はじめに

 私たちが「国民の豊かなくらしに貢献する90年代流通のあり方(全商連90年代流通ビジョン)」を発表して7年がたちました。ここで私たちが示した考え方との共通の土台は各方面に広がり、雇用やまちづくりといった面からの中小商業に対する期待も高まっています。
 しかし現実には、90年代に入っていっそうの大型店の出店ラッシュが続き、その激烈な競争の中で、まちの中心部の大型店の撤退がすすみ、商店街の衰退とまちの荒廃は社会問題としても深刻になっています。
 また、「価格破壊」という名のダンピング競争が繰り広げられ、価格や仕入れの面でも、資金力の面でも、圧倒的に不利な立場にたたされている中小業者の経営は土台から揺るがされています。最近では政・財・官を一体とした「コスト構造の改革路線」のもとで、大手小売資本による労働者や取り引き業者への圧力がつよめられ、一方的な返品や仕入れ値の設定、多頻度納入などがおしつけられています。
 政府がすすめる規制緩和政策では、国民にとって大切な衛生、安全、文化、食糧などとともに製造・卸・小売の商品の流れが大資本の経営戦略の下におかれるようになり、地域の産業を窮地に追込み、つりあいの取れた経済の発展を阻害してきました。
 こうした政策は、国民との矛盾を広げるばかりです。

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 いま、景気が低迷し、雇用不安が広がり、産業の空洞化が抜き差しならないところにまで深刻になっている下で、政府がすすめようとしている政策は、消費税率の引き上げや特別減税の廃止、医療保険制度の改悪など消費を冷え込ますような政策ばかりで、不況の影響を最も大きく受けている国民のくらしを豊かにしたり、中小業者の経営を安定させるものではありません。
 とりわけ、これまで他の業界に比べて先行的に規制緩和をすすめてきた流通・商業の分野では、いよいよ大店法の廃止を審議のテ−マに乗せようという動きが大詰を迎えています。
 私たちは、こうした大店法をめぐる緊迫した情勢のもとで、大店法のあり方、その中で中小小売業者の果たす役割とその振興の方向、「公正な取引ル−ルの確立を」といった要求にこたえる提案を行なうという目的をもって、この「提言」をまとめました。
 国民の共同を広げるうえで、この提言が討論の素材になれば幸いです。