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中小商工業研究所
 

第20回商工交流会 地域経済振興の道探る

 「中小商工業と地域の力で、幸せで公正な社会を」をメインテーマに愛知県豊橋市で2、3両日に開催された第20回中小商工業全国交流・研究集会(商工交流会)。講演やパネルディスカッション、二つの基礎講座をはじめ多彩な分科会で、地域経済振興を担う中小業者の姿や役割発揮が参加者の確信を広げました。

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「幸せで公正な社会」実現へ、中小業者の果たす役割を確信した参加者(閉会全体会)

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開会全体会

 全体会では、森田茂愛知県実行委員長が歓迎あいさつ。藤川隆広全国実行委員長は「アベノミクスに代わる経済政策を探求し、中小商工業と地域の力で幸せで公正な社会を築く道を明らかにしよう」と呼び掛けました。
 常任実行委員の岡崎民人・全商連事務局長が基調報告。この間、中小企業振興条例の制定が相次ぎ、住宅リフォームや商店リニューアル助成の創設・継続など地域循環型の施策が広がっていること、また、日本共産党や立憲野党との共闘で国政を動かしてきた成果も明らかにしながら、経営力を高める課題をはじめ「中小商工業の多彩な発展方向を探ろう」と提起しました。
 静岡大学の鳥畑与一教授が「カジノな経済は、地域社会を救うのか?」と題して講演。カジノを含む統合型リゾート施設建設が、地域経済を破壊する危険性について、世界の実例から指摘し、「わが国は、自然・歴史文化・気候・食という観光振興に必要な四つの条件を兼ね備えた世界でも数少ない国のひとつ。カジノ抜きの統合型リゾート、地域資源活用型の観光立国は可能である」と強調しました。
 全体会終了後、会場を移し「地域振興の実践に学ぶ-小規模振興条例・地方版総合戦略を生かして」「小規模事業者支援と最賃引き上げの可能性」の二つのパネルディスカッション、「事業計画のつくり方と実践方法」「憲法と経済民主主義を考える」の二つの基礎講座が行われました。
 翌3日午前中は、12の分科会と二つの移動分科会がもたれ、午後から閉会全体会が開かれました。
 岡崎まちゼミの会代表の松井洋一郎さんが「さあ、商いを楽しもう!まちゼミの力と可能性」と題し特別報告。全国305の地域に広がるまちゼミは「個店の繁栄・継続」「まちの価値向上」に力を発揮していることを紹介し、「奪い合う商売はやめましょう。新しい価値をつくり上げる“商い”、三方良しで地域経済の活性化が重要」と述べると、参加者から大きな共感の拍手が上がりました。
 梅原浩次郎さんの特別報告では、リニア新幹線問題で「巨大な再開発とストロー現象で地域を衰退させる」と告発しました。
 最後に、小林世治常任実行委員・元日本大学教授が閉会あいさつを兼ねまとめ講評。(1)新自由主義経済体制への批判と告発(2)格差と貧困の是正に向けた共同行動の前進(3)地球温暖化や大規模災害など今日的課題解決に向けた挑戦(4)国民の豊かな暮らしへの中小業者としての貢献-など成果も含めさまざまな報告を踏まえ、研究者と運動体の単なる経験交流にとどまらない深い問題の解明や政策的議論がなされ「大きく成功したのでは」と強調。
地元の自治体やマスコミも後援
 交流会には、民商会員・業者、研究者、学生、院生、国会議員、地方議員、自治体関係者など2日間で延べ1300人が参加。愛知県、豊橋市、豊明市など地元自治体や中日新聞社、東海日日新聞社、東愛知新聞社、エフエム豊橋、豊橋ケーブルネットワークなどマスコミ各社の後援も受けました。

分科会 全国の実践を交流

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事業承継の分科会で、発言に聞き入る参加者

 5年間で39万社の小規模事業者が減る中で焦眉の課題となっているのが「事業承継」。29人が参加し、事業を継いだ若手経営者らから、生きいきとした報告が相次ぎました。
 同業他社から声をかけられ、事業を継いだ経験を語ったのは新潟県胎内市で無店舗の生花販売「Musubi屋」を経営する石山浩さん。自身の仕事をしながら、1年間アルバイトとして勤務して円滑に継承しました。「事業と一緒に引き継いだ顧客との関係構築がいまの課題」とし、「こうした親族以外の事業承継事例は増えるのでは」と話しました。
 静岡県沼津市で解体業「株式会社マルニ」を営む兵庫利一さんは、父親から事業を継いで7年。「社長の息子としてではなく、一作業員として一番下っ端から頑張り、現場を任せられるようになった。汗水たらしたからこそ従業員の信頼を得られ、自分自身の客も増えてきた」と継承の経緯とやりがいを発言。「父とは何百回もけんかと仲直りをし、互いに認め合う関係になれた。継いだものを次世代につないでいきたい」と展望を話しました。
 関西中小工業協議会事務局の小田利広さんは、関わった270社からさまざまなパターンの事例20社を抽出し、事業継承の動機や課題などを分析した結果を報告。長崎県連の徳永隆行会長は、息子への継承の経験を語りました。
 助言者の嘉悦大学大学院ビジネス創造研究科長の三井逸友さんは「親の背中を見て育ち、親と同じことをしていては事業は続けられない。新しい発想をもつため積極的に情報を集め、世の中の変化をつかんで経営革新を」と呼び掛けました。

移動分科会(2) 連携で活路見出す

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豊橋レモンを手に取る参加者

 40人が参加し、農業を軸に、独自の経営努力を進めている県内の小規模事業者の取り組みを学びました。
 「河合果樹園」(豊橋市)では、ハウス栽培の無農薬レモンで異業種と連携する「初恋レモンプロジェクト」を視察。代表の河合浩樹さんは「大切にしているのは情報発信の工夫と提案型の農業。そのために他業種について学ぶことが必要」と紹介。河合さん考案のレモンを使った、かしわ餅やギョーザなど、新商品作りの努力を学びました。「無農薬栽培の苦労は?」「後継者は」などの質問が相次ぎました。
 「河合牧場」(田原市)を経営する河合重昭さんは、近隣13カ所の牧場と連携し、ブランド牛乳「どうまい牛乳」を生産。「搾乳に休みはないので、自分たちの休日も月に数日。飼料も輸入が主なので、円相場に左右される」との話に「家族経営の自営業者はどこも同じ」と共感の声が寄せられました。
 「どうまい牛乳」の試飲に舌鼓を打った参加者は、「小規模でもアイデアと同業者との連携で活路を見出せる」「情報発信の努力に学びたい」などと感想を語り合いました。

自己実現できる場に 異業種ネットワーク

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55人が参加し、仲間との連携の大切さを学んだ「異業種交流とネットワーク」

 新潟民商の細山俊夫副会長は、5年間続けている「名刺交換会」について発言。青年部の拡大で悩んでいるとき「婚活」にヒントを得て計画したもので、今ではチラシを商工新聞に折り込むと会外の人も含めて毎回30〜40人が参加していると紹介しました。工夫している点では、自由に商売や個人的なことも交流すること、会費も徴収し独立採算であること、年3回の開催でその時期に合った情報を提供し、民商の組織についても理解が深まるよう努力していることなどを話しました。
 静岡・浜北民商の森川義宏事務局長は「要求実現委員会」という名称で、製造加工、建築・建設、小売・サービスの3業種で交流を継続していると発言。資料提供に知恵を絞り、すぐ答えを出すのでなく一緒に考えること、全員に周知するとともに必要な人にはきちんと声をかける、などに留意していると報告しました。
 討論では「建築に関する相談が多く仕事の紹介につながっている」(愛知)、「東大阪の業者ネットワークで作れないものはない」(大阪)、「士業の専門家のネットワークで売り上げ増と地域貢献に努力」(愛知)との発言や、SNSでの情報発信の留意点など、参加者同士が経験を交流し合いました。
 助言者の井内尚樹・名城大教授は「腹を割った話し合いが出発点。商売を伸ばす、勉強になるなど、業者が自己実現できる場を提供することで、民商の魅力を高め、拡大にも力が発揮できるのではないか」と激励しました。

パネルB 小規模支援欠かせない

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最賃引き上げと中小業者の経営の持続をともに実現する課題に迫ったパネルディスカッション

 パネルB「小規模事業者支援と最賃引き上げの可能性」は、94人が参加。京都大学教授・岡田知弘さんをコーディネーターに、4人のパネリストの報告と参加者を交えての討論で、最賃1500円と中小業者の経営の持続性をともに実現する課題に迫りました。
 小林世治さん(元・日本大学教授)は、最賃の引き上げには中小企業の「適正利潤」、労働者の最賃以上に支払い可能な「売り上げ」があることが前提。そのためには、中小企業が「価格転嫁力」を持つことが必要であり、公正な取引ルールの整備が欠かせないと問題提起。山本篤民さん(日本大学准教授)は、建設業における低賃金問題を例に、「まずは国や自治体発注分で賃金低下に歯止めをかけ、大手建設業者との関係で対等な契約関係を構築すること、ダンピング受注の抑止などに向けた共同が必要」と指摘しました。
 森田茂さん(愛知県連副会長)は、中小企業の立場から払いきれない社会保険料の実態などを紹介しながら、「下請二法」や「独禁法」など中小企業を守る法制度が機能していない現状を指摘し、大企業に社会的責任を果たさせる共同の運動が不可欠と発言しました。
 「経済にデモクラシーを。最低賃金1500円に。中小企業に税金をまわせ」の運動を進める「エキタス」の鈴木啓太さん(学生)は「コンビニでバイトしているのでオーナーの苦しさはよく知っている。大企業ばかりが優遇されていておかしい。どうしたら1500円に引き上げられるか、中小企業の方と一緒に考え、ともに水準を上げていく運動をしていきたい」と決意を述べました。
 フロアから、最賃引き上げのためには「賃上げによって増加する社会保険料負担などを軽減するために中小企業への直接支援が必要」「財源として大企業への輸出還付金の見直しや免税点の引き上げなども考えられるのではないか」などの発言もあり、「中小業者も労働者も、みんなが幸せになれる社会」の実現に向け、活発な討論が行われました。

基礎講座2 憲法が導く真の豊かさ
 自民党がこの秋の臨時国会中に改憲原案をまとめようとする構えを崩さない中、108人が参加。
 講師の石川康宏・神戸女学院大学教授=写真=は、(1)社会の多数の合意の下に、大多数の人が幸せに生きられる経済の仕組みつくりが経済民主主義であり、日本国憲法にその多くが含まれていること(2)そうした世界の経済民主主義の到達点から逆行する日本の動き(3)「市民と野党の共闘」の力強さこそ、それへの対抗軸であること-をスライドも使い、分かりやすく解説しました。経済民主主義先進例として、駐日デンマーク大使館がツイッターで発信する内容を紹介しました(年間6週間の有給休暇のうち最低3週間を連続取得/学費は無料、全学生に月額8万円程度の給付金/高齢者が介護を必要とする場合、全て無料で自治体がサービスを提供など)。
 参加者からの「日本は、何ゆえにデンマークと違うのか」「若い人が憲法を学ぶのにちょうどよいテキストは」「デンマークのようになり、国際競争力は大丈夫か」などの質問に丁寧に回答。「憲法を守り、市民運動を成熟させねば」「世界的に先駆的な憲法を持っていても、政府が今のままでは宝の持ち腐れ」などの感想が寄せられました。


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