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  トップページ > 税金のページ > 徴税攻勢 > 全国商工新聞 第2958号 1月17日付

税金 徴税攻勢
 

納税者権利を蹂躙し庶民増税へ突進 11年度「税制改正大綱」=立正大学教授・浦野広明さん


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納税者の権利に逆行する国税通則法改悪

 菅内閣は昨年末、2011年度の予算方針と「税制改正大綱」を閣議決定。4日の年頭記者会見で、首相は消費税を含む「税制改革」について早期に与野党協議を開始し、
6月ごろまでに方向性を示すと明言しました。「納税者の権利を踏みにじり、庶民増税に突き進むもの」と批判する税理士で立正大学法学部の浦野広明教授に、大綱の危険な狙いについて聞きました。

法人税は5%減税、消費税は大増税へ
 2011年度の「税制改正大綱」は、「消費税を含む税制全体の議論を一体的に行うことが不可欠」だと言い切った。
 2011年度税制「改正」項目として、(1)納税環境整備(2)個人所得課税(3)資産課税(4)法人課税(5)消費課税(6)環境関連税制(7)市民公益税制(8)国際課税(9)関税(10)検討事項―を掲げている。また、「各主要課題の2011年度での取り組み」について述べている。(別項参照
 大綱は、大企業・大資産家を優遇する一方で、中小企業・庶民・勤労者をいっそう軽んじる内容となっている。
 所得税・住民税では、中高所得者の扶養控除を縮小し、40%という低すぎる最高税率には手をつけない。株式の配当・取引にかかる税金を大幅値引きする証券優遇税制は、さらに2年間延長すると述べている。
 一方、給与所得控除額は必要経費として多い、収入の6%とまで言っている。
 しかし、給与所得控除の立法趣旨は、労働力の価値を評価する勤労性控除の側面を中心としたものだった。
 勤労性控除は、(1)労働力の支出による消耗を補充するための労働者自身の維持費(2)労働者の次世代後継者を養育することで、労働力を永続的に再生産するための労働者家族の維持費(3)労働力の養成や教育に必要な養成費-などである。給与所得控除額は現行でもまだまだ少なく、減らしてはならないのである。
 相続税では最高税率の引き上げを5%にとどめ、他方で相続税の課税最低限である基礎控除を引き下げて、庶民のなけなしの住まいに課税する手がかりをつかんだ。
 一方、資本金10億円以上の大企業の内部留保は、2010年3月期決算において、前年より11兆円増やし244兆円に達している。大企業をより優遇するのが国税と地方税を合わせた法人課税の5%引き下げである。その半面で消費税の値上げを急ぐという。

納税環境整備「例外が原則」の危険
大綱は、国税通則法を「改正」して納税者権利憲章を策定するとしているが、税務調査において、一定の場合事前通知をしないという。事前通知の原則をいろいろ書いて、最後に「ただし…事前通知をしない」と例外を書く。そのうちに例外が原則になるのである。今は事前通知のない場合、憲法の適正手続き違反であるとたたかえる。しかし、例外規定ができたら、事前通知無視の調査がまかり通ることになる。

憲法は権利保障
 大綱は、「納税者に気をつけていただきたいこと」などと納税者には権利だけでなく義務があると指摘する。しかし、憲法97条は、基本的人権は永久不可侵の権利としていることを忘れてはならない。
 憲法は、直接私人を拘束するものではなく、国や公共団体の機関の行動を拘束するものであり、国民の権利と国家の義務とが対応する仕組みの上に成り立っている。この原則は、憲法が存在する論理的前提である。大綱は、この憲法の原則的考え方を逆転させ、憲法を国民の権利と国家の義務との対応という形ではなく、国家の権利と国民の義務との対応という形でとらえようとしている。
 憲法を、国民の権利の体系としてとらえるか、それとも義務の体系としてとらえるかの問題は、国家権力と国民との関係を、対立関係と見るか、それとも協力関係として見るかによって規定される。
 憲法を、国民の権利保障の体系としてとらえる考え方は、国家と国民の対立を前提としてのみ論理的に可能である。対立性を否認し協力性を強調するなら、国民の権利・納税者の権利を制限、否認する考えが出てくる。違法な税務行政がはびこる対立関係があるから、納税者の権利を明記した憲章が必要なのである。
 大綱路線とのたたかいを盛り上げる運動が望まれる。


生きる権利奪うな=千葉・茂原民商会長 田村眞紀夫さん

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対話と署名・宣伝で奮闘を決意する田村会長

 新たな年を迎え、悔いなき歩みの第一歩は消費税増税反対の決意と納税者の権利憲章制定の運動に尽きるものと思念し、気持ちを引き締めています。
 権利憲章制定など民主党が掲げた公約に期待をしましたが、増税内閣へと舵を切り、すべて裏切られました。
 国の財政状況を見て「増税は仕方がない…」という声も聞かれますが、"仕方がない"という考え方はあまりにも短慮であり、もたらされる結果はとても重大です。今でも、憲法違反の税制である「払いたくても払えない重税」の結果は、滞納の増加という数字に表れ、差し押さえによる滞納処分など納税者の生きる権利が損なわれています。
 国の経済を支える多くの中小業者を無視する税制改正に対して、反転攻勢の春にしなければなりません。そのために、対話と署名・宣伝、団体訪問行動を進め、増税阻止、徴税強化反対の運動を大きく展開する決意です。


11年度税制改正大綱要旨
(10年12月16日閣議決定)
(1)納税環境整備
 納税者権利憲章は、「納税者に求められる内容、納税者に気をつけていただきたいことを…示すとの考え方に沿って策定」「事前通知を行うことを法律上明確化…一定の場合には事前通知を行わない」「物件の預かり・返還等…法律上明確化」「課税庁が増額更正できる期間(現行3年のもの)を5年に延長」「白色申告者に対する…記帳・帳簿等保存義務の拡大」
 番号制度は、「早期に導入することが望ましい」「番号制度を活用するには…取引の相手先に番号を『告知』する…取引の相手方が税務当局に提出する法定調書…に番号を『記載』」「法定調書の拡充…税務当局への提出資料の電子データでの提出の義務付け」
(2)個人所得課税
 「所得控除の見直しなどによる課税ベースの拡大」「所得控除から税額控除・給付付き税額控除・手当へという改革」「成年扶養控除の見直し」「配偶者控除…見直す方向で検討」「給与所得控除については…給与収入総額の3割程度が控除されている一方、給与所得者の必要経費ではないかと指摘される支出は給与収入の約6%であるとの試算もあり…過大となっている控除を適正化する」
 「〈一定の〉退職所得について2分の1課税を廃止」「金融証券税制…2年延長」
(3)資産課税
 基礎控除を引き下げて課税件数を増やす。
(4)法人課税
 法人税率を引き下げる。
(5)消費税
 消費税について「消費税を含む抜本改革に政府は一刻も早く着手すべきである」

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