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改憲・戦争国家と連動する国民投票法案
Q&Aとマンガで早わかり
今国会で緊迫 国民投票法
成立許せば改憲、戦争国家へと連動
 憲法を変えようとする動きが激しくなっています。自民、公明与党は改憲の手続きを定める「国民投票法」案を4月中にも提出し、今国会で成立させようとしており、民主党もこれに同調しています。ところが、国民には同法案の危険な内容がほとんど知らされていないばかりか、国民投票に対する運動や報道に厳しい規制をもうけるなど重大な問題が含まれています。たたかいは、いよいよ正念場です。法案の問題点をQ&Aで見てみます。

Q1 憲法96条にも『改正の手続き』が定められています。国民投票法で改憲の手続きを決めるだけなら問題ないのでは?
A1 手続きだけじゃない。改憲への第一歩
 国民投票法を決めるのは手続きだけではなく、改憲をするのが大前提です。憲法は侵略戦争の反省の上にたって、二度と戦争をしないことを世界に誓い、国民主権、基本的人権の尊重、平和主義の三つを原則にしました。自民党はその平和主義を定めた原則の一つ、9条を改悪しようとしています。
 確かに憲法96条には「改正」の手続きを定めていますが、改憲のための国民投票法案を出すのであれば、まずは憲法を変える必要があるのかどうかを議論し、必要と判断されたときに初めて手続きを定めるのが筋道です。ところが、自民党は「手続き法をつくらないのは『立法の不作為』」と言って、成立を急ぐ根拠にしています。
 「立法の不作為」とは例えば、国民が国家賠償請求をしたのに法律がないため、権利が侵害されるのは「不作為」と言えますが、いま問題になっているのは国民投票法がないために憲法「改正」権が侵害されているわけではありません。
 しかも、96条は憲法の原理、原則を変えることを認めているわけではありません。国民世論は9条改悪には慎重な姿勢を見せています。9条改悪は国民の側から出されている要求ではなく、米国や財界の要求にこたえようとする政府・与党が言い出していることです。

Q2 自民党は、憲法をどのように変えようとしているのですか?
A2 戦争ができる国に変えようとしている
 自民党の最大の目的は9条の改悪です。イラク戦争のとき、日本の自衛隊が派兵されましたが、「戦力を持たない」「交戦権を認めない」と定めた9条2項があるために、海外で武器を使うことができませんでした。そこで、米国が引き起こす戦争に日本の自衛隊が参加するには、9条2項を削除して「自衛軍」を持てるようにしているのです。
 しかも、9条だけではなく、ほかの条文にも手をつけ、戦争ができる国家体制をつくろうとしています。
 たとえば第12条。「国民の責務」を押し付け、国民の自由と権利には責任と義務が伴うことを国民が自覚し、国民が権利を行使するのには責務を負うことを盛り込んでいます。さらに国民の財産権(29条)についても「公共の福祉」から「公益及び公の秩序に適合するように」に置き換えられました。「公益を守るためには軍事活動が必要。だから、財産を差し出せ」と言われかねないような状況がつくり出されようとしています。
 国民の権利を国が侵害しないようにつくられた憲法が、国が国民に責務を押し付け、国民の権利を制限、規制する内容に全面的につくり変えられようとしています。

Q3 自民党はなぜ、そんなに急いで国民投票法を成立させようとしているのでしょうか?
A3 改憲賛成派が国会で多数を占める今だからこそ
 9条改悪はアメリカと財界から出された要求で、自民、公明、民主はその要求にこたえるため、改憲を競い合うようになりました。昨年の総選挙で自民党が圧勝してから民主党は自民党にすり寄る姿勢を示し、前原誠司前代表は党内から批判が出るほど露骨に改憲の発言を繰り返しています。
 こうしたなかで自民、公明、民主の衆院憲法調査会特別委員会の理事らは昨年12月、都内で会合を開き、国民投票法案を今国会で成立させることを合意。自民党は、国会で憲法「改正」に賛成する議員が民主党も含めて3分の2を占めている今のうちに、改憲に必要な手続きを定めようとしているのです。
 自民党憲法調査会の船田元会長が「今国会で法案を成立させ、今年後半には政党間協議にたどり着き、来年には本格的な協議に入りたい」(衆議院憲法調査特別委員会の理事懇談会)と発言しているように、改憲まで一気に上り詰めたいというのが自民党の本音です。

Q4 9条や25条(生存権)は国民に支持されています。そう簡単に『改正』できないのでは?
A4 条文ごとではなく、一括投票を狙っている
 9条や25条を支持していても一括投票になれば「改正」に「反対」か「賛成」が問われ、どちらとも判断がつかなければ棄権したり、「白票」が投じる人が増える可能性があります。与党案では国民投票法が成立してから投票まで30日から90日と極端に短く、国民は判断がつかないまま投票することになります。しかも、有効投票数の2分の1で改憲が成立するなどハードルが低く、白票が多ければ、そのハードルはさらに引き下がります。
 山口県岩国市でおこなわれた米軍基地移転の是非を問う住民投票では、投票が住民の過半数を超えなければ開票もされないという厳しい規定が設けられていましたが、国民投票法案は最低投票数の規定もなく、多くの有権者が棄権して投票率が30%台でも、有効投票数の過半数で成立する場合もあり得ます。
 自民党は改憲について国民の意見を十分に聞くという姿勢はまったくなく、国民の少数の意見で改憲できるようにしようとしています。選挙権も「20歳から」と国際的にも遅れています。

Q5 国民投票となっても、改憲をやめさせることができるのでは?
A5 法律で反対運動を厳しく規制しようとしている
 国民投票法案は、立候補者から当選者を選挙するために定めた公職選挙法以上に厳しい制限を加え、罰則規定を設けています。
 公務員や学校の先生などの教育者が反対運動に参加するのは、完全に禁止しています。外国人も反対運動をすることはできません。
 ビラまきや戸別訪問を禁止する条項は規定されていませんが、最近、ビラ配りをした人が逮捕される事件が増えています。
これは改憲策動と決して無関係ではありません。
 つまり、改憲に反対する人が家を訪ねたり、ビラを配ったりすると住宅侵入罪で逮捕できるようにするための布石です。
 こうした事件をデッチ上げるのは、反対運動を押さえつけるのが目的です。逮捕者が出ると、反対運動に参加する人たちの足は止まってしまい、活動は委縮してしまいます。厳しい制限を拡大することによって国民の知る権利や言論の自由を奪い、反対運動を封じ込めようとしています。

「憲法9条を守ろう」「平和な世界を」と訴える民商・全商連の隊列(東京、3.19中央集会)
Q6 商工新聞でも反対のキャンペーンを張ることはできるのでしょう?
A6 マスコミも規制の対象に
 自民党案では新聞や雑誌、テレビなど放送機関が国民投票に関する報道・論評をする場合、「虚偽報道等を禁止」し「事実をゆがめて記載するなど表現の自由を濫用して国民投票の公平を害してはいけない」と定め、罰則規定を設けています。
 公職選挙法では「選挙運動の制限に関する規定は、新聞紙または雑誌が選挙に関し、報道及び評論を掲載するの自由を妨げるものではない」と明記した上で、「虚偽報道等を禁止」しています。国民投票法は前置きもなにもなく、いきなり「虚偽報道等を禁止」を定め、しかも、何をもって虚偽とするのか、事実をゆがめていると判断するのか、規制の範囲が明確ではありません。「賛成」「反対」の意見を表明することさえも規制の対象になる可能性もあります。規制強化に警戒が必要です。
 さらに政党や民主団体の機関紙も規制される恐れがあり、全国商工新聞も例外ではありません。ですからどんな内容なのか、国民・中小業者に十分に伝わらないまま、投票することを迫られることも十分に考えられます。

危険な内容が盛り込まれようとしている国民投票法案が国会に上程されようとしています
Q7 国民投票法案や改憲をやめさせるたたかい、展望は?
A7 大きな世論と運動が決定的なカギ
 井上ひさしさんをはじめ9人の著名人が呼びかた「9条の会」が全国に広がり、その数は4500を超えています。立場の違いを乗り越え、幅広い人たちが9条改悪に反対の声を上げています。
 最近の世論調査(「毎日」3月5日付)でも9条について「1項だけ改めるべき」8%、「2項だけ改めるべき」21%、「1、2項とも改めるべき」20%を合わせると49%。「1項維持派」に限ると6割を超え、日本が自衛軍を持つことに賛成しているのはわずか17%。圧倒的な人たちが軍隊はいらないと答えています。
 また、国会内では日本共産党と社民党が「憲法改悪反対」の一点で共闘しようと話し合いがすすみ、党首会談が28年ぶりに実現しました。改憲をやめさせ、9条を守り、国民投票法案をくいとめることで一致し、お互いに奮闘することを確認し合いました。
 さらに、米軍基地の再編計画に反対する世論と運動も、自治体ぐるみで大きなうねりになって広がっています。岩国市では米軍基地移転の是非を問う住民投票は9割が受け入れに反対し、住民らはきっぱりと「反対」の意思を突きつけました。
 「憲法改悪反対」の署名と運動をさらに広げることが、改憲をやめさせる決定的な力になります。

 
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