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小規模工事
【変わる業界】飲酒運転取り締まり問題
料飲業者が飲酒運転防止に努力
キー預かり、タクシークーポン
お客さんや運送業者と共同広げ
 飲酒運転による事故が多発するなか、料飲業、運送業など関連業界では飲酒運転を防止するさまざまなとりくみを始めています。政府は遅まきながら飲酒運転防止につながる自動車開発の検討を打ち出しましたが、同時に飲酒運転の取り締まり強化の一つとして酒類の提供者への罰則強化を打ち出そうとしており、波紋を広げています。料飲関連業界は「お客さんが安心して飲める憩いの場を提供するため」と対策に必死ですが、警察の行き過ぎた取り締まりで窮地に立たされるところも出ています。

「ぜひ多くの組合がとりくんでほしい」と話す吉田組合長。店の壁には飲酒運転をいましめるポスターなどが
 警察庁は運転手へアルコールを提供した人への罰則強化を盛り込んだ道路交通法「改正」案を、来年の通常国会に提出する予定です。

事故をほう助したのは酒の規制緩和
 道交法65条は飲酒運転を禁じ、飲酒運転のおそれのある者への酒類の提供や飲酒をすすめることを禁じてはいるものの罰則規定はなく、現在は刑法のほう助罪や教唆罪を適用。02年〜05年のほう助罪の摘発は690件ですが、従犯ということで多くは罰金のみ。道交法の罰則規定の新設で、料飲店に厳しい姿勢をとろうというものです。
 飲酒運転多発の危険性を指摘していたのが酒販店。政府がすすめた酒類販売の規制緩和で今年9月から酒取り扱い店が激増。東京・渋谷区の酒販店、吉川和一郎さん(72)は、「業者がどんどん減った。われわれは対面販売だから責任をもって売れるが、規制緩和で酒は野放しだ」と言います。
 酒の野放し販売絶対反対と運動してきた全国小売酒販組合前会長の幸田昌一さんは「飲酒運転事故をほう助したのは酒の規制緩和だ。お酒は人間関係を豊かにし、健康維持にも役立つが、反面、過度の飲酒は弊害も起こす。だから酒類免許制度の目的に未成年者飲酒の防止や国民の健康、福祉、社会秩序の維持、飲酒による交通事故防止などが制度化された。実質的に制度が廃止され、国民の飲酒環境は悪化した。酒類の社会管理の放棄は、国家の存亡にかかる大問題」と指摘します。
 また、東京のある運送業者は「諸外国はアルコール分が検知されるとエンジンがかからない車の開発や防止装置の義務付けなど国が対応している。国と自動車メーカーの責任こそ大きい」と強調します。

料飲組合が始めたキーホルダー作戦
 宮城県は9月、国に先駆けて飲酒店や運送業者に飲酒運転への対策を義務付ける飲酒運転根絶条例づくりの検討に入りました。「これで問題が解決するのか」と疑問を投げかける声が相次いでいます。
 一方、同県加美郡の「加美地区料飲店組合」(98店)は7月から「飲酒運転根絶キーホルダー作戦」として、お客さんの車のキーを預かり、お客さんが酒を飲んだらキーを返さず、運転代行を頼むか家族に来てもらう運動にとりくんでいます。
 とりくみのきっかけになったのは昨年、仙台育英高校生3人が交通事故死した事件。組合として何ができるか加美警察署、加美交通安全協会と研究し、この作戦を考案したもの。吉田辰彦組合長(69)は「お客さんに気分よく作戦に協力してもらえるよう、店主や運転代行業者と話し合い、料金のサービスも交渉していきたい」と話します。

飲酒問題は業界共通の課題
 しかし、各地で飲食店経営者が「飲酒ほう助」で書類送検される事態も発生。三重・松阪では、料飲店に警察官が張り付き、お客さんが車で50メートル近く走ったところで呼び止め、飲酒検査を繰り返していることから、客足が途絶え、転業する人も出るほどです。
 広島・福山民主商工会(民商)は4日、「タクシーチケットやクーポン券をお客さんに使ってもらい、飲酒ほう助から経営者を守れないか」と4日、坂本良次副会長(焼肉店)、川崎博義常任理事(懐石料理店)など代表4人が市のタクシー会社大手・アサヒタクシー株式会社を訪問。飲食店経営者の声を伝えました。
 「金額の入ったチケットなら、どのお客さんが使ってくれたか分かり、安心して提供できる」と話すと、アサヒタクシーの勝岡敏樹常務取締役は「チケットに利用限度額を印刷することは可能。初乗り運賃とか500円とか決め、独自の発行を検討したい」と積極的な姿勢でした。
 「タクシークーポン券」(県タクシー協会発行、どのタクシーにも利用可)は、500円券で10枚綴りが5千円。1枚ずつ使えてお釣りも出ますが、運賃を後払いで店が負担する「タクシーチケット」は、運賃の限度額が指定されないものが主流で、店側にいくら請求されるか不明で、使いにくいものとなっています。
 勝岡常務は「当社も何か手を打たなければと考えていた。今度は私どもの方からうかがいます」と、提案を快く受け止めてくれました。
 飲酒運転をなくし、お客さんに喜んでもらうため、川崎さんは9月末から、店から運転代行を呼んだ場合、業者が発行するサービス券に上乗せして500円の現金を渡し、顧客確保に努力しています。
 坂本副会長は「飲酒問題は飲食業界とタクシー業界共通の課題と分かった。年末を控えて安心して飲んでもらうよう連携して頑張りたい」と話しています。
 
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