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製造・小売
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【変わる業界】中古家電 PSE法猶予延長かちとった1ケ月
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リサイクル関連業者が奮起
政府に法の不備認めさせる |
今、全国の中古家電品を扱う事業者は「これで営業を続けられる」とほっとしています。4月から電気用品安全法(電安法)でPSEマークのない中古家電品の販売が禁止されることになっていたものの、民主商工会(民商)や多くの業者、消費者の急速な運動の広がりで、今までどおり販売できるようになったからです。政府に法の不備を認めさせて中小業者への支援策をとらせ、実質猶予期間の延長をかちとるまで約1カ月足らずの短期決戦でした。まだ、問題は山積みですが、運動のなかで、リサイクル・リユース業者がクローズアップされ、業界として認識させる好機ともなりました。
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| 10日、愛知・西春日井民商は、全商連のPSE署名をもって地域の中古家電販売業者を訪問。「一安心だが、これで終わったわけではない」との声が出されました |
「業者はまとまって運動することが必要だと痛感した。リサイクル業者の存在をアピールできたのが大きかった」と話すのは、経済産業省交渉に参加し、民商に入会した茨城県龍ヶ崎市の山岡拓也さん(25)=リサイクルショップ。若い同業者とのつながりができ、新しい事業展開ができることを喜んでいます。
4月からの対応は、「PSEマークのないものは店のイメージダウンになるので、取り扱いは控える」という山岡さん、「国はPSEマークをとる検査を無料でやると言うが、その場所まで出向くのは人手のない零細業者には厳しい。といって検査機器を買うとなると、単価の低い商品なので難しい」と話します。
後手後手の政府に「周知徹底を」の声
政府の対応が後手後手だったため、中古関連業者のなかには値下げして販売したところも多く、「取り扱いができる」ことを知らない消費者が持ち込みや購入を控えるケースも出ており、業者からは「もっと国は周知を徹底してほしい」との声が出ています。
PSEマークを張れる製造事業者になることを決めた業務用設備リース業の高橋興一郎さん(64)が、中古品も法の対象になることを知ったのは3月でした。パン屋を開業するお客さんのために、中古の製パン機械一式をメンテナンスし、搬入・取り付けする寸前でした。「機械が取り付けられないとお客さんが開業できない」と深刻でした。
高橋さんは、店舗の閉店にあたり再生可能な設備・厨房器具を買い取り、メンテナンスして開業する人へ販売しています。
昨今、若い人の創業や、リストラに遭い開業する人が急増。資金面に余裕がなく、中古設備は必須。
高橋さんが検査機器の購入のためメーカーを探したところ11社しかなく、費用は50万円も。それもいつ納品できるか不明。検査機関にも片っ端から電話をしたところ、6割がまだ対応できないとの答えでした。
国の責任で十分な対策こそが必要に
経産省は今、全国で事業者向けの講習会を開いていますが、日程を発表した時点で満員のところもあり、国の責任で十分な対策をとらせることが必要です。
高橋さんは「つぶされたら多くの業者が困る。むしろわれわれを育てて安全なものが供給できるよう低利融資の制度をつくるなど改善すべきだ」と強調します。
業界団体として立ち上げを計画している「PSE問題を考える会」代表の小川浩一郎さんは、「国の対応は猶予期間の延長にすぎない。健全な業界活動をするためにも協会をつくって社会貢献できるようにしたい。それが社会的地位の向上にもなる」と話しています。
全商連と商工新聞がリード
署名や省庁交渉
「商売ができなくなる」と、リサイクルショップなど関連業者から全国商工団体連合会(全商連)にメールが届き始めたのは2月。4月から猶予期間が切れるため、ことは急でした。
全商連はただちに実態調査をおこない、被害を受ける業者とともに経済産業省と交渉。のちに「PSE問題を考える会」を立ち上げた業者も参加し、周知もほとんどなかったこと、中古家電品が政府の唱える循環型社会の一翼を担っていること、ビンテージ(希少価値のある品物)ものの楽器が入っているのはおかしいことなどを強く訴え、改善を迫りました。
各地の民商が、この問題を報道した商工新聞をもって地域の関連業者を訪問したところ、「よく来てくれた」「何かできることはないか」などの声が続々と寄せられ、声をまとめて県連では管轄の経済局と交渉。行政側は法の不備を認めざるを得ず、全商連への期待のメールが増えました。
一方、全国で4万8000を超えるといわれるリサイクル関連業者は、業界としてのまとまりがなかったため、「まとまって運動する」一歩として、3月下旬、全商連会館で集まりを開き、たたかうことを決意。西村佐冨多副会長が連帯のあいさつをしました。
全商連は猶予期間の延長を求める署名行動を展開。国会では塩川鉄也衆院議員が、電安法では中古家電の規制など念頭になかった事実を明らかにし、世論が高まりました。
抗議に押され、ついに経産省は3月24日の記者会見で、周知を怠ったことを認め、4月の猶予期間が過ぎても、営業が続けられることを第一に考え、レンタルという形で販売可能なこと、マークを取り付けるための事業者となる検査体制を整えるなど中小業者への緊急対策を約束。実質猶予期間の延長を認めさせる成果をあげたのです。
しかし、検査体制が不十分で、周知がはかられないことから、全商連は3月29日、業者団体として初めて二階俊博経産相に「中古家電品の安全確保のルールづくりをはかり、十分な検査体制への支援を」と要求。二階経産相は「できる限りのことをやっていく」「早い段階で中古品業者の意見を聞き、協力してもらえばよかった」と、真剣な対応を約束しました。
電気用品安全法(PSE法)
01年4月施行。中古も含め家電製品に国の安全基準に適合していることを示すPSEマークを取り付けることを義務づけた。マークのないものは品目ごとに施行から5年、7年、10年の猶予期間をもうけた。販売業者は製造事業者届けをして検査するか自主検査すればマークが張れる。しかし、中古の取り扱いは法には触れられておらず、経産省が対象となることをホームページで周知を始めたのは今年2月からだった。 |
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