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  トップページ > 税金のページ > 徴税攻勢 > 全国商工新聞 第3100号12月16日付
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税金 徴税攻勢
 

県税滞納整理 児童手当差押 高裁違法認定 徴税行政改善の指針

原告代理人・弁護士 高橋真一さん

 1、広島高裁判決の意義
 これまで各都道府県や市町村の行う徴税業務において、1998年2月10日の最高裁判決を盾にして、預金となった差押禁止財産(児童手当や年金など)の狙い撃ち(差し押さえ)が、いわば公然と行われてきた。
 今回の鳥取県がそうであるし、お隣の島根県の調査によると、島根県内の市町村は2011年度、国民健康保険料の滞納者に対し、年金が入金された口座の差し押さえを81件行い、そのうち、年金入金当日の年金の狙い撃ちは70件であった(日本海新聞10月25日付)。これまで商工新聞の報道のとおり全国で同様の事例が頻発している。
 預金となった差押禁止財産の差し押さえに関する過去の裁判所の判断を見ると、これを違法と判断した過去の地方裁判所の判決は、今年3月29日の鳥取地裁の判決を含めごく少数にとどまり、高等裁判所の判決で、これを違法と判断したものは皆無であった。このような状況の中でわれわれ原告・支援者・弁護団は、11月27日の広島高等裁判所松江支部の判決言い渡しに臨んだ。
 広島高等裁判所松江支部は、98年2月10日の最高裁の判決を引用し「一般に、差押等禁止債権に係る金員が金融機関の口座に振り込まれることによって発生する預金債権は、原則として差押等禁止債権としての属性を承継するものではないと解される」として原則論を確認しながらも、「しかし」と続け、本件のような預金となった差押禁止財産を狙い撃ちした鳥取県の差し押さえ処分を明確に「違法」と認定し、鳥取県に対して児童手当相当額である13万円の返還を命じる判決を言い渡した。高等裁判所の判決としては全国で初めてである。
 全国各地の税務当局が公然と行ってきた、預金となった差押禁止財産の狙い撃ちが、高裁判決として初めて「違法」と認定されたことのインパクトは極めて大きい。今後、全国各地の税務当局は「預金となった差押禁止財産の狙い撃ちは高裁で違法と認定された」との認識のもと、広島高裁判決に従うかたちで、預金となった差押禁止財産の狙い撃ちを差し控えていくことになるであろう。
 実際、鳥取県は判決のわずか2日後に上告を断念し、鳥取県知事は「最高裁判断の例外として、預金債権となっていても差押禁止対象となる場合があるという新たな法律解釈を示したものである」「今後の滞納処分の取扱いを改めるよう早急にマニュアル等の見直しに着手したい」とのコメントを発表した。
 以上のとおり、広島高裁判決は、これまでまかり通ってきた差押禁止財産の狙い撃ちを高裁として初めて「違法」と判決した意義があるとともに、全国の徴税業務に対し新たな指針を示すことで、これまでの徴税業務を改めさせることができたという大きな意義がある。

 2、「違法」とされる狙い撃ちとは
 広島高裁判決は、(1)税務当局が、差し押さえ処分の時点で差し押さえる口座に差押禁止財産が振り込まれることを認識しており、(2)口座に振り込まれた差押禁止財産が差押禁止財産としての属性を失っていない場合(差し押さえ処分の時点において口座の大部分が差押禁止財産であり、差し押さえ処分が差押禁止財産の入金直後である場合等)は、最高裁判決の例外に該当し、差し押さえ処分が違法となるとした。
 生活に困窮されている方は、多くの場合、口座には年金や児童手当等の差押禁止財産しか入金されておらず((2)に該当)、これを税務当局が入金当日に差し押さえたような場合((1)に該当)、今後は税務当局の差し押さえは違法と判断されることになる。
 広島高裁判決は、違法となる基準が明確であり、汎用性がある。仮に今後、税務当局が差押禁止財産の狙い撃ちを行ったのであれば、この高裁判決を違法な徴税業務を行う税務当局とのたたかいに役立てていただきたい。

全国商工新聞(2013年12月16日付)
 

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