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  トップページ > 経営のページ > 経営 > 全国商工新聞 第3145号11月24日付
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経営
 

牛乳配達で笑顔と元気届けて=京都・山科

父の遺志継ぎ地域に信頼築く

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「牛乳はちゃんと受け取られているかな」と確認しながら配達します

 夜明け前の街を京都・山科民主商工会(民商)青年部の岸本雅恵さんが運転する「岸本牛乳店」の軽トラックが走ります。「牛乳販売店の仕事を通じて地域住民の健康を守りたい」と5年前、急逝した父親の事業を引き継ぎました。形見ともいえる店と地域のお客さんとの信頼関係を築きながら、お年寄りの安否確認にも一役。民商の仲間の支えを力に、商売に奮闘しています。

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午前4時、軽トラックに牛乳ケースを積み込む岸本さん

朝4時から
 夜も明けきらない午前4時、小柄な岸本さんが配達用の軽トラックに10キロもある牛乳ケースを次々と運び入れていきます。朝の食卓に並ぶには時間との勝負です。配達を待つお客さんがおいしく牛乳を飲む姿を想像しながら、細い路地が入り組む山科の街を縫うように車を走らせます。お客さんは誰もが「毎日ありがとう。岸本さんの元気な姿を見ると、こっちまで元気になる」と笑顔で迎え入れてくれました。配達を終えて自宅に戻り、次の商品の発注を終わらせると、新規顧客開拓のための営業や毎月の集金へ出かけます。

顔を合わせ
 営業や集金について岸本さんは「毎日の配達だけでは会えないお客さんと信頼関係をつくることができる貴重な時間」と話します。顔を合わせ会話することで、お客さんの健康状態や近況などいろいろなことが分かり、それに合わせて商品や健康のアドバイスもできるといいます。集金を振り込みにせず、自分の手で集めているのも「毎日配達している“私”という人間を知ってもらい信頼関係を築くことが大切」という思いからです。そんな岸本さんの努力が実り、今年の9月には取り扱う牛乳の営業成績が近畿地方で1位になり牛乳メーカーから表彰されました。

悩んだ末に
 岸本さんが商売を引き継いだのは大学3年生の時、父が食道がんで急逝したことがきっかけでした。当時、一般企業への就職も内定していましたが、父の突然の死を悲しむ間もなく、就職か家業を継ぐかの決断を迫られました。内定式の前日まで悩んだ末、家業を継ぐことを決意。父の牛乳店への思いと、配達を待ってくれているお客さんの存在が背中を押しました。
 「『岸本牛乳店』がなくなったらお客さんは困るだろうなということが脳裏に浮かびました。困っている人を見たら必ず助ける性分だった父が、最も望まないことなんじゃないかって思ったんです」と当時の心境を語ります。

仲間が支え

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民商の記帳学習会で真剣にパソコンに向かう岸本さん(右)

 商売を引き継ぐ決意はしたものの、直前まで学生だった岸本さんには相続のことや申告のことなど分からないことだらけでした。このとき頼りになったのが父のことをよく知る民商の仲間の支えだったといいます。「本当に親身になって丁寧に教えてくれるのが民商のいいところ。民商がなかったら商売を引き継ぐのはもっと大変だったかもしれない」と語ります。
 いまも民商の記帳学習会や青年部の集まりなどに定期的に顔を出している岸本さん。いろいろな業者の経験を聞けることも民商の大きな魅力だといいます。11月の記帳学習会では、にぎやかに冗談を言い合いながら終始楽しく学び合い、ざっくばらんに話し合う中で納税者の権利や消費税などについて深めました。
 11月の全商連青年部協議会(全青協)総会にも参加します。全国から業者青年が集まる総会に期待を膨らませています。

朝日に誓う
 市が支援する地域の高齢者の居場所づくり事業にも協力し、骨強度測定&試飲会を行っています。きっかけは2年前に直面した高齢者の孤独死でした。配達に行った際、前の日の牛乳がそのまま残されていたのに…なぜ、あの時すぐに連絡しなかったのか。ひどく後悔したといいます。
 「誰にも気付かれずに亡くなっていくような人が生まれる社会状況をなくしたい」−。それ以来、牛乳が受け取られていなかったら必ず連絡し、安否を確認するようになりました。
 「両親を亡くした私にとって岸本牛乳店や民商、地域の居場所づくりで出会う人たちは親代わり。その人たちの人生に最後まで付き合いたい。そのためには父の残した店を守り、自分の子どもにも引き継げるようにもっと顧客を増やさないと。後悔しないようにやれることは全部やりたい」と朝日に向かって決意を語りました。

全国商工新聞(2014年11月24日付)
 
   

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