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全商連の方針・決議
 
全商連の見解
 
助け合い共済を破壊する憲法違反の規制とは断固たたかう
「改正」保険業法の共済規制に対する全商連の見解
一、「改正」保険業法の経過と当面の対応

 1、「改正」保険業法の実施から約5カ月が経過しましたが、国民の間には、新たな混乱と苦悩が高まっています。とりわけ、健全に運営されてきた広範な自主共済に対し、政府・金融庁が「保険」として新たな法規制をかけたことは、自主共済の存在意義を根底から否定しかねない事態を広げています。

 影響はすでに広がっており、PTAや税理士の自主共済などで「専門職員の配置や法人会計処理の必要性」への対応の困難を理由に制度の廃止が相次ぎ、また知的障害者の互助会でも「このままでは解散せざるを得ない」と悲痛な声を上げる状況です。

 そもそも自主共済への規制を議論した金融審議会では「構成員が真に限定されているものについては、特定の者を相手方とする共済として、従来どおり、その運営を構成員の自治にゆだねることで足り、規制の対象外とすべきである」としていました。にもかかわらず「改正」保険業法の策定と政省令の作成段階で、規制対象は大幅に拡大されました。
 この結果、法律の目的自体が、「マルチ商法」を規制するという当初の趣旨から逸脱し、自主共済に保険会社に準じた規制を押し付ける措置へと問題がすり替えられたのです。

 2、今回の保険業法「改正」に当たり、金融審議会では、総務省行政評価局が実施した「根拠法のない共済に関する調査結果報告書」(04年10月)などに依拠して、現状や新たな規制の基本的枠組みが検討されてきました。しかし総務省の調査自体、広範な自主共済のなかで、極めて対象が限定された調査に過ぎず、一定の動向を把握した程度の報告です。実際、政府・金融庁は「改正」保険業法を強行実施した今日に至っても、規制対象となる自主共済が全国に幾つあるかさえ把握できていません。

 このことは、自主共済における助け合いの実態を十分に踏まえているとは到底、いい難い状況であることを示しています。また今後、「改正」保険業法における規制が、実態に即し、かつ公平におこなわれるのかどうかという点で、「法の下の平等」に対する新たな危惧さえ生んでいます。

 こうした状況のなかで、より重大なのは、「改正」保険業法に、届け出や登録をしない場合の行政罰が明記されていることです。自主共済を強制的に保険業の規制対象とし、助け合い制度を破壊する「権力の濫用」に余地を残していることを見逃すことはできません。

 3、政府・金融庁は「改正」保険業法による「特定保険業者の届出期限」を06年9月末としており、目前に控えています。
 しかし自主共済にとって、いったん届け出るなら、「改正」保険業法のさまざまな規制を追認し、法的根拠を与えることになります。しかもその規制内容は、会社設立の義務付けや兼業の禁止、保険計理人の選任などの膨大な実務負担に加え、収支の是正命令の権限など、およそ「団体自治」に基づく自主共済の組織と財政のありようを根底から否定し、存続を不可能とさせるものになっています。

 この間、私たち民商・全商連は、広範な自主共済を実態に即して「改正」保険業法の適用除外にするよう、関係諸団体と共同して要求すると同時に、全商連共済会に対しては、その独自の制度と組織に即して、規制の対象外とするよう政府・金融庁と交渉を重ねてきました。

 署名や抗議はがき、議員要請などを通じて世論と運動が高まるなか、「改正」保険業法による自主共済規制は大きな社会問題となり、自民党や民主党、日本共産党など、主要政党の国会議員が「適用除外」請願署名の紹介議員になっています。また広範な団体が「特定保険業者の届出期限」である9月末以降も、独自の対応をしつつ「適用除外」を求める共同行動を継続していくことを確認しています。

 こうした一方で、私たちは全商連共済会独自の制度と組織に即した要請と質問も重ねてきました。
 このなかで金融庁は、全商連共済会を「保険業」とする合理的根拠も、「契約者保護」を成り立たせている団体自治の評価も、「人格のない社団等」の組織と財産への干渉問題に関しても、まともに答えませんでした。にもかかわらず8月22日、質問から3カ月もたって突如、「死亡弔慰金は社会通念上、10万円ぐらいまでだ」「最高36万円まで支払うことになっている入院見舞金も問題」などと電話連絡をしてきました。

 4、全商連は8月23日、急きょ4回目の金融庁交渉をおこないました。
 このなかで、「慶弔見舞金の一部が相場より高い」という主観的判断で、全商連共済会の総体を「保険業」扱いする金融庁の不当性を指摘しました。

 また「特定保険業者の届出」に関しても、「督促など行政手続を踏んでおこない、安易な罰則適用はしない」ことを確認しました。
 以上がこの間の経過ですが、「改正」保険業法が実施されて以来の情勢の推移、及び運動の到達点を総合的に勘案し、民商・全商連として、次のように対応します。

 私たちの基本的立場は、「改正」保険業法における規制の対象に、民商・全商連共済は断じて該当しないというものであり、全商連共済会としての「特定保険業者の届出」は当面、おこないません。

 金融庁が全商連と異なる判断をし、具体的な行政指導があった場合には、行政不服審査や司法判断をていねいに積み重ね、全商連共済会の制度と組織を守る立場から、適切かつ機敏な対応をはかります。

 このことは「国民主権」や「結社権」を保障する憲法に基づく正当かつ民主的な権利の行使です。
 こうした対応をしつつ、広範な助け合い共済を守る立場から、「改正」保険業法の見直しをめざし、国民共同を広げていきます。

二、助け合い共済を断固守り抜くために

 私たち民商・全商連は、政府・金融庁が広範な自主共済の実態を十分に踏まえないまま、さまざまな欠陥のある「改正」保険業法での規制を強行するなら、国民諸階層の助け合いに、取り返しのつかない被害をもたらすと考えます。
 「もうけの論理」を追求する保険業と助け合いの自主共済は、明確に区分すべきです。
 この立場から、全商連共済会の制度と組織に即して、「改正」保険業法の矛盾を告発し、会内外に国民的議論を呼びかけるものです。

1、全商連共済会の「保険業」扱いには道理がない

 全商連共済会は「民商・全商連の運動と組織を豊かに発展させるものとして、会員相互扶助の理念に基づき、助け合い運動を行う」(全商連共済会規約)ことを目的としています。

 そして保険会社との委託契約などは一切なく、まさに「自前の共済」に徹して運営しています。
 共済会の会員資格は、民商会員です。また会員とその配偶者、及び事務局員には、長年の努力を通じて、「難病」認定を受けていても、また健康状態のいかんを問わず、加入できる措置を確立してきました。

 この助け合い共済の原資は、民商会費に上乗せして、1人あたり月額1000円を出し合う共済会費です。「みんなで出し合う」この原資によって、見舞金や弔慰金、祝金を同じ民商会員が仲間として、激励を込め、手渡すことを原則にしています。また病気の早期発見・早期治療にむけ、集団健診活動の助成もおこなっています。

 この共済活動は、「中小業者の社会的・経済的地位の向上」を目的に、政府や自治体から何ら補助金を受けることもなく、多彩な活動をすすめる民商・全商連運動への信頼感を高め、会員相互の連帯感を強めています。そして保険業法「改正」が論議されるはるか以前から、総会をはじめ、あらゆる機会に社会保障制度・福祉の後退を補完する「保険業」と、われわれの団結の力としての助け合い「共済」を区別することを強調してきたのです。

 こうしたなかで今回、「改正」保険業法が実施されましたが、「改正」保険業法を解説する「コンメンタール『無認可共済の法規制』」では、保険業法の適用除外の範囲に関して、「構成員の自治のみによる監督を理由に、自己責任を問うことが可能」であり「保険事業を主目的とした団体との区分が明確なものである団体の行う共済事業」としています。そして具体例として、(1)団体の構成員相互間、及び団体と契約者の間に、極めて密接な関係があることが社会通念上明らかであること、(2)団体の構成員に保険への加入を主目的とした構成員がいないことが明確であること‐としています。

 この点を、全商連共済会でいえば、(1)会員相互、および全商連共済会と共済会員との関係が、きわめて緊密でなければ、前述のような組織運営が不可能であることは誰の目にも明らかであり、(2)民商会員でなければ、共済会員になれない制度の性格、及び民商会費を出し合い、活動に参加することを前提とした上で共済会費を拠出しているという点からも、共済加入を主目的とした入会はあり得ません。

 したがって、全商連共済会は、「保険業」とは明確に区分すべき「助け合い共済」そのものであり、「保険業」扱いすることに道理はありません。

2、団体自治による「契約者の保護」を尊重するべきである
 全商連共済会の最大の特徴は「仲間から助けられる喜びと、助ける喜びを分かち合う運動」(全商連第47回総会方針)だという点にあります。全商連共済会に納められた共済会費のうち、約9割が見舞金などで加入者に還元されていますが、このことは利潤・利益が目的の「保険業」とはまったく違うからこそ可能になっています。

 さらにいえば、95年の阪神大震災の際には、多くの大手保険会社が地震免責条項を盾に保険金の支払いを渋ったのとは対照的に、全商連共済会は、被災者救援の「特別措置」を総意で決定し、8000人余の被災加入者に対して、共済会費の6カ月猶予とともに一律5万円の見舞金を届け、激励とボランティア活動に全力でとりくんだ経験があります。

 まさに団体自治に基づく助け合いの積み重ねがあったからこそ、創立以来22年間、「契約者の保護」に関するトラブルは1件も発生していないのです。同時に、「改正」保険業法は、「契約者保護」と「支払不能の防止」のため、準備金の積み立てを求めていますが、地道な組織的努力のなかで安定的に確保してきました。

 私たちは、社会通念上の「保険業」を運営しているという意識はまったくありませんが、あえて共済会員に対する「契約者保護」を求められるなら、その目的は十分に達成しているといえます。そして全商連共済会が22年の実績を持つに至ったのは、憲法が保障する「結社権」を生かし、構成員の自治を何より尊重してきたからです。

 今日、政府・金融庁が、全商連共済会に対し「保険業」を強要するなら、「助け合い共済」としての総意を結集することは困難になり、そのことが共済の制度を不安定にさせ、「契約者保護」に逆行する結果さえ招く新たな要因になると私たちは考えます。
 したがって、団体自治があるからこそ「契約者の保護」を成立させてきた全商連共済会の実績を正当に評価し、「保険業」を強要するべきではありません。

3、「人格のない社団等」への「会社化」強制は違法行為である
 全商連共済会は、全商連を組織の母体としていますが、その母体を含めた組織全体が「人格のない社団等」の構成要件を満たすなかで活動してきました。

 すなわち、組織の外延(全体構成)として、「団体としての組織を備え、多数決の原理がおこなわれ、構成員の変更にも関わらず団体そのものが存続し、その組織によって代表の方法、総会の運営、財産の管理その他団体としての主要な点が確定している」(最高裁判例)のです。

 全商連共済自体が、民商・全商連運動のなかに深く位置付けられ、共済会費は民商会費と合わせて自覚的に集められていますし、また慶弔見舞金なども近隣の民商会員で構成する班・支部活動のなかで手渡すことを原則にしています。全商連共済会が成立するためには、母体となる民商・全商連の活動が大前提になっており、「改正」保険業法による「兼業の禁止」など、そもそもあり得ないのです。

 さらに、組織活動を支える財政については、全商連共済会も全商連も会の財産を「総有財産」としています。民商・全商連の主な収入となる民商会費は、自覚を基礎に、民商会員が自発的に拠出したものであり、いわゆる「収益」ではありません。

 つまり民商会費の法律的性格は、私法(民法、商法)上の一般債権ではないのです。そのことは、民商会員本人の自由意志に基づいて会員であることをやめたり、あるいは何カ月か会費を滞納して、会員としての「権利と義務」を放棄した場合、会費の滞納、「債務の不履行」となりますが、それでも法律上は強制執行できないという性格を意味しています。

 このような組織運営と財政的基礎を前提としつつ、共済活動については、「権利と制度上の保障」を「全商連共済会規約」で明確にしています。そして「決算の結果、欠損金が生じた場合は、総会の議を経て共済会費を変更することができる」(第38条)ことも明記した上で制度を運用しているのです。

 重大なのは「改正」保険業法で、政府・金融庁がもっぱら自主共済を「保険業」の規制対象にすることに執着してきたため、自主共済が歴史的に形成してきた財政基盤や独自の規約との法律的整合性を検討する姿勢が極めて弱かったということです。

 例えば、「改正」保険業法では「少額短期保険業者」の登録をする場合、株式会社や相互会社などへの「会社化」が義務付けられることになります。この規制が全商連共済会に適用されるなら、構成員の団体自治の根幹にある「人格のない社団等」としての組織と財政の性格が、一方的に変更を求められるということです。

 それは、「人格のない社団等」の共済活動に対し、「改正」保険業法によって「入り口」では「保険や業の概念として営利性は関係ない」と規制対象に呼び込みながら、規制を受けた後の「出口」では、営利性が明確な「会社」化を義務付けるということにほかなりません。

 私たちは、「改正」保険業法におけるこの法体系自体が憲法違反であると考えます。
 憲法は、「集会、結社及び言論、出版その他一切の表現の自由は、これを保障する」(第21条)と、国民に等しく認めていますが、今回の「改正」保険業法で「人格のない社団等」における助け合いの道をふさぐなら、まさに憲法が保障する「結社権」の侵害に当たります。

 また憲法は「あらたな租税を課し、又は現行の租税を変更するには、法律又は法律の定める条件によることを必要とする」(第84条)とも明記しています。この点でいえば、「改正」保険業法による「会社化」の強要が「営利性」や「法人性」を発生させ、新たな納税義務を課すことにつながっています。

 このことは、「改正」保険業法の法律目的の大幅な逸脱であり、租税法律主義と「人格のない社団等」の財産権に対する明らかな侵害です。
 「改正」保険業法により、強制的に「人格のない社団等」の財産、及び収入の性格を変更することは、まさに違法行為であり、断じて認めることはできません。

4、国民合意にむけ、「改正」保険業法の見直しを要求する
 「改正」保険業法は、「契約者保護」を目的としていますが、違法なマルチ商法をおこなう「無認可保険」の規制なら、従来の保険業法で十分に対応できました。

 また今日、政府・金融庁の監督下にある大手保険会社が、「保険金の違法な不払い」で相次いで行政処分を受けていますが、この根本的な原因が大手保険業の「優越的地位の濫用」と「もうけの論理」の追求にあったことは、もはや誰の目にも明らかです。
 私たちは、「改正」保険業法の背景に、「もうけの論理」から市場拡大をねらうアメリカ政府と日米大手保険業界の圧力があったことを強調してきましたが、まさにその害悪が現実のものとなっているのです。

 こうしたなかで、国民の相互扶助を根底から破壊する自主共済の規制に対し、国民の批判がいっそう高まっています。
 世論と運動の高まりのなかで、与謝野馨金融担当大臣は「ボランティアで、また善意を持ってやってきた方々の立場を、きちんと考えなければならない」と国会答弁しました。

 また金融庁も「パブリックコメント」への回答で、団体の慶弔見舞金に関し、「社会慣行として広く認められ、社会通念上妥当な範囲内のものであれば、保険に当たらない」と公表していますが、その「妥当な範囲」は政省令を含め、何ら法律に明記されているものでもありません。

 今日、政府・金融庁に求められるのは、広く国民が人間としての尊厳を守り合うため、自発的におこなっている助け合い共済を尊重し、支援する立場に徹することです。
 この立場から自主共済に対する調査をやり直し、実態を十分に踏まえることで、「改正」保険業法に対する国民合意を図れるよう、制度と運用を見直すべきです。

 民商・全商連は、「改正」保険業法の見直しにむけ、広範な国民とともに奮闘する決意を表明します。