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  トップページ > 経営のページ > 経営 > 全国商工新聞 第3223号7月11日付
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[風営法]ダンス営業 最高裁で無罪確定=兵庫・西宮民商

クラブ規制撤廃めざす
 「クラブのダンスは、風俗営業法(風営法)で規制すべきではない」―。12年4月、風営法違反で逮捕されたクラブ「NOON」の金光正年さんが6月7日、最高裁で無罪判決を勝ち取りました。一審の大阪地裁(14年4月)、二審の大阪高裁(15年1月)での無罪判決に続く完全勝利です。裁判は注目を集め、風営法の改正にも大きな影響を与えました。兵庫・西宮民主商工会(民商)会員でもある金光さんに、いまの思いを聞きました。

喜びと怒り 裁判を振り返って=金光正年さんに聞く

表

 ―裁判を振り返ってみて思うことは。
 「許可なく踊らせた」「許可なく接客した」などの風営法違反で、クラブやスナックなどが摘発を受けたら、大体は罰金を払ってしばらく休業して、泣き寝入りです。僕の場合は、有志が集まって、弁護団を組んでくれることになった。だから、最後までたたかうことができました。

裁判開始時はバッシングも
 今でこそ、ダンスは悪いことではない、という考え方が浸透してきましたが、裁判が始まった当時は「許可をとらずにダンスをさせたらダメだ」が当たり前。バッシングもひどく、ストレスで円形脱毛症にもなりました。
 検察はこちらの訴えを聞こうとせず、風営法違反の筋書き通りに起訴するだけ。摘発時に撮影していたビデオも上書き削除して、証拠を隠滅しました。法廷では、摘発当時の再現のために音楽をかけたり、客は足をどれくらい動かしたか、ひじはどうだったか、なんて実際にやってみたり。「ダンスが何か」を示すのは滑稽で、面白かったですね。
 ―勝利した背景にはあったものは。
 弁護団の理論の組み立てが大変優れていました。議論を重ねて「クラブとは新しい情報・アートを発信するメディア。表現の自由は当然」と定義づけがされました。風営法の過去をひも解きながら、小細工なし、「ダンスさせましたが何か悪いのか」と真正面からこの法律の異常さに向き合いました。裁判官もそうした姿勢に対して真っすぐに向き合わなくては、と感じたのではないでしょうか。傍聴席は毎回満席で、レッツダンス署名推進委員会(※1)で集めた15万人分の風営法改正を求める署名も世論を動かしました。
 ―12年4月から16年3月までクラブを休業せざるを得ませんでした。
 クラブは営業停止、私は経営を退かなくてはならなくなり無職に。収益はカフェ部門のみになったので、5年前との比較で売り上げは約85%減。活用できないにもかかわらず、クラブスペースに家賃や税金はかかり続け、引き継いだ経営者は貯金を崩してやりくりしました。
 この4年間は本当にしんどかった。僕の時間は止まったままです。無罪になっても、検察が時間を返してくれるわけでもなく、謝罪もない。腹立たしい限りです。

実情に合わぬ「改正」風営法
 ―裁判と並行して風営法の改正運動も行われ、改正された風営法(※2)が6月23日から施行されました。
 施行翌日、大阪ミナミの「特定遊興飲食店」許可地域に行ってきました。警官が6人くらいの組になって、申請通りの営業がされているか見回っていました。申請通りではホールは明るすぎ、空間装飾もできない。結局のところ、「クラブはいかがわしいから、暗かったり見通しが悪かったら何かあるのではないか」という発想から抜け切れていないんです。
 44都道府県で暗さや特定遊興地域を定めた条例がつくられていますが、3月の申請開始以降、5月末までで許可申請があったのは14都道府県で70店舗のみ。東京には300以上のクラブがあると言われますが、申請は26店舗のみです。これが実情にあった改正と言えるのでしょうか。

支援の人たち忘れられない
 レッツダンスの署名を集めていたとき、たくさんのフェスやイベントに出掛け、署名を呼び掛けました。その時に駆け寄ってきてくれた人たちの顔が忘れられません。それから、NOONとクラブシーンを守ろうとイベントを開いてくれたミュージシャンたち。それは映画にもなりました。彼らのことを思うと、この改正が本当に正しいとは思えないんです。
 NOON裁判で、「クラブのダンスは風営法にあたらない」と司法が判断しています。この結果を持って、ダンス議連(※3)の国会議員に会いに行き、クラブにかかる規制撤廃をめざします。僕は、もっと自由に踊れて表現できるクラブを街中にたくさんつくりたい。それが無罪の先にある本当のゴールです。

 ※1 レッツダンス署名
 「風営法からダンス規制を外そう」と、音楽家の坂本龍一さんらが呼びかけ人となり、12年5月から始まった風営法改正運動。イベントやインターネットで広がり、1年間で15万人分の署名が集まりました。
 ※2 改正風営法
 深夜、酒類などの飲食とともに、ショーやダンス、ゲーム、バンドなどの「遊興」を不特定多数の客に提供する店は「特定遊興飲食店営業」とし、その営業には県公安委員会の許可が必要になります。条例によって営業可能地域や照度・店の面積や構造に制限があり、廃業や移転に追い込まれる店が生まれています。
 ※3 風営法改正をめざすダンス文化推進議連(ダンス議連)
 レッツダンス署名などの広がりを受け、13年6月に超党派の国会議員60人で結成。国会内で集会を行うなど風営法議論を重ねて運動を前進させ、改正のために尽力しました。

自由に踊れる」NOONで無罪パーティー

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NOONの無罪確定記念パーティーで音楽を楽しむ人たち

 「朝が来るまで、終わることのないダンスを!音楽を!」―。6月26日、大阪・梅田にあるクラブNOONで「無罪確定記念パーティー」が開かれました。
 摘発時に流れていたイギリスのロックバンド「オアシス」の曲が流れ終わると、NOON弁護団の水谷恭史弁護士は「4年前はこの曲の途中に警察に踏み込まれた。今日最後まで聞けたのは、みんながNOONを守ったから」と感慨深げ。
 証人として裁判に参加した京都大学の高山佳奈子教授は「ダンスだけでなく、芸術分野で表現の自由が認められた。歴史的に大きな意義がある」と笑顔でした。
 深夜に駆けつけた山本辰史さんは、特定遊興飲食店許可区域外で20年以上クラブを経営しています。「クラブは0時で閉めたらやっていけない。お客さんは、『今夜は最高だった。これで明日からも頑張れる』って元気をもらって、しんどい日常に帰っていく。そんな場所をなくすクラブの営業規制は、日本の未来にかかわる大問題」と批判しました。

全国商工新聞(2016年7月11日付)
 
   

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