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  トップページ > 税金のページ > 不公正税制 > 全国商工新聞 第2919号 3月22日付
 
税金 不公正税制
 

自由法曹団が56条廃止で意見書・鶴見弁護士が解説


 自由法曹団は2月24日、「所得税法第56条の廃止を求める意見書」を発表しました。その内容と特徴、経過などを弁護士・鶴見祐策さんが解説します。
 
 弁護士 鶴見祐策さんが解説

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 わが国の自営商工業者の多くが夫、妻、息子、娘など家族ぐるみの労働によって支えられていることは周知のとおりです。農業、漁業、製造業、小売業、卸売商、サービス業、その他の業種に共通する特徴です。その収入は、就業した家族の役割分担の成果にほかなりません。その労働の対価が各人の生存の糧となり、労働意欲の源泉です。この現実直視が重要でしょう。「意見書」は、その視点から作られています。
 「事業所得」とは「総収入金額から必要経費を控除した金額」(所得税法27条2項)ですが、同法56条では「生計を一にする配偶者その他の親族」が「事業に従事したことにより当該事業から対価の支払いを受ける場合」には「事業所得の計算上、必要経費に算入しない」と規定しています。事業主の夫が、妻や息子や娘の労働の報酬(給料)を支払っても、必要経費とは認めないわけです。これが現実離れの重税をもたらしているのです。
 もとは所得税創設の1887(明治20)年にさかのぼります。明治憲法と旧民法の家父長制度の下、家族全体の所得を合算して戸主の名義で納税させる税制の名残です。1947(昭和22)年施行の現憲法は「すべて国民は個人として尊重」の原則を掲げ、民法も家族制度を廃止して一新されました。税制の近代化を示唆するシャウプ勧告後の税制改正では、この合算制度は当然に廃止の運命でしたが、1950(昭和25)年の所得税法制定では、形を変えて移植されたのです。「意見書」は、課税側の意向に要因を求めています。
 課税側が「所得は世帯主が支配しており、家族に対価を払う慣行がない」「恣意的な所得分配の恐れがある」「対価支払いの確認が困難」と主張する点について、いずれも前近代的な家族制度を是認する前提に立ち、しかも今日の実態から遊離して説得力に欠けると批判しています。
 
 青色や法人化は本質をゆがめる

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全国業者婦人決起集会で所得税法56条意見書採択の自治体が広がっていることを報告する北海道の業業者婦人たち(09年10月)

 また、「意見書」は青色申告の選択や法人化による回避の方策にも言及し、白色申告が原則であることを指摘。青色申告は「特典」の付与と引き換えに納税者を課税庁の裁量の下に置く特設の制度であり、「特典」の内容は納税者の立場から当然のものでその名に値しないばかりでなく、運用次第では課税庁と対等な関係を失わせ、納税者の権利を形骸化させかねない危険性を指摘しています。法人化も、会社の設立は事業本来の目的と理念に基づくべきであり、税金対策とすることは、私的自治を基調とする法制度の本質をゆがめるものとしています。
 自由法曹団の団員は、民商・全商連が進める納税者の権利を守る運動や違法不当な課税を争う裁判などに深くかかわってきました。その過程でも税制の矛盾と対決する場面が少なくないのです。民商事案に限らず、自営業者に共通の問題です。
 弁護士や税理士の間でも、配偶者への報酬について「生計を一にする」と認定され、夫が妻に払った報酬の経費性を否認され、文理解釈をもとに課税処分を容認する判決が波紋を呼んでいます。
 今回の「意見書」作成の過程で多くの自治体や税理士会が、廃止要求の意見を表明していることを知りました。問題意識の社会的な広がりと深まりが分かります。
 
 家族従業者の尊厳奪い去る
 「意見書」は、56条が自営業者に過重な課税を強いるだけでなく、家族従業者への影響にも言及しています。
 労働に見合う対価を公認されないことから、差別的な扱いや自立を妨げられる現実も無視できません。
 給与所得の公的証明がないため不測事故による被害補償の適正な査定が得られないとか、国民健康保険で傷病手当や休業手当が認められないとか、その他の公的給付でも不利益が起こり得ることを指摘しています。その差別の反復は、家族従業者の仕事に対する意欲を失わせ、未来への展望を奪い去るような結末を招きかねません。
 
 廃止に向けた世論と運動を
 この規定の不合理は早くから指摘されてきました。「家父長制的課税関係の残滓」と酷評されています。にもかかわらず、従来の政権は、課税側の官僚の言いなりできました。政権交代後の連立政権は、曲がりなりにも「官僚主導からの脱却」を標榜しています。この転機の可能性をとらえ、悪法を葬る世論と運動が求められていると思います。
 全商連婦人部協議会が精力的に国と交渉し、国連女性差別撤廃委員会など国際的に働きかけたことも注目されます。そのような情報にも触発され、「意見書」発表の運びとなったわけです。
 最後に「意見書」は、56条自体が「個人の尊厳」を掲げる憲法13条の基本理念に背くばかりでなく、課税の不公正をもたらしている点で「法の下の平等」(14条)、家父長制を税制に残す点で「両性の本質的平等」(24条)、健康で文化的な生活を脅かす点で「国民の生存権」(25条)、不当課税を強いる点で「財産権の不可侵」(29条)の人権保障の違反を明らかにし「直ちに廃止すべき」と結論づけています。
 所得税法第56条の廃止運動推進に役立つことを願ってやみません。
   
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