不公平な税制をただす会
韓国の税制視察(下)

全国商工新聞 第3336号11月12日付

納税者の権利保護が充実「零細への配慮」が根付く

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李昌圭・韓国税務士会会長(右端)と懇談する視察団

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屋台が並んでにぎわうソウル市内の南大門市場

 韓国では1997年に、国税基本法第7章の2「納税者の権利」が新設されました。OECD加盟をめざす過程で、権利憲章が必要だと考えたからです。国民の要求によるものではなかったため、最初は形だけでした。しかし、その後の国民運動の高まりもあって、調査の事前通知は文書で通知するなど、税務署の対応がよくなっていることが分かりました。

業者は調査免除

 納税者の権利保護に関する事項を審議する「納税者保護委員会」が2008年から地方国税庁(国税局)と税務署に、18年4月からは国税庁にも設置されました。そして、国税庁や税務署に所属する納税者保護官は1人だけとし、十数人の外部委員は税務士、弁護士、教授などの民間人で構成するようになりました。
 今回の視察を実現してくれた韓国の李信愛(イ・シネ)税務士は、「開業後の28年間で税務調査は2件だけ」と言うように、調査はかなり珍しいようです。三成(サムソン)税務署署長や李昌圭(リ・チャンギュ)韓国税務士会会長も「零細業者は、数は多いが優遇すべきと考えて調査は免除されている。税は大企業や高所得者から取るべきと考えている」と、同様のことを述べています。
 ただし、電子申告やキャッシュレス決済の普及により、取引や消費行動まで、全て国税庁がデータを収集する仕組みとなっており、税務署は情報収集や分析が主な仕事に。そして、確定申告時期には、国税庁からあらかじめ数字が記入された申告書が送られ、納税事業者が確認後にサインをして国税庁に送り返すことが行われています。このやり方が申告納税制度にふさわしいのか、疑問が残りました。李信愛税務士も「個人情報がすべて国家権力に握られるのは問題だと思う。でもそういった考えは韓国では少数派だ」と明かします。

番号制は使わず

 韓国では1968年から住民登録番号(個人番号)制度が導入されました。現在は、北朝鮮との関係もあり、17歳以上の全国民は身分証明書として住民登録番号カードを常時携帯しています。
 しかし、17年に1億4000件の番号が流出。「なりすまし」のトラブルも多発したこともあって、6年ほど前から手続きでは使われなくなっています。社会保障などあらゆる手続きで個人番号の提示・提出を強要する日本は、世界の流れから逆行していることがよく分かりました。
 大統領選挙の投票率が8割にもなるほど、政治に関心が高く、その国民性が不公平な税制度を正すことにつながっていることを肌で感じることができました。今後の運動に大いに生かしたいと思います。

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