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  トップページ > 税金のページ > 徴税攻勢 > 全国商工新聞 第3138号10月6日付
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税金 徴税攻勢
 

税務署が“だまし討ち”調査 不当な追徴金取り戻す

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 事前通知もない不当な税務調査で、売り上げの計上時期が勝手に変更され、消費税の支払いが発生した上に、国税と地方税を合わせて90万400円の追徴金を課された岩手・一関民主商工会(民商)の石川完二さん=京佛師。「こんな調査は、絶対に許せない」と立ち上がり、追徴金を上回る97万2400円の税金を取り戻しました。税務署とのたたかいを支えたのは民商や大東支部の仲間たちでした。

民商に入会して更正請求

 一関民商は9月19日、石川さんの勝利報告集会を開きました。大きな拍手で迎えられた石川さんは、胸を張って報告しました。「私がここで報告できるのは、民商の仲間が支えてくれたからです。税務署にも自分の思いをぶつけることができました。一人ではとてもたたかえなかった。感謝の気持ちでいっぱいです」
 税務調査から11カ月。粘り強いたたかいが実り、一関税務署は3月26日、石川さんが提出した「更正の請求」を一部認め、33万5300円の追徴金に対して15万1100円を還付。8月28日には、国保税・市県民税の追徴金56万5100円に対して82万1300円が還付されました。

「指導」と偽り
 「申告書の書き方が変わったので指導します」。一関税務署から石川さんに電話が入ったのは昨年4月23日。3日後、自宅を訪ねてきた署員は2010年度から2012年度の帳簿を見せるように言いました。指導というのは偽りで、事前通知のない税務調査だったのです。「初めてだったので、何も分からず言われるままで、不正はしていないと思ってもドキドキしていた」と石川さんは当時の心境を明かします。

修正へと誘導
 調査は5月14日まで継続。署員が目を付けたのは09年1月、登米市内の寺院から仏像の修復を400万円で受注したとき、その年末に内金(前受金)として受け取った200万円でした。石川さんは09年度の申告で売り上げとして計上していましたが、署員は10年度の売り上げに含めるように指示。「だったら09年度の売り上げから200万円が減額されるんですよね」と石川さんは署員に尋ねましたが、「調査期間は3年なので、09年度分には手が付けられない」との答えが返ってきました。
 署員は09度年の売り上げを変更せず、10年度にも200万円を計上しようとしたのです。さらに石川さんが震災後のボランティア活動で発生した雑収入を、さかのぼって12年度の収入に含めるように指示しました。
 10年度の売り上げに200万円が算入されれば、石川さんの売り上げは1000万円を超え、消費税の課税業者になります。税務調査は消費税の課税を狙ったとしか思えない不当なもので、しかも200万円の売り上げを得るための経費を算入しないなど税務署員による誤った修正申告書が作成されました。

怒り込み上げ
 石川さんは納得ができないまま申告書に押印。その結果、2010年度に約13万円の消費税の支払いが発生し(加算税、延滞税含む)、所得税を合わせて3年間で33万5300円の追徴金が課せられました。「おかしいと思ってもいやとは言えず、はんこを押してしまった」と悔やみます。
 追徴金はそれだけにとどまらず、国保税と市県民税合わせて56万5100円の納付を迫られました。「90万円の利益を上げるためにどれだけ苦労するか、税務署は分かっているのか」。追徴金の納付で資金繰りが悪化し、怒りが込み上げてきた石川さんは、親族で民商会員だった石川弘行さん=不動産=に相談。「早く民商に行け」と言われ、9月に事務所を訪ねました。

権利を学んで
 大東支部の支部長・菊池郁朗さん=保険代理店=らはあまりにもひどい調査に怒り心頭。「あきらかに税務署がおかしい。たたかえば追徴金は取り戻せる。石川さんがたたかう立場に立つことが出発点。われわれは石川さんを支える」と励ましました。
 民商の仲間に背中を押された石川さんは納税者の権利を学び、追徴金の減額を求める「請願書」や「更正の請求書」を作成しました。民商では大東支部の仲間に呼びかけて11月15日、一関税務署と交渉。菊池さんや「換価の猶予」を実現した加藤英一さん=写真館=も駆け付けました。「売り上げの二重計上」による不当な課税を追及するとともに「税務署が誤った指導を行い、正しい申告をゆがめた」ことに強く抗議。総務課長は「事実関係を調べて『更正の請求』はきちんと処理する」と約束しました。

誤り認めさせ

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一関税務署に誤りを認めさせ「勝利報告集会」に集まった一関民商の仲間

 しかし、税務署は「この資料ではだめだ」「追加の資料を出せ」と迫るなど仕事中にも再三にわたって電話をかけてきました。ストレスがたまった石川さんは2月に慢性膵炎で入院。その最中に税務署から「更正の請求」は認めないとの連絡が入りました。石川さんの怒りは爆発。体重は10キロ以上減り、体力を奪われていましたが、退院後、石川さんは一人で税務署に出向いて「これは詐欺行為だ。税務署員が犯罪行為を行っていいのか」と力を振り絞って抗議。1カ月後、一関税務署はようやく「二重課税」の誤りを認め、一関市も還付を決定しました。
 仲間の大切さを実感した石川さんはいま、大東支部摺沢班の会計を引き受け、民商活動への確信を深めています。「怒りの抗議ができたのは、自分の後ろにはいつも民商の仲間がいると思ったから。民商に相談しなければ、でたらめな税務調査を暴くことはできなかった。税金のことをもっと学んで、税務調査に苦しんでいる人たちの力になりたい」

 * * *

あるまじき犯罪行為
税理士・角谷啓一さんのお話
 この調査事例で一番気にかかったのは、「申告書の書き方教えます」という行政指導を口実に、その3日後に自宅を訪れ、2010〜12年の3年分の帳簿書類等の提出を指示、文字通りの実地調査に入ったことです。すなわち、その年(2013)の1月以降から実施することとされている「事前通知」を、すっ飛ばした問題です。このだまし討ちみたいなやり方が事実とすれば、これは一種の犯罪行為で当然、調査全体が「無効」と断じられても弁解の余地はないでしょう。
 もう一点は、仏像の完成が10年とすれば、09年に受領し、同年の売り上げとした200万円は翌年の売り上げとし、その分、09年の売り上げから除くのは当然です(それに係る経費についても同じ)。ところが、「調査期間が3年なので手が付けられない」とし、09年の売り上げをそのままにしたとのこと。こんなバカげた処理が許されるわけがありません。
 税の知識が不十分で、調査で緊張し、パニックに陥っている納税者の弱みに付け込んだものと考えられ、これまた、あるまじき調査担当官の犯罪的行為といえます。

全国商工新聞(2014年10月6日付)
 

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