全商連トップページ
中小施策 税金 国保・年金 金融 経営 業種 地域 平和・民主 教育・文化 県連・民商 検索
 全商連とは活動方針・決議署名宣伝資料調査婦人部青年部共済会商工研究所発行案内入会申込リンク
  トップページ > 業種のページ > 製造・小売 > 全国商工新聞 第3310号5月7日付
相談は民商へ
 
 
業種 製造・小売
 

卸売市場法「改正」案を考える 公的役割崩壊の危機

 今通常国会に「卸売市場法及び食品流通構造改革促進法の一部を改正する法律案」(以下、「卸売市場法改正案」)が提出されています。これは政府・財界が推し進める「農政改革」の一環で、これまで卸売市場が果たしてきた公共的役割の根幹を崩し、市場の「物流センター」化を狙うものです。食品流通全体に混乱をもたらすばかりか地域経済にも大きな影響を及ぼすことが懸念されます。法案の問題点と関係業者へどのような影響をもたらすのか考えます。

規制が取引を守ってきた

Photo
全国から水産物が集荷される東京・築地市場

 卸売市場の主な機能は「集荷機能、評価、価格形成、代金決済、情報発信」の五つです。そのため「卸売市場法」の下で、農水省により、公正公平な取引のためのさまざまな規制が行われてきています。
 卸売業者は、出荷者から送られてきた荷を集荷し、「せり」や入札、相対取引を通じ、仲卸業者に販売します(図参照)。
 せり取引は、最も高額な金額を提示した者が買い受け人になる。買い手が品物の価値を評価するシステムです。仲卸業者は、常に変化する生産と消費の動向をあらかじめ把握した上で、専門的な立場から消費者に代わって品物の質、鮮度を総合的に判断し、評価(入札)を行います。せりは市場における適正な価格形成に重要な役割を果たしています。また、大量取引に対応するために広がった相対取引でも、仲卸業者の評価機能が発揮され、相場が形成されます。

Image

市場経由しない取引が拡大
 取引に参加する卸売業者と仲卸業者は、国や自治体の免許が必要で、中央卸売市場では、卸売、仲卸、および売買参加者以外の卸売り(第三者販売)は原則禁止、仲卸業者も卸売業者以外からの集荷(直荷引き)も原則禁止されるなど、卸売市場の取引が守られてきました。
 ところが、スーパー量販店や加工業者のニーズなどにより、農水省は1999年に「せり入札原則」を廃止。2004年には「委託集荷原則」廃止など二度にわたる卸売市場法の「改正」で大胆な規制緩和を行ってきました。
 これにより卸売市場を経由しない市場外取引が広がっています。安倍内閣の構造改革徹底推進会議(2016年)では、国際競争力の強化を名目に、「卸売市場法という特別の法制度に基づく時代遅れの規制は廃止する」と宣言。昨年11月24日の規制改革推進会議農林WGでは、「第三者販売原則禁止、商物一致・直荷引き原則禁止は、冷蔵・冷凍技術が未発達時代の規制」だとし、卸売市場を、「基幹的インフラ」から「選択肢の一つ」に格下げすることを打ち出しました。
 国会に提出された卸売市場法「改正案」では、83条あった条文が19条になるなど規制緩和の「総仕上げ」ともいえるものになっています。

大企業の価格支配強化も
 同法に詳しい広島大学名誉教授の三国英実さん=写真=は、「改正」の問題点として3点を指摘します。第一に、卸売市場を「許可」制から「認定」制に変え、民間参入も解禁したこと。第二に、第三者販売原則禁止、商物一致・直荷引き原則禁止などを削除し、これまで例外としてきたことを公然化していること。第三は、卸売市場を含めた食品流通の合理化の方向が示され、国は中央卸売市場整備計画を持つ必要をなくす一方で、民間の物流センターなどの施設整備に国の助成を行えるようにしていること-を挙げます。この「改正」が強行されれば、市場外の流通が一層拡大し、卸売市場が卸売市場でなくなり、公共的機能が損なわれると、その危険性を指摘しています。
 「市場経由率は減っているとはいえ、鮮魚で52%、青果で6割(野菜は69・5%)など、生鮮食品のほとんどは市場を通り、そこで形成された市場価格が相場として情報発信され、すべての取引の基準になっている」と三国さん。
 政府・財界は、流通コストが削減できるといいますが、市場流通がなくなれば、価格決定権の重要部分を巨大企業が支配するようになります。「結果として、経済民主主義が壊され、生産者の利益も消費者の利益も損なわれる」と警鐘を鳴らします。

徹底審議・廃案へ運動を
 卸売市場において、重要な役割を担うのが仲卸業者です。市場外取引を公然化すれば「仲卸は壊滅的影響」を受けます。仲卸業者の目利き力、品ぞろえに依拠してきた専門業者は存続の危機に直面します。
 また、全国で1000を超す地方卸売市場は地域経済循環を担う公共のインフラ機能を果たしています。地方市場は法規制に守られ、営業が存続しています。「改正」案によれば、これまで条例に基づく許可であった地方卸売市場の開設が、農水省令の定めによる「認定」制となり開設基準が厳しくなる一方、一層の規制緩和で市場経由が減り経営悪化が進めば、再編・減少することが懸念されます。
 地方卸売市場が維持できなくなれば、生鮮品を出荷してきた中小業者ばかりでなく、地方市場によって支えられていた小売や飲食店なども苦境に立たされることになり、地域経済に計り知れない深刻な影響を及ぼすことが危惧されます。
 卸売市場改正問題は、食品流通だけではなく地域経済のあり方全体に大きな影響をもたらします。同法案の問題と危険性を急ぎ知らせ、法案の徹底審議と、廃案にさせる働きかけが求められます。

全国商工新聞(2018年5月7日付)
 
   

相談は民商へ
ページの先頭