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中小業者応援の政治に転換を

 日本の針路と国のあり方が問われる総選挙が2日公示されました(14日投票)。「日本再生のためにはこの道しかない」と「アベノミクス解散」を声高に唱える安倍首相。「格差」を広げ日本経済を破綻に導き「富国強兵」を進める安倍政治そのものが問われます。消費税増税反対、集団的自衛権ではなく平和な日本、原発再稼働ではなく再生エネルギーを活用した新しい経済の再生…。国民と中小業者が求める「新しい別の道」を示しているのはどの党か。総選挙の争点と各党の態度をあらためて検証すると…。

徹底検証「アベノミクス」
 安倍政権の「アベノミクス」で景気や暮らしはどうなったのか、「成長戦略」の継続は日本経済と国民生活に何をもたらすかを検証し、中小業者の願いを実現する政策転換の道を考えます。

原料高騰など国民生活直撃 成長戦略「3本の矢」の影響
 「企業が収益を上げれば雇用を増やし、賃金も上げることができる。この好循環を回していく。これがアベノミクス」と安倍政権はこの2年間、「デフレからの脱却」を掲げ、(1)大規模な金融緩和(2)公共事業などの機動的な財政運営(3)規制緩和などの成長戦略「3本の矢」を実行してきました。
 「第1の矢」の金融緩和で円安と株高が進み、円安で輸入食品や原材料が高騰し、物価上昇が国民生活を直撃しています。この「輸入インフレ」と消費税増税が消費を減退させ、実質賃金を低下させました(図1)。
 株高や円安でもうかった大企業は内部留保を拡大させただけで、配当は増やしても賃金の引き上げや取引先への利益配分を行おうとはしていません。特に小企業は、コストアップや増税分の転嫁ができず売り上げも利益も減らし経営悪化させています。中小企業庁の調査でも原材料やエネルギー価格の上昇分を転嫁できていない中小企業が56%に上ります(図2)。
 「第2の矢」の公共投資は、資材高騰や労働者・職人の確保の困難から滞り、被災地でも入札不調が相次ぎ復興の遅れが問題になってきています。しかも、国土強靭化の名の下に、防潮堤の建設はじめ効果の疑わしいムダな公共事業も拡大しており、国の借金だけは確実に増え続けています。
 「第3の矢」は法人税の減税、TPP(環太平洋連携協定)の推進、労働法制の規制緩和、国家戦略特区の拡大、道州制の導入、原発やインフラの輸出などで、財界が「成長戦略の本丸」として実現を迫っているものです。労働者派遣法改悪案、国家戦略特区改定法案など国民の強い反対で審議未了廃案になったものもありますが、成立をあきらめたわけではありません。

図1:実質賃金指数

図2:転嫁が困難が6割。その理由は?

予算盾に政治支配を強める 「地方創生」「小企業支援」の狙い
 輸出系企業にとって好都合な円安という条件を整えても、輸出が増えず貿易赤字が続くのは、海外生産が広がっているためです。「法人税の大幅な減税は競争条件の改善には欠かせない」と財界は要求しますが、実質負担率は1000万円以下の企業の負担率は10億円企業より高くなっています(図3)。都市と地方の格差、大企業と中小企業の格差が広がるなか、安倍内閣は「地方創生」や小企業支援を言わざるを得なくなっています。
 「アベノミクスを地方まで波及させる」-安倍首相は所信表明演説で、海士町のさざえカレーや大山地ビールの例を挙げ「やればできる」とやる気をあおりましたが、首相が競わせようとするのは「やる気」ばかりではありません。
 6月には小規模基本法の成立を図り、さらに解散直前には「地方創生」関連2法を成立させました。
 その一つ「まち・ひと・しごと創生法」は、基本理念と創生本部設置、国および地方自治体での総合戦略策定の責務規定を盛り込んでいます。都道府県、市町村レベルで総合戦略をつくらせ、それを国が評価して予算を配分する仕組みです。
 石破茂創生担当大臣は「バラマキはしない」と公言しており、「頑張るものが報われる」と政府追従の自治体に予算配分を重点化するものです。地方創生特区を創設し、大企業が活動しやすい自治体づくりを競わせ、また、高齢化と人口減少の進行は避けられないと「自治体消滅論」で脅威をあおり、自治体の再編や「集約・活性化」を迫っていくものと考えられます。
 住民の命と暮らしを守るかけがえのない役割を担う自治体に市場原理の物差しを持ち込み、「選択と集中」で効率性を競わせるなどもってのほかです。
 小規模基本法でも「5人以下の小企業」の「持続的発展」への支援を掲げながら、「再興戦略」のKPI(数値目標の達成の度合い)を評価基準とし、政策支援の「選択と集中」を図るなど、支援の方向はこれまでの成長戦略となんら変わりはありません。
 商工会や商工会議所には巨額の財政援助を行う一方、自治体には地域振興と小規模企業支援などの政策立案と実行の責務を課しながら、予算は1円もつけないなど問題が多いものです。自治体の首長からは、「国は気楽なものだ。法律はつくりながら、予算もつけず自治体にやれというだけか」と怒りの声さえ上がっています。
 「地方創生」でも「小企業支援」でも、政府は予算を、政治支配を強める手段としようとしています。「世界で、企業が最も活動しやすい国をつくる」というアベノミクスの地方への押し付けは許せません。

図3:資本金階級別法人税平均実効負担率

問われる大企業応援の政治 対抗軸を示せる政党は
 安倍首相は「この道を進むしかない。他の選択肢を示されたことはない」と開き直っています。しかし、アベノミクスによる異次元の金融緩和などで日銀が大量の国債を買い続け、累積債務が1000兆円を超え、財政は悪化しています。
 消費税が導入された以降の税収が増えていないのは、その分を法人税減税に回したからです(図4)。
 大型公共事業の復活や環境破壊のリニア新幹線など消費税収入を当て込んだ放漫なバラマキの拡大も復活し、財政支出は増え続けています。
 消費税8%への引き上げが日本経済に与えた打撃は、東日本大震災を大きく上回るものです。「増税不況」から抜け出すには、大企業応援の政治から、国民の懐を豊かにすることです。小規模基本法が、正当に評価したように事業所数の99.7%を占め、雇用の6割超を担い、日本経済の中心である中小企業への支援を強め、経営を守り、その持続的な発展を図ることこそが求められます。
 大企業応援のアベノミクス転換が問われる総選挙。民主党は「豊かな中間層の復活」と言いますが、格差を広げた消費税増税と社会保障改悪の「一体改革」に無反省。TPPや成長戦略でも推進の立場です。維新は、「失われた『第三の矢』を、維新の手で」と自民党の補完勢力の立場を鮮明にしています。日本共産党は、大企業応援から暮らし第一に政策の軸足を移すと主張。「中小企業と地域経済の振興」など三つの提案で日本経済の立て直しを掲げています。

図4:大企業減税の穴埋めにされた消費税

真の経済発展をめざし大企業優遇から転換を
消費税に頼らずに財源の拡充できる
 消費税は応能負担原則に反し、弱いものの負担が重い「悪魔の税金」です。消費税を当面8%から5%に戻し、消費税に対する依存率を引き下げます。
 代替財源は受取配当不算入や租税特別措置などの大企業・富裕層への優遇税制を是正して新たな財源を生み出します。受取配当不算入の是正だけでも12・5兆円になり(中央大学名誉教授・富岡幸雄氏の試算)、消費税の増税の中止はもとより5%への引き下げも可能です。

循環型経済めざし地域経済を活性化
 TPP交渉からの離脱、原発再稼働中止・エネルギーの自給、食糧の自給率を引き上げることが必要です。
 日本の食料自給率はカロリーベースでも40%に満たず(図5)、エネルギーの自給率も4%と低く、多国籍企業による経済支配の影響を受ける脅威が常に存在しています。「エネルギー転換」や「農業・漁業・林業」などの一次産業と結びついた地域循環を通じた地域産業を活性化し、雇用を拡大することで地域を元気にできます。

図5:食料自給率の推移

負担軽減を図って中小業者を元気に
 円安によるコストアップや転嫁できない消費税が中小企業経営を圧迫し、税や社会保険料の滞納が増え、「大滞納時代」を迎えています。
 中小企業の社会保険料負担の軽減をはかるとともに、払えない税の軽減免除措置を拡充し、中小企業経営の存続と安定を支援します。
 また、金融円滑化法の終了後の中小企業金融の円滑化を目的にした新たな立法として地域再投資法の制定とともに「小規模基本法」に基づく、総合施策の立案・具体化や実行のための予算措置を公正に自治体に求めます。

自治体支援拡充し地域再生の応援を
 道州制を前提にした自治体の「統合」「集約化」の押し付けをやめ、地方自治体の自治権の拡充を通じ、住民自治・団体自治を尊重しつつ「持続可能な地域づくり」を進めるためには、地方自治体の独自財源の拡充が必要です。
 地方分権と地方交付金などの財源保障の拡充を通じて、地域再生を応援すること求めます。

この2年間の主要政策に対する各党の態度

国民の願いかなえる政党は
【消費税】延期は“増税宣言”「10%中止」しかない
 消費税8%への増税は、消費を冷え込ませ、GDP(国内総生産)を2期連続で落ち込ませるなど、景気を悪化させ、中小業者の経営に大打撃を与えています。
 こうした事態を受け、自民・公明与党は消費税の10%への増税を1年半先送りすることを表明。しかし、安倍首相が経済状況によっては増税を中止できると定めた消費税増税法付則18条の削除を打ち出したように、与党の「延期」公約は「10%への増税を絶対に行う」という“増税宣言”に他なりません。
 自民・公明両党は、高まる増税反対世論を意識し、選挙公約に「軽減税率」導入を掲げ、国民への負担軽減を図るかのような大宣伝を始めています。
 しかし、消費税が10%になれば、その税収は約27兆円に上り、国民1人当たり21万円、4人家族で84万円の負担になります。「軽減税率」は、さらなる大増税路線を突き進むための「免罪符」として持ち出されているのです。
 国民への負担増を本気で心配するなら、増税中止こそ道理ある道です。そうすれば、低所得層への「簡易な給付」も、中小業者に複雑で過重な実務を押し付ける「軽減税率」の導入も必要ありません。「税率を5%に戻せば景気対策になる」という指摘は経済の専門家からも相次いでいます。
 「社会保障」のためと繰り返されてきましたが、消費税が導入されて以降、社会保障は改悪され続けてきました。「財政再建」のためというのも国民だましの口実です。それは、消費税導入以降、大企業を中心とした法人税減税が繰り返され、国の借金と軍事費が増え続けてきた現実が証明しています。
 自民、公明両党と3党合意を結び、連続増税へのレールを敷いた民主党は、「延期」というだけで、10%への増税を容認しています。
 一貫して消費税増税に反対し、消費税に頼らない財源案を示している政党を大きく伸ばすことこそ、増税勢力への審判であり、中小業者・国民の営業と暮らしを守る確かな道です。

【原発】再稼働を許さない 再生エネの普及へ
 福島第1原発事故から間もなく4年。避難している福島県民は今も12万人を超えます。事故の収束はおろか、原因究明も除染も進まず、被害者に対する賠償は打ち切り・切り捨てです。それにもかかわらず、原発の再稼働を進め、輸出にさえ躍起になっているのが安倍自公政権です。
 衆院選でも自民党は、原発を「重要なベースロード電源」と位置付け、「活用する」と「重点政策」に明記。公明党は「将来的に原発に依存しない社会をめざす」といいながら、実際は自民党と同じ立ち位置です。維新の党は「原発依存から脱却」を掲げていますが、共同代表の江田憲司氏がかつて所属していた「みんなの党」は安全対策を前提に再稼働を容認。民主党も野田政権時に大飯原発の再稼働を推進、再稼働を容認してきました。
 その一方、日本共産党をはじめ、社民党、生活の党は「再稼働ストップ、原発ゼロ」を主張。国民的な運動も各地で広がりを見せています。
 原発が稼働ゼロになってからすでに1年2カ月。省エネ努力で原発ゼロの社会を日本はすでにつくり出しています。太陽光、小水力、バイオマスなど再生可能エネルギーに本気で取り組むならば、地域経済・産業にも新たな可能性が広がります。それはすでにドイツの実践が証明しています。「再稼働ストップ、原発ゼロ」へ。いまこそ、その方向に日本の舵を切るときです。

【社会保障】負担増・給付減やめ安心できる制度に
 安倍政権は、消費税増税は社会保障充実のためと言いますが、現実は「負担増」と「給付減」のオンパレード。70〜74歳の患者負担を1割から2割へアップ▽入院時の食費の自己負担化▽特別養護老人ホームへの新規入所で要介護1〜2を原則排除▽「特例水準解消」による年金給付削減-などが12年8月、自民・公明・民主の3党が合意した「税と社会保障の一体改革」の下で強行されてきました。8%への増税分5兆円のうち「社会保障の充実」に使われたのは1割。3兆5000億円を超える社会保障切り捨てが行われたのです。
 さらに、安倍自公政権は、年金支給開始年齢の67〜68歳への引き上げ、介護報酬の6%(6000億円)削減、75歳以上の高齢者が加入する「後期高齢者医療保険」の保険料軽減措置の段階的廃止などの改悪を検討。国民健康保険(国保)でも公的医療費の抑制と国保料(税)の値上げ・徴収強化が狙われています。
 維新の党も掲げる保険が効かない「混合診療」の拡大は、高額な医療費を自己負担できる患者のみが新しい医療技術を受けられるようになり、保険証1枚で誰でも必要な医療を受けられる「国民皆保険」制度を掘り崩すものです。
 民商・全商連は国保や介護、社会保険の制度改善と国庫負担引き上げを要求。その願いに応え、国会でもともに運動してきたのが日本共産党でした。同党は年金削減ストップ・低過ぎる年金の底上げ、最低保障年金制度、医療費の窓口負担・国保料(税)の軽減などを主張しています。

【憲法】9条の精神生かし平和の国際貢献を
 安倍政権は7月1日、閣議決定で憲法9条の解釈改憲を強行し、集団的自衛権の行使を容認しました。「戦争する国づくり」を阻止し、憲法を守り生かす願いを託せる政党を選ぶことが総選挙の一大争点です。
 集団的自衛権の行使容認の狙いは、アフガニスタンやイラク戦争のような米軍主導の戦争に自衛隊を世界的規模で参戦させるためです。
 自民党は重点政策集で集団的自衛権の行使を具体化するための関連法案を「速やかに整備する」と明記。さらに「時代が求める憲法を」と明文改憲を書き込みました。
 民主党は閣議決定の撤回を求める一方で「自衛隊による切れ目ない危機対処」「未来志向の憲法」などと重点政策で記し、海外派兵型の軍事力強化や憲法観では自民党と基本的な立場は変わりません。
 維新の党も集団的自衛権の行使に賛成、公明党も解釈改憲に賛成しました。
 日本共産党は「海外で戦争する国づくり」を許さず憲法9条の精神に立った外交戦略で平和と安定を築くと公約に明記。「北東アジア平和協力構想」など具体的な対案を示しています。
 「平和でこそ商売繁盛」を信条としてきた民商・全商連が「戦争する国づくり」に反対し、憲法を守り生かすのは歴史的使命です。

【米軍新基地】沖縄の民意に応え建設強行ストップ
 沖縄の名護市辺野古への米軍新基地建設をストップし、平和で豊かな沖縄をつくるかどうか-。総選挙で問われる大きな問題の一つです。
 先の知事選挙では新基地建設反対を掲げた翁長雄志氏が圧倒的に勝利し、県民は「基地建設ノー」の意思を明確に示しました。同時にそれは、力とカネで県選出の国会議員などに屈服を迫った安倍内閣に対する県民の痛烈な批判でもありました。
 しかし選挙直後に「(基地建設は)粛々と進める」(菅官房長官)などと表明。県民の意思を踏みにじり、安倍内閣は基地建設を強行しようとしています。まさに民主主義を踏みにじる暴挙です。
 新基地建設について政府は「沖縄の負担軽減のため」と繰り返します。しかし辺野古に造られる基地は、1800メートルの滑走路を2本つくり、面積は普天間基地の5倍、耐用年数は200年と、まさに最新鋭のものです。負担軽減どころか、半永久的に沖縄に基地を押し付けるとんでもないものです。
 翁長知事を支えた力で、新基地建設反対、オスプレイ配備反対のきっぱりした審判を今度の選挙で示すことが求められています。

税制の本末転倒正せ 黒字の大企業に減税・赤字中小企業に増税
 消費税増税を断行する一方、自民党は総選挙の重点政策集に法人実効税率を数年で20%台までに引き下げることを盛り込みました。
 法人税減税は、財界・大企業が強く要求しているもので、これまでも「欧米より高い」などの口実で税率引き下げが繰り返されてきました。実際には租税特別措置や政策減税などさまざまな減税措置があるため、実質負担率は低く、2兆円もの利益を上げるトヨタは08年度から5年間、1円も法人税を払っていませんでした。
 法人税率の1%引き下げで約5000億円の税収が減ります。その財源として、法人税の外形標準課税を中小企業へ拡大することを狙っています。賃金や資本金の額に応じて課税されるため、赤字企業も負担が求められます。現在は資本金1億円以上の約3万社が対象ですが、1億円未満の中小企業にも拡大することで約248万社が対象となります。資本金が300万〜500万円の中小企業で試算をすると、赤字でも11万〜26万円の税負担となります。
 さらに、中小法人の法人税軽減税率(15%)の廃止、欠損金の繰越控除制度の見直し、地方税の損金不算入なども検討しています。黒字の大企業に減税し、赤字の中小企業に増税するのは本末転倒です。

全国商工新聞(2014年12月8日付)
   

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