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  トップページ > 経営のページ > 異業種交流 > 全国商工新聞 第3185号9月28日付
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異業種交流
 

中小業者が輝く社会へ=第19回全商工交流会

実践交流し展望切り開く

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オンリーワンの経営で必要とされる商売について討議したパネルディスカッションC「いま、輝く地域密着の小企業・家族経営」

 第19回中小商工業全国交流・研究集会の1日目は全体会に続いて三つのパネルディスカッションと憲法講座が開かれました。2日目は15の分科会が開かれ、ものづくりや仕事おこし、産学連携、地域再生、事業継承などのテーマで活発に討論。民主商工会(民商)や県商工団体連合会(県連)からの参加者も積極的に発言し、中小業者が輝く社会を展望するさまざまな活動を交流しました。

【パネルA】住民中心の復興を 阪神・淡路20年 東日本5年目
 コーディネーターの吉田敬一・駒沢大学教授が「大企業中心の経済システムか、持続可能な地域づくりか―。大震災からの再生のあり方にこそ、21世紀の日本の社会・経済の針路をめぐる二つの道筋の論点が示されている」と問題提起をしました。
 兵庫県連の磯谷吉夫会長は「公的支援実現・拡充を求める運動を通じて被災者生活再建支援法を実現させたものの1995年の阪神・淡路大震災には適用されず、被災者はいまだに借金返済に苦しんでいるばかりか、復興公営住宅からの追い出しが大問題になっている」と現状と課題を報告。
 大正筋商店街振興組合の伊東和正前理事長は、再開発事業の問題とにぎわいを取り戻そうとする商店街の取り組みを報告。岩手県宮古市の佐藤日出海産業振興部長は「仕事がなければ暮らしは成りたたない」として同市が進めてきた被災事業者復興支援策と今後の課題を報告しました。
 塩崎賢明・立命館大学教授は「阪神・淡路大震災では被害額10兆円に対し16兆3300億円の資金が投じられたが、10兆円がハード事業に充てられ、被災者の生活再建が置きざりにされた『復興災害』が起こり、東日本大震災でも繰り返されている。来たるべき巨大災害に備え、復興基本法の整備が必要」と指摘。同時に「地震多発国日本では原発の再稼働などありえない。安倍首相は国民の生命と財産を守らなければいけないと言うのなら、戦争法案の成立ではなく原発の廃炉こそ急ぐべき」と強調しました。

【パネルB】小さくても輝ける 地方再生の課題探る
 小さくても輝く自治体や小企業の実践を学び、地方再生の道を展望しました。
 問題提起をした保母武彦・島根大学名誉教授は安倍政権の「地方創生」が戦争法案とも深く関わっていることを指摘。「政府が人口問題を政策課題にするのは政治史上二度目で、一度は『産めよ増やせよ』をスローガンにした1941年の閣議決定。日本はその年の12月に真珠湾攻撃に突入した。『地方創生』は戦争法案に動員するための人口を確保し戦争する体制づくりにつながる」と強調しました。
 3人のパネリストが報告。滋賀県日野町企画振興課の安田尚司課長は「住民たちは合併しない道を選択し『自律のまちづくり計画』を策定してすでに人口減少を前提として施策を打ち出している。国の『地方創生』に躍らされることなく自分たちの町づくりを進めつつ、交付金などは最大限活用する」と話しました。
 高知県馬路村の上治堂司村長は「ユズの加工品は村のイメージをセットにして村を丸ごと売り出している。雇用の場をつくれば定住人口は増える。年間約5万5000人の観光客や商品を買ってくれる6万人を超える全国の応援者なども村づくりを担ってくれている。小さな村でも輝ける」と自信を持って話しました。
 大阪府東大阪市の産業政策会議のメンバーで、東大阪金属加工グループ「ヒット」の高田克己さんは、ものづくりの再生に向けた取り組みを紹介。「中小企業振興条例が制定され、小規模事業者が地域経済を支える重要な存在であることを明らかにし、市長の責務を明記した。条例制定後の実態調査では1〜4人の事業者ほど厳しい実態が浮き彫りに。廃業を考えている人も多いが、8割の事業者が後継者や仕事が確保できれば仕事を続けたいと考えている」と報告しました。
 保母名誉教授は「地域にネットワークをつくり、どんな地域をつくるのかという将来像と併せて市町村レベルでどんな条例ができるのかを検討し、行政を動かすことが大事。新しい発想や若者の目線を大切にしながら楽しい仲間をつくって地域づくりに挑戦してほしい」と呼び掛けました。

【パネルC】いま、輝く小企業 地域に必要とされる経営
 兵庫県中小商工業研究所の近藤義晴所長が司会、佐竹隆幸・兵庫県立大学教授がコーディネーターを務め、4人のパネリストがオンリーワンの経営で顧客や地域にとってかけがえのない存在になるヒントを探りました。
 神戸市須磨区で自転車店とカフェが一体となった店舗「RE:PRODUCTS PROJECT」を経営している末瀬嘉廣さんは「顧客の体に合ったオーダーメードの自転車づくりを提案し、職人とお客さんをつなげる店にしたい」と語りました。
 神戸市兵庫区でお弁当店「ばるーん」を営む小西ミユキさんは「手作りでご飯はあたたかいうちに届けること、顧客ごとに出したメニューをファイルにまとめ、同じものを出さない」とこだわりを紹介。「今年2月から障害者の作業所を作り、一緒に働いている。彼らが地域で暮らしていけるようにするのが私の使命」と語りました。
 大阪市中央区谷町で父親から継いだ「隆祥館書店」を営む二村知子さんは、お客さんの要望から作家と読者が会って話せるイベントを毎月開催。「消費者にとって本当にいいと思えるものを追求し紹介したい。商業主義ではなく人生を支える文化としての本の素晴らしさを広めたい」と話しました。
 「リフォーム工事に特化し、人脈が残る元請けしかしない」と言うのは奈良県北葛城郡で「たま家」を経営する玉井将斗さん。「お客さんの生活に入り込んで家族の視点でのリフォームをしているので、次の仕事につながる」と話し、共感を得ました。
 佐竹教授は「小規模事業者は商売を維持していくことが地域貢献。画期的であったり新しい市場でなくても、お客さんにスピーディーに対応でき、適正価格で提供し、技術や品質、従業員の態度などが他より少し良い『早い安いうまい』の商売をして、必要とされる経営を」と強調しました。

憲法力に新しい政治を

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定員を上回る150人が参加した憲法講座

戦争法阻止しよう
 国会情勢が緊迫する中、「憲法講座」には補助いすも使うほどの150人が参加。
 講師の醍醐聰・東京大学名誉教授は、立憲主義の核心が“権力への懐疑”にあり、戦争法案という法律で、72年政府見解の曲芸的解釈をし、一人の首相の独断で押し通そうとするのは「立憲主義に対する三重のクーデター」と批判。「自民党憲法改正草案にある『緊急事態条項』が適用されれば、国民は無権利状態に陥る」と警告しました。
 石川康宏・神戸女学院大学教授は自身が関わった「100大学共同行動」(8月26日)を紹介。創価大学の4人など80大学・253人の「わがままな学者たち」(上野千鶴子・東京大学名誉教授)が記者会見し、50班に分かれて国会議員に要請したことなどを紹介。「『立憲主義』は9条にとどまらず、生存権(25条)や教育権(26条)、労働権(27・28条)を保障する新しい政治を求める動きに発展しつつある」と指摘しました。
 「戦車も動かせる大型特殊免許を持つ民商会員もいるが、徴用の危険もあるのでは」「反対運動をもうひと回り広げるには何が必要か」など活発に質疑応答を行いました。

各地の活動豊かに 分科会で討議

商業の課題見えた まちづくり=第3分科会
 助言者の番場博之・駒沢大教授は最近の流通はネットショッピングや生協・スーパーの個別宅配の広がりなどが同時進行していることが特徴だとして、「政策も多様で、重層的なものが求められている」と問題提起。足立基浩・和歌山大教授は「食と農をつなぐレストラン」や朝市、カフェなどの実践例をあげて、商業・商店街の活性化のために逆転の発想、話題づくり、若者との連携などが必要と強調しました。
 参加者からは「阪神・淡路大震災後、『まちを良くしたい』の一点で1万人規模の東灘GENKI祭りを開き、今年10回目となる」「香川県の多額の税金が投入された商店街の大規模開発では、地元資本の店が少ないなど問題。自分たちの力で歩行者天国やイベントを工夫することが大事ではないか」「京都市屋外広告条例は零細業者を廃業に追い込む事例が続出。一律規制でなく市民合意を形成する姿勢を要求している」「富山市のコンパクトシティーは病院の移転、小学校統廃合もあり利便性が感じられない」など、地域の取り組みと直面している課題が報告されました。
 助言者は「コンパクトなまちづくりは必要だが、補助金のために『コンパクト』と名付けただけの再開発は問題」「まちづくりのための人づくり、組織づくりには、シンポジウムを開き多様な人を参加させる、マップをつくる、地元メディアに発信するなどが有効」とアドバイスしました。

補助金申請も援助 産学連携=第7分科会
 小水力や小風力を利用した発電装置、マイクロバブル(微細の泡)発生ノズル、シャーベット製造技術など、新たな製品開発の実践とともに大学や高等専門学校(高専)、専門家との連携の大切さを多彩に交流しました。
 共通して出されたのが補助金活用に関わる課題。「申請書の作成が難しい」「補助の対象になっても補助金が支給されるまでは、自分で資金調達しなければならない」といった問題が浮き彫りになりました。
 東京・蒲田民商の佐々木忠義さん=精密加工=は、製品開発をグループで行う場合の補助金活用の難しさに触れながら、申請書作成を支援する企業診断士を紹介するなど中小企業の経営を応援する大田区のビジネスサポート制度を紹介。
 助言者の中辻武・神戸市立工業高専特任教授は「高専は製品開発だけでなく、補助金申請に必要な文書も一緒に作成している。開発した技術や製品を学会で発表し、本を出すなど宣伝に徹し、販路開拓にも力を入れている。アメリカの大企業から問い合わせもあった」と報告。事業計画づくりも含めた高専との連携強化を呼び掛けました。
 吉田喜一・東京都立産業技術高専名誉教授は「いま、産学官連携から産学官『金』連携といわれる時代。地域の金融機関は町工場にも足を運んでいる。補助金活用に金融機関の力を引き出すことが大切」と助言しました。

商売も「志」も継ぎ 事業承継=第11分科会
 事業を継ぐ側と継がせる側の双方から豊かな実践が報告され、討議を深めました。
 助言者のメッキ設備製造業を営む全商連の橋沢政實常任理事が数々の危機を乗り越え、息子に会社代表を引き継いだ経験を報告。「仕事は楽しいものだということを息子は見てきて、後継者として家業への意識を高めた」と語りました。
 昨年3月に父から代替わりした静岡・藤枝民商の西野匡彦さん=木工=は「親の働く姿が見られる家族経営は素晴らしい。経理関係の仕事をなるべく早く引き継ぐことが大切」と強調。娘2人に事業承継した兵庫・長田民商の上園千夏さん=総菜・弁当販売=は「大手スーパーの参入や阪神・淡路大震災などで廃業を考えたけど『弁当だけは残して。私がやりたい』という娘の意見を取り入れてバトンタッチした。インターネットなどを活用して販路を拡大している」と話しました。
 両親と一緒に働いている東京・練馬民商青年部の井賀奈保子さん=教材販売=は消費税増税への不安や今後の人生設計についての悩みにも触れ、「父の思い、ものづくりの大切さをつなぎ、新しいことにも挑戦したい」と決意を語りました。
 京都・下京民商の伊藤泰浩会長=家紋加工=は「承継の真の瞬間は、経営の意思決定が引き継がれた時。後継者には経営者としての覚悟、理念の承継が必要」と強調しました。
 会場からは「承継を意識するタイミングとは」「後継者ならではの気付きもある」など活発な議論が交わされました。
 助言者の三井逸友・嘉悦大学教授は「引き継ぐべきは『志』、経営者のマインド。商売について語り合い、実践する中でこそ『志』の承継は図られる」と指摘し、「国政上で事業承継の問題が語られること自体が画期的。積極的な政策提案をしてほしい」と訴えました。

施策の拡充へ活用 振興条例=第9分科会
 各地で広がる中小企業振興条例定や施策の充実を求める実践的な取り組みを交流しました。
 北海道連の石塚隆幸会長は北海道の小規模企業振興条例素案について意見書を提出したことなどを報告。「本人や家族だけの『生業』層に目を向け、共同の力で地域経済を振興させることと併せて、税と社会保障の負担軽減などの支援策が必要。小規模事業者がやりがいや働きがいが持てる施策を求めている」ことを紹介しました。他の参加者からは、室蘭市や帯広市などの振興条例を具体化させるための活動も報告されました。
 神奈川県異業種連携協議会の芝忠専務理事は「川崎市中小企業を守り発展させる(成長させる)基本条例案」を作成し、市や商工会議所、関係団体に提案していることを紹介。「社会保険料や消費税の負担問題を基本政策に取り上げ、条例の運用については地域の声が反映されるように行政区に委員会を設置することを提案した。若者に魅力ある中小企業づくりが大切」と強調しました。
 新潟県連の青木敦志事務局長は4年前から30全自治体との懇談を始め、自治体に前向きな変化が起きていることを報告しました。「新潟県や2市1町で振興条例制定の動きが広がっている。特徴は小規模企業に光を当てていること。しかし、一方で新潟市は国保料の強権的な取り立てを続けている。小規模事業者が頑張れる具体的な施策が必要」と話しました。

全国商工新聞(2015年9月28日付)
 

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