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  トップページ > 税金のページ > 徴税攻勢 > 全国商工新聞 第3311号5月14日付
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税金 徴税攻勢
 

滞納者に圧力 「悪質」と決めつけポスター掲示=神奈川県・厚木民商

抗議し撤回要請

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ポスター・チラシの撤回を求めた厚木市への申し入れ

 神奈川県厚木市が市税などの滞納者を敵視するようなポスター・チラシを作製している問題で、厚木民主商工会(民商)も参加する「重税反対・営業とくらしを守る県央実行委員会」と「春の総行動県央実行委員会」は3月28日、7団体から13人が参加し、市に抗議。ポスター・チラシの撤回を求めました。

督促にはチラシ

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厚木市役所が作成した問題のポスター(上)とチラシ(下)
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 問題になっているのは「住宅ローン、自動車ローン、カードローンの支払いは納付できない理由にはなりません!」「税金等は、借金ほかすべての支払いに優先します」と書かれたカラー刷りのポスターです。裏面には「滞納STOP 市民税等の悪質滞納は許しません」と大きく書いて差し押さえの写真などを載せて市民に圧力をかけています。
 これらのポスターを数年前から収納課の受付に何枚も張り出して、同じ内容のチラシを督促状に同封しています。
 民商はこの間、他団体とともに「ポスターに書いてあることは納付相談に来る市民を脅すもの」「悪質滞納者と払いたくても払えない市民を一緒にするのは人権侵害」と抗議し、ポスターやチラシを撤回して滞納者の実情をよくつかみ、親身になって相談に乗ることなどを求めてきました。
 今年度のポスター・チラシには「悪質な滞納」という文言を付け足して批判をかわそうとしていますが、「差し押さえありき」の強権的な姿勢は変わっていません。
 交渉では「滞納処分をすることによって生活を著しく窮迫させる恐れがあるときなどは、滞納処分の執行を停止できる」(地方税法15条の7の2号)ことや、同規定を踏まえ、「滞納者の個別・具体的な実情を十分に把握した上で、適切な執行に努める」(事務連絡)ことを総務省が指示していることを確認。しかし、ポスターについては「悪質な滞納者を許さないため」と強弁しました。
 民商の横田邦康常任理事は「収納課に行くと最初にポスターが目に入る。相談者に圧力をかけるようなポスターをなぜ張っているのか」と問いただすと、「納税が国民の義務であり、(このポスターは)悪質の滞納者に対するもの」との回答を繰り返しました。

猶予申請を制限
 一方で一時的に納税できなくなった時に活用できる申請型「換価の猶予」について「内容が分かるパンフレットは作成していない」「対象となる人にはこちらから申請書を渡す」と答え、市の判断で申請を制限している実態が明らかになりました。
 参加者からは「年収100万円ほどの若者にも督促状が届いている。こんなポスターが張ってあれば、相談にも行けない。相談に行きやすいようにしてほしい」「知人の介護ヘルパーは年収140万円。ギリギリの生活で国保料や市民税が高くて払いたくても払えない」など怒りの発言がありました。
 厚木市はこの間、滞納処分を強化し、差し押さえを904件(2011年度)から2466件(2015年度)に急増させる一方で「換価の猶予」や「徴収の猶予」はほとんど適用せず、納税に苦しむ市民の生存権を脅かしています。
 80歳の男性は、市民税などの滞納に対して唯一の収入である17万5000円の家賃収入全額が差し押さえられ、「生活ができない」と民商に駆け込んできました。男性は何でも相談会に参加し、1カ月に必要な生活費や医療費を計算して市と交渉。「12万7000円がなければ生きていけない」などと訴え、11万5000円の生活費を認めさせました。

徴収法の趣旨ゆがめる 税理士 角谷啓一さんの話
 給料や年金の差し押さえ、タイヤロック方式による自動車の差し押さえ、無予告による多人数での捜索、現金・預金等の差し押さえ…。写真によるリアル感が、差し押さえの恐怖を伝えます。しかし、徴収法の立法趣旨は、「脅迫」という概念とは全く無縁です。
 また、「税金はすべての支払いに優先します(地方税法14条)」に加え、「住宅ローン、子どもの教育費などの支払い等は、『やむを得ない』理由にはなりません」と記述され、その後に、「災害等やむを得ない事情で納付困難な方は、分納や猶予をする場合があります」と書かれています。
 地方税法14条(徴収法8条)の解釈は、「税金はすべてに優先」ではありません。同条は「この章(第2章)に別段の定めがある場合を除き」という条件があり、例えば、住宅ローンなどは徴収法15条によって、租税に優先するケースが多々あります。この点を伏せ、「税はすべての支払いに優先」は勝手な解釈。ポスターの知的レベルが知れます。
 猶予が認められるべき要件は、「災害等のやむを得ない事情」だけではありません。「財産の換価によって、事業の継続、生活の維持を困難にする恐れがあるとき」、または「財産の換価を猶予することが、直ちに換価することに比して、徴収上有利であるとき」(徴収法151条)は、職権による換価の猶予の検討対象となります。また、滞納税金が発生して比較的日が浅い場合で、「滞納者がその税金を一時に納付することによって事業の継続、生活の維持を困難にする恐れがあるとき」(徴収法151条の2)も、一定の要件の下、申請型換価の猶予の検討対象となります。なぜかポスターは、猶予の対象や適用要件を故意に狭めています。

全国商工新聞(2018年5月14日付)
 

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