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消費税増税によらず財政の健全化は可能
日本租税理論学会が「声明」 |
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租税科学に関する研究者で構成する日本租税理論学会(理事長・北野弘久日本大学名誉教授、会員数約300人)は昨年12月3日、静岡市内で第18回大会を開き、消費税増税なしで「日本の福祉国家を健全に展開することができる」とする声明を発表しました。
日本国の財政は、06年国家予算によれば、06年度末国債残高約542兆円(対GDP比率105%)、同国の長期債務残高約605兆円、同国と地方の長期債務残高約775兆円(対GDP比率150%)と見込まれている。
財政「破綻」の原因には経済の不況その他さまざまなものが考えられるが、私たちは、その主因は消費税導入(89年)後に行われた憲法の「応能負担原則」の趣旨に逆行する大企業、高額所得者に対する税法上の減税にあると考えている。この減税は、年十数兆円(国税)に達する。
この財政「破綻」を埋めるために、消費税の大幅引上げなどが論議されている。
周知のように消費税の導入(3%)とその引き上げ(地方消費税を含む5%)は、日本経済の長期停滞をもたらした。消費税はもともと政府与党の公約違反で成立した。消費税はその性質上人びとの意思と能力とに関係なく、人びとに逆進的負担を強要する。
また、消費税の税法上の納税義務者は事業者であるが、中小業者の多くは消費税の転嫁が困難であって、彼らにとっては消費税の現実は、間接税ではなく企業付加価値税、または企業取引高税(累積税)となっている。消費税の免税点は現在では年売上1000万円となっていて、内職程度の事業者も納税義務者となる。「間接税」という建て前にもかかわらず消費税の滞納がきわめて多いことにも注目されねばならない。これが企業倒産、自殺の一因ともなっている。
一方、たとえば、05年分のトヨタ自動車の消費税の輸出戻し税額は2665億円(推定)となっている。これらの大企業は実質的に巨額の輸出補助金を受けているわけである。消費税の大幅引上げは、以上の諸問題に加えて、租税面から日本の格差社会を拡大する。
それ自身、最悪の「反福祉」の不公平税制である消費税の増税などによらないで、私たちは、日本国の財政健全化を考えるべきである。憲法の「応能負担原則」の趣旨に従って、たとえば租税特別措置(租税上の優遇措置)の徹底的見直し、格差是正のために所得税・相続税の累進機能の回復、さらに限定された財産保有課税の導入をはかるべきである。これらによって年十数兆円の財源を容易に確保することができる。
また、特定財源の一般財源化、建設国債等の見直し、不当歳出の削減、特別会計の見直し、国有財産の整理、地方交付税の改善と補助金等の見直し、税務行政の民主化・効率化などを真摯に考えるべきである。なお、著しく劣悪な雇用条件の速やかな改善、健全な中小業者に対する効果的支援策の実施が求められる。
これらの努力を行うことによって、私たちは消費税の引上げなどによらないで日本の福祉国家を健全に展開することができる。
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