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  トップページ > 国保・年金のページ > 国保 > 全国商工新聞 第2836号 6月30日付
 
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エッ! 政管健保が10月に解体
都道府県ごとの保険料に
中小企業や労働者・家族3600万人に影響

 政府管掌健康保険が10月に解体され、公法人の全国健康保険協会に移管されます。全国一律の保険料を都道府県ごとに地域の実情に応じて変え、医療費抑制を図るのが狙いで、保険料率で最大1・2ポイントの地域格差がつけられる可能性があります。健康保険協会の業務の実施体制と問題点を解説します。

宮城県社会保障推進協議会副会長
佃十尚さんに聞く

 宮城県社会保障推進協議会は3月27日、政府管掌健康保険が解体され県別に組織改変される問題で、宮城社会保険事務局と懇談を行いました。

▼全国健康保険協会に
 政管健保が社会保険庁から公法人としての全国健康保険協会(本部)に変えられ、宮城県支部に移管される問題で、本部と支部との決定や権限の関係はどうなるのか、と質問。
 社会保険事務局は「すべて本庁の指示に基づいて具体化する。保険料も今年1年は現在の料率を踏襲し、1年後に宮城県の料率を計算し、全国協会が最終決定を行う」と回答しました。

▼時期など指示まだ
 県支部発足の時期はどうなるのかとの質問には、「時期も含めてまだ指示はなく答えられない。ただ本庁の指示によって事務局内に移行のためのプロジェクトチームを作り進めている」と回答。すべては指示待ちで、県には権限が全然ないことが明らかになりました。

▼政管健保のみ変更
 今回の改組になる対象は政管健保のみで、公務員共済や健保組合は対象にならないのか。宮城県では何人の対象者がいるのか」との質問には、「改組の対象は政管健保のみ。県全体では26万844事業所で38万3315人の被保険者と32万6286人の被扶養者が対象」と回答。従業員10人未満の事業所が全体の約72%、を占めています。働く人とその扶養者を含めた約70万人に影響が出ることが明らかになりました。
 どんな仕組みで被保険者等の意見は反映されるのかとの質問には「詳細は指示がないので不明だが、従業員10人以上の事業所に設置されている社会保険委員(宮城県は3374人)の意見を聞くことになるのではないか」と回答。しかし、労働組合の代表でもなく、事業主や従業員・事業所と社会保険を結ぶ、民間の協力者にすぎない社会保険委員では被保険者の利益代表者にはなり得ません。

▼保険料も分からず
 保険料は、いつごろ案ができ、どこで決定されるのか。保険料の算定基礎になる標準報酬の設定はどこでするのか。計算の仕方は変更するのか。県ごとに被保険者数などに格差があるが調整はどうするのか‐‐。詳細はいずれも不明で「宮城の保険料も全国協会で決定されるが現在は不明」との回答でした。
 10月実施を目前にして、肝心の保険料の算定基礎になる標準報酬の設定なども不明で、そのずさんさがますます明らかになりました。
 しかも、最悪の後期高齢者医療制度でも、一応、広域連合の議会があって保険料や課税標準などが審議されるのに比べて、議会のチェックもなく全国協会の9人の運営委員会ですべてが決定されるのは大問題です。

政府管掌健康保険
 中小企業の従業員などが加入する最大の健康保険組合(本人1882万人、家族1671万人=合計3552万人、04年3月末)であるだけに、中小企業の経営にも大きな影響が予想されます。
 

厚労省試算 地域別保険料で「格差」
 医療費抑制狙う

 厚労省は06年11月に、政管健保を、国の運営を離れて都道府県ごとに再編した場合、保険料にどれだけの「格差」が付くかの試算(左の表参照)を発表しました。「都道府県ごとに地域の医療費を反映した保険料を設定する」「都道府県単位の財政運営を基本とする」としており、最高は北海道の8・7%。最低の長野県7・5%とでは、一人あたりの保険料率で1・2ポイントもの差がつきました。

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全国健康保険協会とは
社保庁解体し設立、詳細は不明

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10月に解体される社会保険事務所
 この制度は、10月から実施される計画ですが、その内容はほとんど知らせれていません。小泉内閣の下、年金制度の大改悪、後期高齢者医療制度新設とともに06年6月、自民・公明両党の強行採決で成立しました。
 08年10月を目途に社会保険庁を解体し、「ねんきん事業機構」と、全国一本の「全国健康保険協会」の設置等を決めたものです。

どう変わる
・概要 健康保険組合に加入していない被用者の健康保険事業を行う保険者として全国健康保険協会が今年10月に設立されます。しかし手続きや徴収業務はねんきん事業機構が代行。
・組織 中央に運営委員会(事業主3人、被保険者3人、学識経験者3人の計9人を任命)を設けます。都道府県ごとに支部を設け、評議会(評議員は、事業主、被保険者、学識経験者から委嘱)を置きます。
・財政運営 都道府県ごとに、年齢構成や所得水準の違いを調整し、地域の医療費を反映した保険料を設定。
・保険料 協会設立後1年以内に都道府県単位保険料率を決定し、それまでの間は政管健保の保険料率を適用。
・財政運営 予算や事業計画、財務諸表等は大臣認可。
 保険料率の変更は大臣許可で、保険料率の変更命令や執権変更の権限も大臣に付与。
・保険料率アップ 保険料率の上下限を現行の1000分の66〜1000分の91から、1000分の30〜100にアップ。
・施行期日 08年10月1日。 

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問題点こんなに

 すべて本部決定
 都道府県の保険料率などの決定権は、すべて本部の9人の運営委員会が持ち、議会のチェックは一切ありません。財政の原則である租税法律主義に反します。
 施政者の意向が
 運営委員会には労働組合の代表は入っていません。そのため被保険者の声は届かず、施政者の意向で運営される危険性があります。
 県単位の保険料に格差
 全国一律の保険料が廃止され都道府率を設定します。保険料率が年齢構成の高い県、また所得水準の低い県ほど、保険料率が高くなります。地域「格差」が生まれるのは明白で、医療費抑制につながります。
 県ごとの財政運営となり、保険料の改定だけでなく、将来は県ごとの診療報酬改定にもつながる重大な危険性があります。
 事務費も削減か
 現行では社会保険事務所の人件費や事務費は、国の一般財源負担から13%の国庫補助(05年度は7967億円)が行われています。
 その理由は共済組合や健保組合なとど比較して(1)標準報酬が低く保険料収入にも影響していること(2)加入者には高齢者も多く受診率も高いこと(3)福利厚生や健康管理等も劣ること(4)中小企業等の経営状態は依然厳しい状況にあること(5)健保組合の運営が困難な場合は政管健保が受けざるを得ないこと‐‐からです。
 公法人化することは、憲法第25条が規定する国の責任を放棄することにつながり、結果として保険料の引き上げにつながりかねません。
 中小業者を直撃
 政府管掌健康保険の加入者の75%は従業員9人以下の事業所です。まさに、中小企業とそこで働く労働者とその家族を直撃します。
 保険料アップに
 保険料は中小企業と従業員との折半になっています。改悪後は、政府が責任を持たないため、医療費等の上昇が、すぐ保険料のアップになり、中小企業の経営を圧迫します。
 早急に、厚生労働省や社会保険庁、県社会保険事務局と交渉し、ただしていくことが求められています。


   
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