2019年中小企業白書を読む

全国商工新聞 第3366号2019年6月24日付

 2019年版小規模企業白書は、第1部「平成30年度の小規模事業者の動向」、第2部「経営者の世代交代と多様な起業」、第3部「小規模事業者の防災・減災対策」の3部構成です。
 1部では、小規模事業者の経常利益が緩やかに増加しており、景況は回復基調にあると述べています。
 2部では、経営者の高齢化を踏まえ、個人事業主の事業継承の取り組みや、最近増えつつあるフリーランス起業家の現状や課題などについて、さまざまな事例も紹介しながら分析を行っています。
 個人の場合、親族内継承が8割以上を占め、その大半は子ども(男性)への継承ですが、小規模法人では親族外継承も3割を超え、有力な選択肢になっていることが示されます。
 自治体や商工会などの第三者が後継者のマッチング支援を行い、円滑な事業継承に成功している滋賀県東近江市などの事例も紹介されています。

存在感を増すフリーランス

 現在、約440万人が本業および副業でフリーランスとして活動しており、2017年12月時点の就業者全体に占める割合は約7%です。全体から見てまだ少数であるものの、女性や高齢者の起業の在り方として存在感が増していることが明らかにされています。
 フリーランスを「多様な働き方」として広げていこうとする政府の思惑に対し、体のいい「雇用の調整弁」ではないかとの指摘もあります。
 フリーランス増加の背景や要因、また、雇用によらないフリーランス的な働き方からどのような問題や政策課題が浮かび上がっているかについて実態の掌握や分析はありません。
 昨年の中小企業政策審議会小規模企業政策小委員会は、「フリーランスやSOHOといわれる事業者について、その事業実態の把握の困難さが論点にあがった」と指摘。地域密着・家族経営といった伝統的な小規模事業者像をもとに構築された現行の政策について、「フリーランスのような異なる概念のもとに生じた小規模事業者に対応しているのか。従来型の地域をベースにした支援体制に加え、新たな支援が求められる」と議論になったことを紹介しています。

実態の掌握と議論の深化を

 実態の掌握を進めつつ、フリーランスを雇用類似の働き方として労働基準法で規律されるとするのか、個人事業主として独占禁止法の関係で整理するのか、解明が求められる今後の課題です。議論の深化を期待したいものです。
 第3部では、「中小企業白書」と同様に、自然災害にそなえ損害保険加入が強調されますが、「自立・自助」「自己責任」の偏重にならないか、気になるところです。

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