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トップページ >  国保・年金のページ > 国保 > 全国商工新聞 第2830号 5月19日付

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後期高齢医療と「メタボ検診」
根っこは同じ制度

その重大な問題点を洗う
仙台錦町診療所・産業医学センター 広瀬俊雄所長に聞く

 
 
   4月1日から始まった後期高齢者医療保険制度に国民・中小業者の怒りが集中し、中止・廃止を求める声が大きく広がっています。特定健診・特定保健指導(メタボ健診)も始まりましたが、この二つの制度は深くつながっています。仙台錦町診療所・産業医学センターの広瀬俊雄所長にその問題点を聞きました。

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後期高齢者医療制度の廃止を訴える街頭署名(神奈川・金沢区)
1.始まった「メタボ健診」とは?
 「後期高齢者医療制度」が始まり、日本中が悲痛な憤りの声で満ちています。昨年の住民税増税と類似した形で、始まるや「そんなバカな」「そんなことまったく予想外だ」との怒りが爆発。「天引き後の生活苦を考えての自殺」まで起きています。4月末に行われた衆議院山口2区補選ではこの問題が争点となった自民・公明の候補が惨敗しています。
  こうした怒りの声に政府・与党は「決まる前に言え、今さら遅い」と逃げます。しかし、「後期高齢者医療」の詳細は余りにも国民には知らされてきませんでした。
  この4月には、もう一つ大事な制度が始まりました。「特定健診・特定保健指導」、いわゆる「メタボ健診」です。4月からすべての医療保険者に義務付けられ、40歳以上のすべての人が対象です。同時に、75歳以上は「後期高齢者健診」として区別されています。これを含めて「特定健診・特定保健指導」といわれています。
  「メタボリック症候群退治」をうたうこの制度は、昨年の「流行語大賞」の一つに挙げられ、「国民周知」は成功したかのような見方がありますが、理解されたのかというとまったく違います。
  こちらは、「後期高齢者医療制度」と違って時間がたてばたつほど、その「ひどさ」が国民を襲うことになるのです。
  実はこの二つの制度の根っこは同じです。始まった時の首相が福田氏で、制度をあみ出したのが小泉元首相なのです。

2.後期高齢者医療制度と「メタボ健診」の関係?
 厳しい労働と生活実態によって増大する病気・障害が医療費増大の最大の要因です。
  政府・厚生労働省は、そのことに目を背け「生活習慣病」という呼称を生み出し、「定着」させてきました。長時間労働や遠距離通勤、単身赴任などの原因をなくす政治をせず、個人にその「責任」を押し付け続けてきたのです。
  その流れの中で高齢者の疾病・健康障害も増え続け、いわゆる保険財政の危機も生まれてきたのです。
  諸外国に比べれば驚くほどの「低医療費政策」の下で、ついに究極の「自己責任」として登場したのが「後期高齢者医療制度」であり、その財源の一つとして考えられたのが「特定健診・特定保健指導」制度なのです。

3.「メタボ健診」の具体的な仕組みは?
  「国家挙げての予防医学」という隠れみのをもって、熱心な保健師や医師、行政担当者を「巻き込み」ながら、「40歳から75歳までに「メタボ健診」を実施します。検査結果に基づき「医療機関に行く人」「詳しい保健指導を受ける人」「簡単な指導や健康情報をもらう人」を選別。各保険組合にいわゆる「メタボ者」を減らす目標を持たせ、その達成度によって評価する「成果主義」が導入されました。
  しかも、その脅しとして「後期高齢者保険援助金」が使われるのです。二つの制度が「太いパイプ」でつながっているのです。
  目標が達成できない保険組合は、同援助金に最大で10%もの支出が増やされます。今でも厳しい健保財政に加えて、ペナルティー(罰)を避けるための取り組みが始まったといえます。
  三重県伊勢市では「7人のメタボ侍」と称した市役所職員の1人が猛暑の中でのジョギングで死亡しましたし、企業でもサンスターが「メタボ職員」を「心身健康道場」に強制入所させています(『アエラ』4月28日号)。
  楽しく健康な労働・生活が目標ではなく、これでは「健全な」保険財政のための施策です。

4.「後期高齢者健診」の問題点は?
 仙台市の説明会や住民への配布文書によると、75歳以上も特に他の年代と区別はされず「基礎健診」の中に(75歳以上と標記)扱われています。県北の大崎市の場合も同様です。
  ところが、広域連合議会の質疑・説明によれば、「75歳以上の健診は努力義務」であること、特に保健指導はなおさらであり、健診自体も、血圧、脂質、血糖で治療中の人は「当面の対象」とされています。
  ホームページで概括したところでは「後期高齢者健診」は「治療中の病気のない方」向けとされているところが多いようでした。
  「特定健診・特定保健指導」は、健保組合に「医療費削減」を「義務付け」しており、受診率も目標管理されています。その数字を上げるために、従来より自己負担額を大幅に下げているところも現れています(例えば岩手県)。加えて「受診勧奨」や「アウトソーシング(外注化)」で医療機関・健診機関に支払う健診料金・指導料金が増えれば、国保財政はいっそう逼迫することは明らかです。
  すでに全国の過半数を超える自治体で75歳以上の助成金を打ち切りました。「後期高齢者健診」が差別されることは自明です。
  以上、「特定健診・特定保健指導制度」には重大な問題点があり、国民から強い批判の声が上がっている「後期高齢者医療制度」は直ちに「廃止」すべきです。

 
     
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