全商連の「流通ビジョン」の特徴

 全商連が発表した「流通ビジョン」は、大型店の野放しの出店で各地の商店街と卸小売業が壊滅的打撃をうけているという緊急事態に対応し、大型店への出店規制強化と中小小売業、卸売業の自主的経営努力の方向、行政の支援策、大企業の公正な取引などを提言しているのが特徴です。

 特徴の一つは、住民、自治体がこぞって「もうこれ以上大型店はいらない」という地域について、都道府県知事の指定にもとづいて、大型店の出店を禁止する「緊急立法」(5年間の時限立法)の制定を提案していることです。
 二つは、大店法のこれ以上の緩和に反対し、大店法改正を提案しています。そのポイントは、(1)法律の名称を「大企業者等による小売業の事業活動の規制に関する法律」に変更(2)都道府県知事による許可制(3)資本金100億円以上の中・小型店舗も規制(4)不当廉売や正月営業など大企業者の日常の事業活動、営業行為について、都道府県知事の権限で規制(5)住民に開かれた審議会の設置−など。
 三つは、地域経済の振興のためには、卸・小売商の自主的経営努力がいっそう重要として、その方向を示していることです。とりわけ消費者の意識、要求を深くとらえて、消費者とともにきずく商店街、店舗づくり、地域の個性や特徴を生かした商店街づくりを消費者、住民とともにすすめること、などを提案。
 これらを推進していくうえで、商店街・商店会の専従役職員の配置など、体制の強化についても提案しています。
 四つは、商店街、中小商店の自主的努力が実を結ぶためにも、行政の役割を重視、中小商業活性化基金の抜本的拡充など金融、情報提供、人材の確保・育成への支援策を具体的に提案しています。
 特に、地方自治体が商店街の活性化を、商店街、住民、自治体の共同の事業として追求していくことが基本であること、まちづくり計画をすすめていくうえで、必要な条例・要綱を制定することは地方自治を発展させる大きな意義をもつという考えを鮮明に打ち出しています。
 五つは、大企業がもっている資金力、販売力、情報力などが国民の利益に沿う方向に発揮されるべきとの立場から、大企業の社会的責任と公正な取引ルールの確立を強調していることです。規制緩和の進行によって、大企業の優越的地位を乱用した不公正な取引がいっそうひろがる様相を見せている事態を重視、この問題での大企業自らの責任と、国、自治体の役割、法律での規制強化を提案しています。