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平和・憲法
「憲法9条守る」は世界史的な変革の仕事
消費税増税は反対
経済同友会終身幹事 (財)国際開発センター会長 品川正治さん
 経済同友会の終身幹事を務め、財団法人国際開発センター会長である品川正治さんは、自らの戦争体験と経済人の立場から憲法9条の改正に反対の立場を表明しています。憲法をめぐる問題を中心に、政・財界がすすめる消費税増税の動きなどについても縦横に語っていただきました。品川さんは「戦争というのは人間が起こすもの。しかしそれを防ぐのも人間。その前提として国民主権がうたわれている。有権者が『ノー』と言ったら戦争はできない。『仕方がない』『勢いに飲まれて』とか言うのは逃げ口上としても許されない。それが私の一番基本的な座標軸」と語ります。

国民が握る旗棹
 日本国憲法の9条、とくに2項の場合、国民がもう二度と戦争はすまいという決意があってああいう憲法ができたんです。日本人300万人を殺し、アジア、中国を中心に2000万人とも言われる国民を殺し、あげくの果ては、広島・長崎の原爆で20万人を失った。「もう戦争というのは御免だ」という感じだった。私は捕虜になり、日本に帰ってきたら、ああいう憲法草案が発表され、間違いなしに国民はあの憲法を支える決意をしたわけです。
 日本の最大のよじれというのは、支配政党というのは一度もそういう決意をしたことがない、これが60年間の最大のよじれです。政権党は立党の時から、戦争できる普通の国にすることを党是にしてきたけれど、解釈改憲しかできなかった。憲法を変えるということは中曽根さんでさえ、改憲はしないという格好で、言わざるを得なかった。
 現実の問題として自衛隊ができ、有事立法ができ、特別措置法ができ、海外派遣までやれるようになった。旗はボロボロになってしまっていますが、旗ざおはまだ国民が握って放さないというのが、今の9条2項です。

9条2項の解釈
 私のことを理想主義者だという人もいますが、私がはっきり言っているのは、民族や部族の違い、宗教の違い、争いがなくなるなんてことはない。領土問題、領海問題を抱えてない国というのは一つもない。そのために国際連合があり、国際司法裁判所がある。私の9条2項の解釈というのは、紛争はある、しかし、紛争を解決する手段として戦争にしないのが9条2項だということです。
 じゃあ9条2項というのは、突拍子もない一つの考え方かというと、そうではありません。日本は原爆を経験しました。だから日本の憲法というのは原爆を経験した国の憲法なんです。
 国連の安全保障常任理事国は全部核を持っている。
 広島・長崎のような経験を、どっかの先進国の人たちがすれば、いっぺんに「戦争なんかできっこないじゃないか」というような世論に変わってくることが目に見えている。

戦争の怖さを
 とくに経済界が、先導を担って憲法改定とか、9条2項の廃止だとか言っているのは、これは、アメリカが戦争をしているということを甘く見ていると思う。
 アメリカの国力の大きさから言って、勝つことに決まっているという感覚が日本には非常に強い。しかし、ベトナムでは負けているんです。アメリカは今は必死です。イラク戦争でも決して余裕を持ってやっているなんてことはありえない。
 戦争というのを一般的に定義するなら、価値観というのは「勝つため」というのが一番上にくる。戦争状態に入った以上は、人の命という価値でさえ、勝つためには敵を殺してもいい、味方の命を捨てても勝つということが最高の価値になる。これが戦争の怖さです。
 戦争というのはすべての権限を戦争指導部に任す形になり、その指導部はすべてを動員する。軍事力だけじゃなくて、中小企業は全部勤労動員とか、経済すべてが動員されました。
 憲法を変えるというのは、事態をよっぽど甘く見ているのか、それを承知で憲法を変えようとしているのか。もしそうならこれは国を売るのと一緒です。

世界史の大事件
 最後に、もう一つどうしても言いたいことは、国民投票法案ができ、実際に国民投票ということが起こってきたときに、国民がどんな形であれ、「9条2項は絶対に離さない」「9条2項の改定はノー」と言った場合、支配政党の政治プロセスは全部否定される格好になるんです。中国の日本に対する見方というのは全然変わる。ということはアジアの情勢も変わります。これに韓国も仲間に入るでしょう。そうなると日米関係が変わらざるを得ないはず。
 だから9条2項を国民があくまで守るという意思表示を国際的に明確にした場合には、世界史の大事件なんです。ベルリンの壁が壊れたどころではないんです。9条を守るというということは現状維持ではなく、変革を主張することです。まったく世界史的に大きな変革を生む仕事だという自信を持った上で、とりくんでほしい。

大企業の資格なし
 税に関して、経済団体が提言するときに、いつも大企業の法人税、所得税の引き下げを言いますね。そんな姿勢では大企業が経済提言を出す資格はないじゃないかというのが、私の本当の気持ちです。
 それともっと基本的には、いったい経済というのはだれのためにあるのかを考えなくてはいけない。企業のための、勝ち組のための経済なんていう形で、改革とか税の問題を論議するというのは、これはもう基本的に間違いです。
 中小企業を泣かせて、社員をリストラしている、その改革ばっかりじゃないか。そういう意味では消費税というのは財政ばかりに問題を向けて、ソロバンはじいたらどれが一番とりやすいかという発想です。消費税の増税というのは、今のところまったくノーですね。法人税を下げたままにしているし、所得税は最高税率を50%から37%に落として、それで、財政赤字だっていう。その赤字の原因はGNPを0・数パーセント上げるために「不況対策」として100兆円使ったという。そのことを考えただけでも反対です。

国民経済が主役
 国民経済である以上は、これは国民のためだということを常に明確に示さないといけない。特別のグローバル企業のためということを伏せてやろうとしています。それを私は全然認められない。だから私は消費税の引き上げにも反対です。

品川 正治さん
 1924年生まれ。東京大学法学部卒、日本興亜損保(旧日本火災海上保険)の社長、会長を経て、相談役。経済同友会副代表幹事、専務理事を経て、終身幹事。双日株式会社監査役。国際開発センター会長。
 
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