「全世代型」うたう社会保障改革案
負担許さない運動を広げよう

全国商工新聞 第3334号10月29日付

 安倍内閣は15日、臨時閣議を開き、消費税10%への増税をあらためて表明しました。その理由の一つとして掲げたのが「全世代型社会保障」の実現に向けた財源確保です。
 しかし、財務省が9日、財政制度等審議会の分科会に示した提言は、充実どころか医療や介護、子育て支援の社会保障制度の改悪案が列挙され、給付抑制や削減など、国民への負担を押し付ける内容です。
 医療では、75歳以上の窓口負担を原則1割から2割に引き上げ、湿布や保湿剤といった薬剤の患者負担分の一定額までの全額自己負担化などを求めています。また、国民健康保険(国保)の都道府県化の下、市町村の一般会計からの法定外繰り入れを廃止しようとしています。いまでも高すぎる国保料(税)が納め切れず、各地の民商に相談が寄せられているだけに、さらなる引き上げは、商売と暮らしへの打撃になります。
 介護保険の利用者負担を原則2割に引き上げることや、要支援や要介護1・2の生活援助サービスを保険給付から外すことも盛り込んでいます。介護報酬の改悪で、小規模な介護事業所の経営が困難になっていても、経営主体の統合・再編等を促す方向です。
 子育て支援の分野では、中学生までの子どもがいる家庭に、子一人当たり最大月1万5000円支給している「児童手当」の対象さえ狭めようとしています。
 いずれも国民には自己責任を強いて、国の公的責任は後退させるものです。国民に「社会保障を充実したければ、消費税の増税を受け入れろと迫る」-これが「全世代型社会保障」の正体です。財務省は、社会保障関係費を「高齢化による増加分の範囲に収めるため、制度改革や効率化に取り組む」とし、「すべての世代が、その能力に応じて支え合う」という考え方の社会保障制度に変えようとしています。
 憲法で保障された「生存権」(25条)を守るためにも、地域の社会保障推進協議会とともに、社会保障改悪を許さず、改善をめざす取り組みを広げましょう。

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