高すぎる国保税経軽減へ
子どもの均等割りを減免 岩手県宮古市

全国商工新聞 第3358号2019年4月22日付

公費投入で19年度から

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 高過ぎる国民健康保険料(税)の負担軽減を求める声が高まっています。とりわけ収入に関係なく、世帯の人数に応じて保険料が増える均等割の減免は切実な願いです。岩手県宮古市では4月から、「子育てにも家計にもやさしい施策」として、18歳以下の子どもの均等割減免をスタート。三陸鉄道リアス線が全線開通(3月23日)し、桜のつぼみも膨らみ始めた同市を訪れると…。

「本当に助かる」


 「えっ。国保税が減免されるんですか。本当に助かります」。驚きながら話してくれたのは、宮古市内で夫とともに運送業を営む40代の女性です。

50万円超の負担

 高校生の子どもを含め6人家族。国保税は世帯で年間50万円を超えます。毎年、市から送られてくる納付書は「払えなくて見るのさえ怖く」なり、滞納が続きました。しかし7年前、宮古民主商工会(民商)に相談したことをきっかけに分割納付(分納)を市と合意。以来、家計を切り詰めつつも払い続けた結果、完納の出口も見えてきました。
 「やっとの思いで払ってきた国保税。子どもの分が減免になればちょっとは肩の荷が下りるかな」と笑顔を見せました。
 宮古市が2019年度から始めるのは「18歳以下(高校生以下)の子どもの数に応じて税額が増える均等割額」の減免です。対象となるのは501世帯、836人で、予算は1833万円(初年度のシステム改修費を含む)。法定減免を受けていない世帯の場合、子ども1人につき年間2万5400円、3人では7万6200円の減額となります。
 それでも先の女性の場合、年間の国保税は約47万円で、負担は大きいままです。

協会けんぽの倍

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3月23日に全線開通となった三陸鉄道リアス線(宮古-釜石間)と18年10月にオープンした宮古市役所の庁舎

 安心して医療を受けられるための国保料(税)が、なぜ払えないほど高く、家計を苦しめるのか。その最大の原因は、国がかつて45%だった医療費に対する国庫負担率を30%程度まで引き下げたことです。
 もともと国保加入者は75歳までの高齢者、失業者、非正規労働者など低所得者層が多く、加入者の「4割が無職」。加えて、所得や資産だけでなく、収入に関係なく世帯や家族の人数に応じてかかる算定方法も導入しているため、国保料(税)を引き上げる大きな要因となっています。
 中小企業の会社員などが加入する「協会けんぽ」に比べても1・3倍(本人負担)。東京23区在住の年収400万の4人世帯で比較すると、国保加入者の負担は年42・6万円ですが、「協会けんぽ」は19.8万円で、その差は2倍以上です。国保は「低収入でも高い保険料」という構造的な問題を抱えているのです。
 宮古市をみても年収400万円、両親と子ども2人の4人世帯で比べると、国保税は年41万8000円。一方、「協会けんぽ」は22万8200円で、ほぼ2倍、約19万円もの格差です(図)。

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 こうした加入する保険の違いによる格差の実態などを明らかにし、昨年6月、12月の2回の議会で、均等割の廃止などを山本正徳市長に迫ったのが二人の日本共産党議員でした。
 「子育て支援」を掲げる山本市長は、この提案を受け、6月議会では「検討したい」と回答。今年2月には、19年度予算に「国民健康保険税の子どもの均等割減免」を盛り込み、均等割の全額免除が実現しました。
 予算案の審議に先立って行われた国保運営協議会(国保の重要事項に関し、市長の諮問に対して審議する機関)も全会一致で減免措置を承認。同協議会の上屋敷正明会長は「宮古市を子育てしやすい地域にするということ。国保税の負担が減るだけではなく、他の自治体から移住する人も出てくるかもしれない。全国に波及する素晴らしい制度」と語ります。
 子どもの均等割減免の申請にあたっても「これまでの国保の申請をもって減免申請とみなすので、改めての申請は不要」(市民生活部担当者)という仕組みをつくりました。

全国25自治体で

 この数年で急速に拡大してきた自治体による子どもの均等割減免。全国25自治体で実施されています(下の表)。その後押しをしているのは、全国知事会や全国市長会です。数年前からともに「子どもに係る均等割保険料(税)を軽減する支援制度の創設」を提言。全国知事会は14年には、国保の基盤強化と負担の公平へ「公費1兆円の投入」を訴えてきました。

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 宮古民商の崎尾誠会長=自動車整備=は言います。
 「中小業者にとって高い国保税は大きな負担。今回の宮古市の決断は業者を後押ししてくれる。しかしまだ、負担は重い。民商としてもさまざまな提案を行い、“元気な宮古、子育てのしやすい宮古”をつくっていきたい」

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