第21回中小商工業全国交流・研究集会せまる
中古農機具で就農支援

全国商工新聞 第3370号2019年7月22日付

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長野・須坂北信濃民商会長 「宮川オート」経営

宮川 光男さん=自動車整備

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宮川さんが作ったブドウ園の棚下作業用の改造シニアカー

 「循環型経済の確立で個性豊かな地域社会を」─。9月7、8の両日、長野県で開かれる第21回中小商工業全国交流・研究集会では、各地の豊かな実践が交流されます。長野・須坂北信濃民主商工会(民商)の会長で「宮川オート」を営む宮川光男さん=自動車整備=が、中古農機具の修理・販売の第2創業の実践を紹介する予定です。就農青年たちを応援し、高齢化や過疎など地域の課題を共に解決することで、「多くの若者が移住してくるような村にしていきたい」と活動しています。

移住する若者増え

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高山村の「地球クラブ」の会合に集まった移住してきた就農青年たち

 宮川さんが事業を営む高山村は、長野市街から千曲川を渡り、小布施町や須坂市と境を接する地域。平野から東側には2000メートル級の山々が連なる群馬県境まで、東西に広がっています。村の西部に広がる松川(川の名)の扇状地は、リンゴやブドウの栽培に適しており、最近ではワインの生産も盛んです。国内でも有数の高品質のワインブドウ産地として評価が高まっており、移住する農業青年も増えています。
 高山村産業振興課では「地球クラブ」という親睦団体をつくり、村で農業を始める青年らの支援を行っています。現在、43人が所属。神奈川、京都、千葉など各地からのIターン者です。

新規就農を後押し

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 長野県では2003年度から、新規就農希望者を受け入れ、独立就農を積極的に支援したいと考えている熟練農業者を「里親(農業者)」として登録。独立就農を希望する新規就農希望者に「里親」として紹介する「新規就農里親制度」に取り組んでいます。
 高山村でも、この「里親」をはじめ、県と協調してさまざまな就農支援(研修費助成=月2万円・2年限度)を進めています。また、村内の家庭や旅館などから出る生ゴミなどを発酵させて作る有機堆肥を農地に入れるほか、人工フェロモンを利用する害虫防除法で農薬散布を減らす減農薬栽培など、早くから環境保全型農業の先進地としても注目されています。
 田村進一さんは7年前に千葉から移住。2.5ヘクタールの畑を借り、ワインブドウを栽培しています。「夢は20年計画でワイナリーを持ち、自分の栽培したブドウでワインを醸成すること」。栽培したブドウをワインメーカーに販売し、生計を立てながら、ワイン作りに挑んでいます。「奥が深くて、目標は遠のいていくような気がする」と言いつつ、目を輝かせます。
 矢野亮二さんは昨年、妻と二人の子どもを連れて、千葉から移住してきた元システムエンジニア。7反の畑でリンゴのふじを栽培します。

中古やレンタルも

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手頃な中古品が並ぶ宮川オートの展示場

 就農者から頼りにされている宮川さん。「農業機械等賃借料助成」などもありますが、とても新品を買えない就農者には、手頃な中古品やレンタルが人気です。
 宮川さんは、15歳から自動車整備の道に入り、37歳で独立開業を果たし、修理一筋に歩んできた経験が武器。「他では無理と言われても、あそこへ行けばなんとかなる」と絶大な信頼を得ています。
 宮川オート近くの空き地に、中古農機具やレンタル品を展示しています。廃品回収業者が持ち込むスクラップも、活用できる部品を確保するために買い集めてあります。

電動作業車を開発

 こうした廃品を組み合わせて作ったのが、ブドウ園の棚下作業用に改造したシニアカー。座ったまま作業できるので楽になると「アイデア農機具」として専門誌でも紹介されました。
 シニアカーにもともと付いている椅子を外し、作業スペースをつくり、その中心に高さを自由に変えられる事務用椅子を取り付けたものです。市販の電動作業車は40万円するのに対し、宮川さんの改造シニアカーは10万円前後と格安で、新品バッテリー搭載、1年保証付きです。
 その他にも、石が跳ねない改造草刈り機、トラクターエンジンを使った水力発電機などのアイデア製品も。「モノづくりはマニュアルのない応用問題で、とにかく面白い。過疎・高齢化が進む村に若者が入ってきてくれているんだから、ありがたい。なんとか力になりたい。彼らの声や要求をくみ上げ、実現していくような運動を、今後進めていきたい。商工交流会には私たちの取り組みを報告し、他の実践からも学びたい」と期待を寄せます。

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