつづけ、02年度の未納率は過去最高の37・2%。このままでは制度自体が維持できないと、国は国民年金の窓口を地域の社会保険事務所に一本化するなど、制度の引き締めと保険料取り立てにやっきとなっています。
 保険料の徴収率を上げるために、業者の苦しい実態には目を向けず、配偶者の給与を差し押さえるという、強行手段に出ることは許されるものではありません。
 中小業者にとって、安心して営業と生活ができることこそ切実な願い。憲法25条に基づく社会保障としての年金権の確立こそ必要です。
 
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