日欧経済連携協定(EPA)の批准
市場を開放し地域経済に大打撃

全国商工新聞 第3336号11月12日付

 日本政府は7月17日、日欧経済連携協定(EPA)に合意し署名しました。今臨時国会では条約批准と関連法案の審議が予定され、早ければ来年1月にも発効する可能性があります。
 日欧EPAには多くの問題点が指摘されているにもかかわらず、批准を急ぐのは、英国がEUから離脱する来年3月前に批准を急ぎたいという欧州連合と、TPPから離脱したアメリカをけん制する安倍内閣の思惑があります。
 日欧EPAは日本側の農林水産物の82%、鉱工業製品を合わせると94%の関税を撤廃するものであり、世界の国内総生産の3割、世界の貿易の4割を占める巨大な貿易圏です。
 農業への影響はとりわけ大きく、政府の発表でも国内農業生産が1100億円、チーズなど乳製品は203億円減少と試算されています。「影響を過小評価している」との指摘もあり、地域経済に多大な影響が及びます。
 臨時国会で水道法の「改正」が審議されていますが、日本の水道事業へ欧州企業が参入し、水ビジネスが展開され、国民の健康・安全に重要な水が、多国籍大企業の「利益」によって脅かされる懸念があります。保険・共済分野の詳しい合意は不明ですが、欧州ビジネス協会は「共済の保険業法適用」を求めています。
 安倍首相は成長戦略の柱として「自由貿易拡大」路線を突き進んでいます。TPP11は6カ国の国内手続きが終わり、12月30日に発効することが決まりました。東アジア地域包括的経済連携(RCEP)の年内合意をめざし、大企業の輸出と海外投資を増やすことに力を注いでいます。こうした政策は一部大企業に利益をもたらす一方、貧困と格差を拡大し、多くの国民・中小業者に犠牲を強いるものです。
 日欧EPAについても協定の内容は国民にほとんど知らされていません。国会での徹底審議を通じ、国民生活への影響を明らかにすることが必要です。
 早期の条約批准を優先するのではなく、日本の経済主権、食料主権を守り、貿易、投資の国際的なルール作りが求められています。

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