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  トップページ > 税金のページ > 徴税攻勢 > 全国商工新聞 第3295号1月15日付
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税金 徴税攻勢
 

「納税者の権利宣言」(5次案)を力に 第19回税金問題研究集会

 全国商工団体連合会(全商連)は12月2〜3日に東京会場で、12月9〜10日に大阪会場で第19回税金問題研究集会を開き、543人が参加しました。「納税者の権利宣言」(5次案)が16年ぶりに改訂される中で開かれた今集会は、消費税10%への引き上げ阻止の展望を示すと同時に、複数税率やインボイス(適格請求書)方式の問題点を解明。民主的な税制と税務行政を実現するたたかいの方向を指し示しました。

民主的税制確立めざし 全商連 運動の方向示す

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納税者の権利宣言(5次案)シンポジウムで発言する服部税金対策部長

 東京会場では石塚隆幸副会長が主催者あいさつ。「5次案は憲法から導き出した民主的な税制のあるべき姿を明らかにし、税金の集め方、使い方を正すことを提起している。深く学び、たたかいと拡大の力にしよう」と呼び掛けました。基調報告の後、「納税者の権利宣言」(5次案)シンポジウムが開かれ、鶴見祐策弁護士、浦野広明税理士、服部守延全商連常任理事・税金対策部長がシンポジストを務めました。
 服部税対部長は5次案発表の経過と意義を報告。「安倍暴走政治への怒りが沸き起こる中で、大企業や富裕層の課税逃れを許さない世論や税の在り方と使い道の是正を求める運動、生存権や営業を脅かす税務行政を是正させるたたかいをさらに前進させることが求められている」と強調。5次案の特徴について「生活費非課税、能力に応じた負担、憲法理念を徹底する税制の実現、申告納税制度の擁護・発展、適正手続きを貫いた税務行政の確立、税金の使途に発言、監視、是正する権利拡大を提唱している」と述べ、内容を深く学んで普及し、国民的な運動に発展させることを呼び掛けました。
 鶴見弁護士は税務調査の適正手続きなどを求めた裁判を振り返り民商・全商連の勝ち取った成果を報告。とりわけ、東京・荒川民商の「広田裁判」(1973年)が質問検査権の限界を示し、「税務調査は納税者の理解と納得を得て行うこと」などを定めた「税務運営方針」(1976年)に反映されたことを紹介。5次案について「非常に完成度が高く、納税者の共通の道しるべになるもの。全国民的な運動を起こして浸透させることが大事だ」と強調しました。
 浦野税理士は「倉敷民商弾圧事件」に関わって「自主記帳・自主計算を貫く民商・全商連運動は、集まって話し合い、相談し助け合って営業を守ることが活動の原点。税理士法違反というのは見当違いも甚だしい」と批判。「民商・全商連運動がなかったら納税者の権利が取り沙汰されることはなかった。世界に誇れる活動」と激励しました。

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2日目には分散会討論が行われました

 大阪会場では太田義郎会長が主催者あいさつ。イギリスのマグナカルタやフランス人権宣言、アメリカの独立宣言に触れながら、「過酷な税とのたたかいの根底に歴史上一貫して流れているのは階級闘争。国民の権利を守る5次案は憲法にのっとったもの。大いに学び力にしよう」と呼び掛けました。
 シンポジウムでは則武透弁護士と清家裕税理士、服部税対部長がシンポジストを務めました。
 則武弁護士は倉敷民商弾圧事件をたたかう中で研究・分析した世界の税理士制度や納税者の権利憲章について報告。「先進主要国では、日本以外は納税者の権利憲章が制定されている。日本は人権後進国。税理士制度も業務独占性と国家監督の強さが特徴で、世界的に見ても特異な制度」と強調。5次案について「税理士法の改正や不公平税制の改革、税務調査の適正手続きの保障、歳出の適正化を掲げた内容は時宜にかなったもの」と評価しました。
 清家税理士は「軍事費はすでに5兆円を突破しているが、9条に自衛隊を明記すれば莫大な戦費が必要になる。その財源を消費税に求めようとしている」と批判。「5次案を力にして9条改憲と消費税増税阻止のたたかいを強め、納税者の権利憲章を制定させる運動を前進させ、平和・福祉の国づくりの税制・税務行政を確立すること」を呼び掛けました。
 中山眞常任理事が基調報告し、両会場合わせて12人が活動報告をしました。
 2日目は分散会を開き、消費税増税阻止や強権的な徴収、不当な税務調査とのたたかいなどの活動を交流するとともに複数税率やインボイス(適格請求書)方式の問題点を明らかにし、「納税者の権利宣言」(5次案)についての理解を深め合いました。
 また、湖東京至税理士が「消費税、複数税率とインボイス方式」をテーマに学習講演しました。

「税金の民商」の出番 基調報告

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各地の活動報告など発言に聞き入る参加者

 消費税増税をめぐる情勢は、次の通常国会で政府が消費税率10%を前提にした2019年度の予算編成に取り掛かり緊迫しており、増税反対意見書採択に向けた地方議会への働きかけとともに、国会議員に中小業者の実態と要求を届け、野党議員に増税中止の公約実現を迫ることを呼び掛けました。
 また、複数税率が始まる2019年10月から4年間の経過措置として設けられた「区分記載請求書等保存方式(簡易方式)」は膨大な実務負担を伴うと指摘。インボイス(適格請求書)方式で約500万の免税業者が取引から排除される可能性があり、簡易課税制度の廃止も狙われているとし、「強引に対応を迫られる業者の怒りを組織し、政党支持の違いを超えたたかいを大きく広げる」ことを強調しました。
 税務調査の問題では「お尋ね」「呼び出し」文書を使った「行政指導」の名で納税者を来署させて税務調査に切り替える「呼び出し調査」の違法性を広く知らせ、「税務署へ行く前に民商へ」の大宣伝を呼び掛けました。
 突然、税務署員が店と自宅に訪れる無予告調査が行われ、おとり調査(内観調査)や納税者を尾行・監視する「動向確認」、事実とは違う質問応答記録書を根拠に7年分の追徴と重加算税を押し付けるなど違法・不当な調査が横行していることを紹介。「署員作成文書の開示を求め、記録が偽造されていないかを確認し、質問応答記録書には押印しないことが重要」と訴えました。
 「扇動罪」が国税通則法上の罰則となったことについて「一般調査でも強制調査を装う『料調方式』が横行しかねない」と指摘。「(犯則調査と任意調査を)はきちがえないように現場を指導しないといけない」(麻生太郎財務相)などの国会答弁や、質問検査権には法的限界があることを示してたたかうことを呼び掛けました。
 倉敷民商弾圧事件は3人の事務局員と弁護団の奮闘や「支える会」などの活動が「一審差し戻し」の可能性を広げていると報告。緊急提起された無罪署名・はがきへの取り組みを呼び掛けました。
 納税者の苦悩に心を寄せる税理士や弁護士との協力関係を強め、弾圧に悪用された税理士法の改正も求めていくと提起しました。同時に法人・個人の申告形態を問わず、納税者同士で集まって学び合い、自主記帳・自主計算・自主申告を徹底させることを訴えました。
 2018年税制改正大綱で政府が観光促進税や森林環境税を創設するとともに、たばこ税や消費税を増税するなど応能負担に反する庶民増税を狙っていることを批判。「所得税の最高税率を引き上げて累進課税を強化し、400兆円もの利益をため込んでいる大企業への優遇税制を改めること、庶民増税を許さず、応能負担、生活費非課税を求める『税金の民商』の出番」と訴えました。
 納税者の権利を身につけて仲間を増やし、前総会時現勢を全組織が必ず突破して、全商連第53回総会を迎えようと呼び掛けました。

複数税率・インボイスやめよ 学習講演=湖東 京至さん
 学習講演をした湖東京至税理士は「安倍首相は低所得者の負担は増えないと言っているが、軽減税率の対象となる飲食料品価格や定期購読新聞代が上がらない保証はない。軽減税率が適用されても値段を据え置く義務はなく、価格決定権は企業にある。物価は必ず上がる」と強調しました。
 また、軽減税率の対象をめぐって混乱が生じると指摘。「酒類は税率10%だが、ノンアルコールビールなどアルコール度が1%未満は軽減税率の対象になる。栄養ドリンクのうち医薬品、医薬部外品は軽減税率の対象にならないが、サプリメントや健康食品は軽減税率の対象となる」と具体的に示しました。
 さらに「外食は軽減税率から除かれるが、飲食店で容器に入れて持ち帰るものは軽減税率の対象で、すし店やそば店の出前も軽減税率の対象。自販機のジュースやミネラルウオーターは軽減税率の対象となるが、水道水は10%になる」など複雑な内容を説明しました。
 インボイス問題では「免税事業者が発行した請求書は仕入税額控除の対象にならず、免税事業者は取引から外されてしまう」と指摘。また、インボイスに記載される必要な事業者登録番号に関わって「税務署で発行してもらうため逆らえなくなり、萎縮する。しかも番号を間違うと懲役1年、50万円以下の罰則がある」と批判しました。
 「EU委員会では、軽減税率は国家間や企業間に不公平をもたらし、恩恵を受けているのは企業で低所得者対策になっていないので廃止すべきとの声が上がっている。輸出還付金制度もあまりにも不正還付が多いので見直しが検討されている」ことを紹介。「消費税は過去の税制で滅びゆく。5%に戻して廃止に追い込むことは、増税反対運動を大きく盛り上げれば必ず実現する」と強調しました。

12人が多彩な活動を報告
少法人対策を強めて 東京会場

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納税者の権利をめぐり会場から発言する参加者(東京会場)

 岩手・一関民商の山口伸事務局長は、10年前には300万円の追徴に泣き寝入りした建築業者が民商に入会し、役員・会員と共に自主計算パンフレットや税務運営方針を学び、たたかうことを決意したと報告。原始資料を準備する中で、外注費150万円を不当に認めず50万円を追徴しようとした圧力をはねのけ、納得の税額で終了したと紹介しました。
 東京・板橋民商の古山壽樹事務局長は、地方税の滞納で都税職員が客や従業員の前でカバンや財布、レジを開けさせ、事業経費や生活費を含む50万円余を差し押さえた不当な徴収を告発。国税徴収法75条で「生活に必要な三月間の食料及び燃料」(3カ月分の生活費)は差し押さえ禁止財産であることや、民事執行法で「標準的な世帯の二月間の必要生計費を勘案して政令で定める額の金銭」(131条の3)を「差押禁止動産」とし、その額は「六十六万円とする」(民事執行法施行令1条)ことなどを示した請願書を板橋区に提出。翌日、換価の猶予が適用されたと報告しました。
 神奈川県連の三浦謙一事務局長は、「小法人対策を強め、記帳会や集団申告など法人会員が“集まって話し合う”活動を広げ、法人会員の拡大を進めたい」と表明しました。
 千葉県連の橋沢政實副会長は、住民税特別徴収税額決定通知書で番号を記載した5自治体に抗議文を送り、電話で要請。「3自治体が不記載の通知書を送ってきた。運用拡大が狙われる中、制度そのものを廃止させよう」と呼び掛けました。
 倉敷民商弾圧事件で控訴審をたたかう禰屋町子事務局員は、広島高裁岡山支部の初公判(10月27日)で、国税査察官報告書を鑑定書扱いした一審判決に疑問を投げ掛ける弁護側提出の意見書が証拠採用され、裁判の流れが変わる可能性もあると指摘。「1月12日の判決に向け、署名や要請はがきを強めてほしい」と訴えました。
 愛知・名古屋南民商の三浦孝明副会長は17年秋、食料品を扱う会員に税務署から送られてきたパンフレット「よくわかる消費税軽減税率制度」(国税庁)を税・社会保障部会で学習。複数税率を判定する業者の負担や、インボイス導入で免税業者も課税業者にならざるを得なくなることに改めて怒りが沸き、「10%増税中止が一番の対策。増税中止の運動をさらに広げたい」と決意表明しました。

倉敷弾圧の無罪必ず 大阪会場

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消費税増税阻止など活発に議論された集会(大阪会場)

 広島・福山民商の川崎衛税対部長は、事前通知もなく署員が勝手にパソコンや寝室の引き出しを開けるなど人権無視の税務調査を受けた会員のたたかいを報告。「対策会議を開いて一緒に納税者の権利を学び、支部の仲間が立ち会い、経費の実額を主張し、納得して調査を終えた。自主申告を貫き、民商の仲間を信頼して一緒にたたかったことが大きな力になった」と強調しました。
 岐阜北民商の早野幸広事務局長は、岐阜北年金事務所の強権的な保険料徴収とのたたかいを報告。「誠実に滞納保険料を納めていた業者に対して、社会保険事務所が一方的に約束をほごにして一括納付を迫った。当事者2人が実態を告発して職員を動かした。現在、7人から同様の相談が寄せられている。対策会議を開いて中小業者決起大会の交渉でも訴えたい」と話しました。
 群馬・高崎民商の高平修作事務局長は、住民税特別徴収決定通知書へのマイナンバー(個人番号)記載の問題について発言。「自治体に申し入れ、番号不記載の通知を再発行すると答えざるを得ない状況も生まれている」と強調しました。
 大阪・豊中民商の出口保幸会長は自主計算活動について報告。「エクセル会計ソフトを使って自主計算を進めている。全会員が申告書を作成することができるように1、2月に約110カ所で班会を開いている。確定申告時期だけはなく、その他の月も開けるように力を入れたい」と話しました。
 「倉敷民商弾圧事件」の裁判をたたかっている小原淳事務局長は「無罪を勝ち取るまで皆さんとともに全力で頑張る」と決意を表明しました。
 北海道・北見民商の森田勇樹事務局長は消費税増税反対、複数税率・インボイス導入阻止のたたかいを報告。「11月末までに1会員15人分を超える7458人の消費税増税中止を求める署名を集め、商店街訪問では増税への怒りの声が寄せられた」ことを紹介。一方で複数税率やインボイスの問題が知られていないことを実感し、春の運動では運動の中心に据え、危険性を知らせるための準備をしていると話しました。

全国商工新聞(2018年1月15日付)
 

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