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後期高齢者医療制度で17自治体が国保料引き上げ
便乗値上げ許すな
奈良県連が全自治体を調査 「国の言い分と違う」
後期高齢者医療制度の導入を機に、国民健康保険料(税)を大幅に引き上げようとしている自治体があり、大きな問題となっています。「便乗値上げだ」「後期高齢者医療制度は廃止しかない」と怒りの声が上がっています。
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後期高齢者医療制度廃止と国保の便乗値上げを許さないために、請願はがき運動に取り組む奈良県連(県連総会) |
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県社保協が20万枚作製した請願はがき付きのチラシ |
奈良県の実態
奈良県商工団体連合会(県連)は5月、県内のすべての市町村を対象に国保料賦課状況の聞き取り調査を実施。
それによると、国保料を引き上げない自治体は15自治体にとどまり、後期高齢者医療制度への支援金や資産割の廃止を理由に、17自治体が国保料を引き上げたことが分かりました。
5〜10万値上げ
奈良県連の試算によると、「年間所得200万円、3人家族、資産無し」のケースで、08年度の国保料が天理市、郡山市で約10万円、高田市、上牧町、王寺町で約8万円の引き上げになり、14市町村が5万円以上引き上げることが判明。
「国保会計の負担を軽減するための制度で、後期高齢者支援金で国保料(税)が上がることはない」と説明してきた国の言い分と違うことが、はっきりしました。
便乗値上げか
国保料を引き上げた自治体は、後期高齢者医療制度を口実とした便乗値上げの疑いが強くあります。
今年度から、これまで国保制度にあった老人保健拠出金(全国の老人保健の費用を公平に負担するための拠出金)に代わり、後期高齢者支援金が導入されました。国保財政の総負担は拠出金のときは「給付費×5割」であったのに対し、支援金では「給付費×4割」になるため、支出全体は軽減されます。
ある自治体は08年度以降、市町村国保財政はいったん黒字ないし改善基調になる見込みだとしています。しかし、急速な高齢化の進展などに伴い、医療費、後期高齢者支援金および介護納付金などの増加が見込まれることから、数年後には再び悪化し、多額の赤字を抱えることが予想されることを国保料引き上げの理由にしています。
なぜ、根拠がはっきりしない理由で国保の引き上げを決めたのでしょうか。
4月に開催された「2008年国保改善運動全国交流会」の中で、日本共産党中央委員会政策委員の谷本諭さんは、後期高齢者医療制度実施を理由に国保料値上げを表明する自治体の動きに触れ、「全体として国保の支出は軽減される。値上げする自治体は、財政健全化法(注)への対応を考えている傾向がある」と指摘。
週刊誌「サンデー毎日」(5月4・11日合併号)も、「夕張市のような財政再生団体として国の管理下おかれるような事態を避けるために、国保会計で大きな赤字を抱えている自治体は、赤字解消のために保険料引き上げの動きを加速させている」と報道しています。
請願はがき運動
奈良県連も加盟する奈良県社会保障推進協議会では、後期高齢者医療制度の廃止と国保料(税)の便乗値上げを許さないために、請願はがきを集め、国会に届ける運動に取り組んでいます。
また、請願はがき付きのチラシ20万枚を作製し、うち10万枚を8日の新聞に折り込みました。
その請願はがきが続々と社保協事務所に返信され、ひとこと欄には「目の前が真っ暗です」「これ以上引き上げられたら通院できない」「年金を唯一の頼りに細々と生きている老人を守って」など切実な声が。署名は16日現在で273人分が届いています。
奈良県国保をよくする会は、3月に国保「1世帯1万円を引き下げ」を求める署名を4万786人分集めて県に提出。奈良民主商工会(民商)も加盟する市国保をよくする会は3月、市長に1万8000人分の国保値下げ署名を提出しました。
その運動が市を動かし、奈良市では初めて一般会計からの繰り入れ2億円が実現。しかし、後期高齢者医療制度を理由に、保険料は1人当たり平均で年約3800円上がることになっています。
後期医療は廃止
今後は、後期高齢者医療制度の廃止と国庫負担金増額や減免制度の拡充など国保の改善運動を結んで進めていくことに全力を挙げることにしています。
(注)財政健全化法
07年6月成立し、09年4月1日施行予定。自治体の財政破たんを防ぐため、問題のある自治体を健全化団体として国の監視下に置く法律。地方自治の破壊、住民の暮らし・権利を守る自治体責任の解体、ペナルティーとして低利の資金調達ができなくなるなど、多くの問題が指摘されています。 |
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