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  トップページ > 住宅リフォーム助成制度のページ > 全国商工新聞 第3136号9月22日付
 
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業種 建設土木
 

住宅リフォーム事業者団体登録制度施行に波紋広がる=中小建設業者の排除に懸念

 国土交通省は1日、住宅リフォーム事業者団体登録制度を施行し、申請受け付けを始めました。この制度は、国が定める要件を満たした一定の規模と資力を持つリフォーム事業者団体を国が「優良」と認定し、インターネット上で公開するというもの。「登録できない小規模事業者は市場から排除されるのではないか」との懸念が広がっています。

9月から規模と資力で「優良」認定=国交省

 「登録業者は“優良”で安心だが、未登録業者は問題があるかのように消費者から見られかねない。登録できない町場の工務店はこれからどうなるのか」。東京都渋谷区で株式会社クローバサービスを経営する代表取締役の田中正敏さんは同制度への懸念を抱いています。渋谷民主商工会(民商)会長の田中さんは、年間100件ほどの住宅リフォームを受注しています。
 住宅リフォーム事業を始めてから40年近くになる田中さんは、業界内の変化を感じています。「昨年あたりから大手ハウスメーカーがリフォーム市場に参入し、流し台などの価格を下げてリフォーム工事を受注している。登録制度によって大手企業が本格的に参入してくると、価格競争が激しくなり、中小企業は太刀打ちできない」と不安を口にします。

 「100者以上」など厳しい団体要件
 登録制度の枠組みと、国が定めた登録団体の要件は図1のとおりです。要件を満たした事業者を国が公表することによって、消費者が安心してリフォームを行えるよう環境整備をすることが目的だとしています。

図1=住宅リフォーム事業者団体登録制度の枠組みと登録団体の要件

 問題は、登録できる団体を、構成員(会員、組合員)名簿の整備や設立・組織・運営・管理などを法令で定めている一般社団法人や事業協同組合とし、かつ構成員を100者以上組織しなければならないとしていることです。団体を構成する業者は、リフォーム工事や内装・設備工事を行う技術と併せて建設業許可を取得し、常勤の建築士、建築施工管理技士などの在籍が要件になっています。
 国土交通省は「あくまで任意の制度。登録を受けていない団体やその会員、特定の事業者団体に属していないリフォーム業者は資質や能力が不足しているとするものではない」といいます。しかし、国の認定を受けているかどうかは、消費者がリフォーム業者を選ぶ基準の一つになるのは明らか。登録団体に所属していない個人事業主が大手企業に仕事を奪われることが懸念されます。

 地域の建築業者追い詰める恐れ
 現在、住宅リフォーム市場は6・7兆円と推計。さまざまな事業者が参入する中で苦情やトラブルが増え、そのことが登録制度創設のきっかけにもなっています。公益財団法人「住宅リフォーム・紛争処理支援センター」の電話相談によると、リフォーム相談件数は2010年度以降、増加傾向にあり、2012年度は7318件(前年比8%増)になっています(図2)。

図2=相談件数の推移

 「悪質業者をなくすことは必要。しかし、登録制度によって地域の建築業者が市場から追い出されるのは本末転倒」と話すのは主婦連合会(主婦連)の奥利江・住宅部長。国土交通省の住宅リフォーム事業の推進に関する検討会の委員の一人として消費者の立場で意見を述べてきました。主婦連が取り組んだ住宅リフォームに関するアンケートでは、消費者が業者選びに苦労している実態が明らかに。「身近に大工さんなど、腕のいい職人がいなくなり、消費者はどこにリフォームを頼んでいいのか分からなくなっている。技術者の育成が必要」と奥・住宅部長は強調します。

 循環型の経済を阻害する原因に
 登録制度創設の背景について、全国建設労働組合総連合(全建総連)の清水謙一・書記次長は「中古住宅・リフォーム市場を20兆円(20年)に拡大しようとする国の産業政策がある」と指摘します。現在、リフォーム工事を担っているのは半数近くが地場の工務店です(表1)。「新築住宅の建設が頭打ちになっている下(図3)、登録制度で大手住宅企業などが市場に参入できるよう国が全面的に支援する仕組みをつくり、小規模事業者をその支配下に組み込もうとしている」と清水さんは警鐘を鳴らします。

表1=リフォームの担い手(2010年売り上げ)

図3=新設住宅着工戸数の推移と予測

 さらに懸念されるのは、各地の民商が自治体に働きかけて全国に広がった住宅リフォーム助成制度への影響です。東京都内の自治体では「今後は、リフォーム事業者団体登録制度の登録を受けていない団体に住宅相談の協力はお願いできない」との動きがすでに出ています。
 住宅リフォーム助成制度についても「登録した団体や企業しかリフォームができない」という要件を設ける自治体が出てくることが危惧されます。東北地方の自治体職員は「住宅リフォーム助成制度は地元の業者に仕事を回し、そのことで地域経済の循環を図り、活性化させることが目的。構成員100社以上の要件は地方都市では当てはまらない。結局、地元業者は大手企業の傘下に組み込まれ、地域経済循環を阻害する」と批判します。
 全国商工団体連合会(全商連)は今後、(1)登録していない町場の工務店が排除されないようにすること(2)登録要件は簡易なものとし、過大な負担を課さないようにすること(3)団体の運営についても、事業者団体の自主性や独自性を尊重するよう十分に意見を聞いて進めること―を国土交通省に要望することにしています。

全国商工新聞(2014年9月22日付)
 
   

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