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  トップページ > 税金のページ > 徴税攻勢 > 全国商工新聞 第3091号10月14日付
 
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税金 徴税攻勢
 

税金問題研究集会 国税通則法改悪後の税務行政の変化をつかむ

 全国商工団体連合会(全商連)は9月28、29の両日、都内で第17回税金問題研究集会を開催しました。民主商工会(民商)会員や県商工団体連合会(県連)の代表、弁護士、税理士ら357人が参加。改悪国税通則法の実施後の新たな税務行政の変化をつかみ、納税者の権利擁護を掲げた運動の教訓を深めました。消費税増税の中止など国民本位の税制・税務行政の実現をめざし、多くの中小業者を仲間に迎えようと活発に議論しました。

全体会 消費増税中止と納税者権利擁護へ 理論と運動を学ぶ

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357人の参加者でいっぱいになった税金問題研究集会の会場

 1日目全体会で主催者あいさつに立った、全商連の鎌田保副会長は「単価をたたかれ、身銭を切って消費税を納税している中小業者を顧みず、消費税を10%に上げる安倍政権は絶対に許せない。納税者の権利を学び民商を大きくすることが、重税や不当な税務行政をはね返す力となる」と訴えました。

たたかい続け権利かちとる
 「憲法が保障する納税者の権利と民主的税制の展望」をテーマに記念講演をした弁護士の鶴見祐策さんは、恣意的な刑罰や課税に抵抗した人民闘争の歴史が、憲法の適正手続きの保障や租税法律主義(国民が同意する議会の決議になしに課税されない国民の権利)に結実していると紹介。その上で、国会が正常に機能せず国民の支持が得られていない消費税増税は租税法律主義違反だと指摘しました。課税庁の質問検査権の限界を示す判決をかちとった民商の裁判闘争に触れ、「権利とは、常に主張し、たたかい続ける不断の努力によって獲得できる」と強調しました。
 全商連の勝部志郎常任理事は基調報告で「改悪国税通則法の狙いは消費税中心の徴税体制の強化に他ならない」と警告。事前通知やお尋ねなど変化する税務調査の特徴と横行する強権的な徴税行政の問題に触れ、納税者権利憲章制定の必要性を強調しました。さらに調査の立ち会いや理由開示を求める意義と納税緩和措置の活用を述べながら、「強権的な税務行政に抗して、生きることが優先するたたかいを発展させよう。『税金の民商』の本領を発揮し、多くの業者を仲間に迎え入れよう」と呼びかけました。
立正大学法学部客員教授で税理士の浦野広明さんは特別講演で、応能負担に基づく税制の確立や税務署に憲法と税務運営方針を守らせることなど、幅広く語りました。
 基礎講座「納税緩和措置の活用」で講師を務めた税理士の角谷啓一さんは、生活や事業の実情を把握せず強権化する滞納処分の特徴を述べ、「納税緩和制度」の活用法を解説。「不服審査と納税者の権利」について講義した税理士の関本秀治さんは、税務署の更正・決定に対する異議申し立てや審査請求、裁判など権利救済制度を説明しました。

民主的税制へ多数派形成を
 2日目の四つのテーマで開かれた分科会と8人の全体会発言では、改悪国税通則法下での不当な税務調査をはね返した運動や、記帳を要求運動の柱に据えた各地の多彩な活動を交流し、教訓が深められました。
 勝部常任理事はまとめ報告で「一人ひとりが主権者としての権利を意識を高め、権力に納税者の権利を主張し、多数派にする運動が民主的な税制と税務行政の確立につながる。仲間と支え合い、攻撃には拡大で反撃し前進を切り開こう」と呼びかけました。
 全商連の菊池大輔副会長が閉会あいさつで「学んだことを生かし税金要求に応えられる民商をつくり、来年の全商連総会めざし拡大を進めよう」と呼びかけました。

分科会1 税務署の新たな動きと対策

 第1分科会「税務署の新たな動きと納税者の権利」では、改悪国税通則法下での不当な税務調査の特徴や、それを許さない運動の成果、問題意識が深められました。
 通則法に「税務署長等が…、あらかじめ(11項目を)通知をする」と定められているにもかかわらず、税務署員が電話で事前通知をしている問題について、福岡県連の参加者が国税局に文書で事前通知をするよう迫った交渉を紹介。他の参加者も「署長名の文書通知を求めている」と発言し、税理士の浦野さんは「法律の解釈上、重要な視点だ」と述べました。
 「調査期間を定めた事前通知を守れと迫り、5年間さかのぼろうとする税務調査を許さなかった」(大阪・吹田)と不当調査に歯止めをかけた教訓が出されました。また「税務調査では、なぜ調査対象に選んだのか、その理由開示を求める請願を読み上げる。そうした納税者の権利主張から調査を中止させた」(和歌山)と請願権を行使する大切さが語れました。
 北海道連の参加者からは「『税務署の事前通知で11項目をチェックシートに記入したあと、どうたたかえばよいのか』と迷う役員がいたので、記入が運動の目的ではないと話し合っている。税務署に調査理由を説明させて初めて納税者は納得する根拠が得られるのだから、そうした主張や権利の確立が重要だ」との問題意識が出されました。
 税務調査に備え、班や支部での対策学習がいっそう大切になることも出されました。

分科会2 強権徴収と納税緩和措置の活用

 第2分科会「強権徴収と納税緩和措置の活用」では、冒頭3人が事例報告。東京・渋谷民商の参加者が社会保険料滞納による「差押予告通知書」乱発の実態と差し押さえ回避の経験を紹介。「年金事務所による強権的徴収が増加しており、情報の共有が重要」と指摘しました。
 広島・三原民商の参加者は、地方税滞納での市による売掛金差し押さえに対し、道理ある交渉で差し押さえを解除させた経験を発言しました。
 愛知・瀬戸尾張旭民商の参加者は、町に差し押さえられた年金を返還させた教訓について、「自己破産し免責を知っていたにもかかわらず、年金を差し押さえたのは違法性も高く、道義的に許されない」と鳥取地裁判決を報じた商工新聞を示して交渉したことが力になったと語りました。
 フロアからは次々に発言を求める手が挙がり、「近年強まっている自治体による強権的徴収について県内すべての自治体と交渉」(広島県連)など、各地の経験を交流しました。
 税理士の角谷啓一さんが助言と質問者への回答をしました。

分科会3 記帳義務化への対応

 第3分科会「記帳義務化と記帳要求にどう応えるか」では、来年1月からの記帳義務化を控え、各地の民商の実践が活発に討議されました。
 「数年前からパソコン教室を週2回、昼間と夜間に開催するようになった。商売を続けていく上で自主記帳・自主計算は欠かせない」(石川・小松)、「支部の税対部員を中心に記帳学習会を開き、税務調査も支部ごとに対応している」(北海道・旭川)、「4年ほど前から支部ごとに集まって記帳を学び合っている。会員同士で教え合うことでつながりが深まっている」(名古屋南)など記帳要求を実現する活動の教訓が語られました。
 一方、記帳義務化の対応について、「税務署交渉では自主計算ノートを記帳として認めさせ、足場を固めている」(千葉・成田)、「記帳は決まったものはなく、税務署も簡易な帳簿を記帳として認めている」(滋賀県連)など経験も報告されました。
 また、自主記帳の実践とともに、納税者の権利の学習の重要性も強調されました。

分科会4 異議申立制度の新たな活用

 第4分科会「異議申し立ての新たなたたかい」では改悪国税通則法が実施され、今後は異議申し立てや不服審査での争いが激しくなるとの認識を共有しました。また、税務調査の最初の段階から不服審査や裁判になった場合の争点を想定して準備することの大切さも話し合われました。
 長野・佐久民商は、農家に修正申告を押し付けて重加算税を7年分かけてきた不当調査を報告。「重加算税の取り消しを求めて頑張っている」と発言。福岡県の民商の歯科技工士が、国税通則法を拡大適用した「予納申告書」は不当だと不服審判所で争っている事例が報告されました。
 推計課税や納税の猶予の不許可処分に対する不服審査の取り組みも報告されました。群馬県の民商からは納税猶予の不許可処分を不服審判所で争った事例が紹介されました。
 生活保護基準の切り下げなどの不服申し立てなど、民商・全商連が取り組んできた税金分野での不服審査の運動を発展させようと意見が出されました。
 税理士の関本秀治さんが助言し、全商連の発行予定の『不服審査と納税者の権利』の改訂版に期待を寄せました。

これだけある徴収緩和のための諸規定

 税金問題研究集会で講義をした税理士の角谷啓一さんは「滞納していても納税者の権利はある。生活の根拠や命まで奪われることがあってはならない」と語り、滞納処分の実践的対処法を著した書籍『差押え』の活用を強調しました。下表は、同書を参考にまとめた「徴収緩和のための諸規定一覧」です。各地で広がる国税・地方税の強権的な滞納処分とのたたかいに役立てましょう。

これだけある徴収緩和のための諸規定
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全国商工新聞(2013年10月14日付)
 
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