第21回中小商工業全国交流・
研究集会(前号続報)

全国商工新聞 第3379号2019年9月30日付

基礎講座

経営見直すチャンスに 事業計画作りと実践

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事業計画書の重要性や計画作りに必要な考え方などを学んだ「基礎講座」

 「基礎講座 事業計画の作り方と実践方法」では、中小企業診断士の上品忍さんを講師に、事業計画書の重要性、計画作りに必要な考え方などを学びました。
 上品さんは、事業計画について、「経営者の考え方が明文化されることで、進む方向を明確にできる」「商売を見つめ直せる」「内外の関係者に方針を示せる」と重要性を強調しました。(1)現状を把握(2)方針、目標を定める(3)そのギャップを埋める実行プランを立てる-の三要素でできていると説明。現状把握のためのSWOT分析やビジネスモデル図、方針決めに役立つ「ランチェスター戦略」、実践方法を考えるのに知っておきたい「マインドフロー」などの考え方を、商工新聞の事例を示しつつ紹介しました。
 また、経営計画書作成を力に「小規模事業者持続化補助金」「事業承継補助金」「IT導入補助金」などの補助金に挑戦することを呼び掛けました。
 会場からは「法人化したのでITの力を経営に生かしたい。補助金が使えるか」「経営計画書の学習をしたことをきっかけに、民商で事業承継にも取り組み始めた」など意欲的な質問・意見が出されました。

第9分科会

若い力を商売発展へ 事業承継と経営革新

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事業承継の悩みや実践が交流された分科会

 第9分科会「事業承継と経営革新を考える」では、横浜国立大学の三井逸友名誉教授が助言者を務め、事業承継を機に経営の見直しを行っている事例が交流されました。
 三井名誉教授は、後継者不足による中小企業の廃業が深刻になっている現状を紹介し、第三者承継や家族経営の事業承継における課題と可能性について説明。「家族経営の経営者には、主体的な判断と選択、『つくりだす』『前に進む』意思と意欲が必要」「経営のための知識と思考法を身に付け、自分の人脈と仲間を築いていくことが大切」と強調しました。
 3人が事例を報告。群馬県高崎市で「(有)萩原電子システム」を営む萩原誠さんは、社内での後継者探しが難航し、現在は娘婿が後継者として入社して、仕事を覚えている現状を紹介し、「35年の実績、蓄積してきた技術とノウハウを生かして、顧客の要望に応える事業を展開したい」と語りました。
 東京都世田谷区で父親とともに自家焙煎のカフェ「アランチャート」を営む深澤結子さんは、1年前に母親が亡くなり、父親を助けたいと栄養士の勤めを辞めたことを発言。「父の焙煎の技術と私の栄養士の力を合わせて、これまでとは違うことに挑戦したい」と前向きに話し、会場からの応援の拍手に包まれました。
 長野県伊那市で「カヤネイチャービジネス」を行っている鈴木さかゑさんは、かやぶき屋根などに使われるカヤの卸業を息子さんと始めて10年目。人があまりやっていないことに着目して、世の中の変化に対応して、さまざまな事業を行ってきた経験を紹介。「お客さんを第一に、息子と一緒にこれまで進んできた」と語りました。
 会場からは、「2店舗持っていた飲食店のうち、1店舗を従業員に承継。若い人の斬新な発想をまねながら頑張りたい」(兵庫)、「息子と二人でプラスチック金型を製造している。息子に譲るに当たり、設備投資に踏み切った」(大阪)などの発言も相次ぎました。
 座長の佐々木亮・全青協議長も、行政書士事務所の業者2世として「親と自分の特性を生かしていく承継は、同業他社への開業のようなもの。マッチングにも力を入れたい」と語りました。
 三井名誉教授は「事業承継は、ケースバイケースで、きめの細かい専門的な体制が必要になる。日本の未来がかかっているこの問題に知恵を出し合って、次の世代にバトンタッチしていこう」とまとめました。

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