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  トップページ > 業種のページ > 製造・小売 > 全国商工新聞 第2917号 3月 8日付
 
業種 製造・小売
 

スクール・ニューディール構想、ヤマダ電機の“独占”に待った


 「スクールニューディール構想」()に基づく学校への地デジテレビ導入で、家電量販店大手による独占的落札が問題になっています。京都市ではヤマダ電機(本社・群馬県高崎市)が独占的落札を続けていたものの、京都府商工団体連合会(京商連、伊藤邦雄会長)の申し入れをきっかけに地元中小企業も落札するなど大きな変化をつくりだしています。

 「ホンマ民商さんはすごいわ。警察より動きが早いんとちゃいますか」。京都電工(株)(本社・京都市中京区)の河村泰三社長は笑顔で語りました。京都市内で親の代から50年以上にわたり、電球1個から納品してきた街の電器屋さん。地元商店街・二条繁栄会の代表も務めています。
 その河村社長が「怒りを爆発」させたのが、京都市教育委員会が発注した「スクールニューディール構想」に基づく学校への地デジテレビなどの入札でした。
 市教委が実施した地デジ導入の入札は4回(別表)。河村社長は入札情報を探し出し、1回目は間に合わなかったものの、その後の3回分について入札申請をしました。

表


 2回目となった2月1日の入札は10カ所。「仕入れ値にちょっと上乗せした価格にしたので、一つぐらいは当たる(落札できる)と思っていたんですよ」。結果は全滅。ヤマダ電機の独占落札でした。
 独占を許した背景にあるのはWTO(世界貿易機構)政府調達協定。政令市や都道府県がテレビなど3500万円以上の物品を購入する場合、原則として誰でも参加できる一般競争入札方式を採用しなければならない、とされているからです。
 
 事業の主旨に反する結果だ
 「政府調達協定の適用は知っていますよ。でも今回の事業で政府は中小企業の受注機会を増やすといっている。それなのにこの結果。おかしいですよ」
 もともと、スクールニューディールは経済危機対策の一環として行われたもの。担当する文部科学省も推進にあたり「中小企業の受注機会の増大に努め、地域の活性化に資するよう」特別の要請を自治体に行っています。
 そうした実状を京商連がつかんだのは一本の電話でした。
 京商連が進めていた「仕事おこし・あんしん医療署名」に賛同を寄せた二条繁栄会にお礼の電話を入れたとき、河村社長から実態を訴えられたのです。
 その後の京商連の動きは機敏でした。3回目の入札は、9日後の2月10日。京商連はスクール・ニューディールの各地の入札状況を調査し、府の電機商組合関係者などにも問い合わせ。入札2日前の8日には、スクール・ニューディールの入札基準見直しを求め京都市に申し入れました。
 
 マスコミが報道複数業者が落札
 京都市はWTO協定をたてに基準の見直しには踏み込まなかったものの、マスコミが注目し報道。発注者である市教委の関係者からも「部内はピリピリしている」との情報も流れてきました。
 3回目の入札では、河村社長の京都電工は10カ所中2カ所を落札。独占してきたヤマダ電機は1カ所を落札したものの、8カ所を辞退。12日に行われた入札(8カ所)でも京都電工は2カ所を落札し、ヤマダ電機は2カ所の落札でした。
 河村社長はいいます。
 「地元の業者に仕事が回ってこそ地域経済も活性化する。落札した仕事も同じ電機商の仲間の力を借りてやっていきたい。それにしても民商の動きは素早い。組合でもなかなか動かないのに筋道を立てておかしいことはおかしいとはっきり言う。私の中での評価はすごく高いですよ」
 
 中小企業応援の府政を
  京商連 府に“抗議”文提出

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スクール・ニューディール入札の基準見直しを求め、京都府に申し入れる京商連(左から3人目が伊藤会長)

 スクール・ニューディール構想に基づく地デジテレビの入札で、京都府が「分離・分割発注」を拒否し、大手の独占落札に手を貸したとして京商連は2月23日、「名ばかりの『中小企業応援』府政は退場すべき」とする“抗議文”を提出しました。
 京都府は2月22日、地元企業への受注機会の増大を求めた京商連の申し入れを無視し、府立学校(69校)に191台のデジタルテレビを納入する一括発注を強行。その結果、東京に本社がある大塚商会が独占落札しました。
 “抗議文”は、府の対応が、「中小企業の受注機会の増大に努め、地域の活性化に資する」とした文部科学省の方針に反していると指摘。一括発注では他府県に本社を有する大企業・大手量販店の参入の恐れがあると警告した京商連の事前の申し入れも無視したものと訴え。
 また、府側が「WTOの特定調達で分割発注は原則禁止されている」ことを理由に「分割・小口発注化」を拒絶したことを批判。福岡県では「県内中小企業の受注機会を確保するため…県内中小企業を入札参加の条件」としている具体的な事実を列挙し、「WTOを口実に東京の企業の参入を広げるもの」と京都府の姿勢を厳しくただしています。
 その上で、「名ばかりの『中小企業応援』府政」の退場を求めるとともに、「中小企業主役の地域循環型経済システムを確立し、中小企業の仕事、雇用の確保を最優先する府政への転換を目指す」と結んでいます。  


(注)スクール・ニューディール構想とは
 政府が09年4月にまとめた「経済危機対策」に盛り込まれた政策。学校施設における(1)耐震化(2)エコ化(3)ICT(情報通信技術)化を推進するもの。ICT化の事業費総額は4000億円で、(1)すべてのテレビのデジタル化(2)校務用コンピューターは教員1人1台の設置(3)教育用コンピューターは児童生徒3・6人に1台の設置(4)すべての普通教室に校内LANを設置‐が主な内容。10年3月末までの執行予定。

   
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