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大型店
各地で大型店出店規制の動き
 「まちづくり3法」の見直し案が国会で審議されているなかで、北海道や山形県、福岡県などで大型店の郊外出店を規制する動きが強まっています。この間、民商・全商連は、大型店出店に反対する運動を全国で展開してきました。地方自治体が出店規制に乗り出したのは、こうした運動が反映しています。

北海道
ガイドライン策定へ 空き店舗急増に対応

 北海道は4月4日、「大規模集客施設の立地に関するガイドライン」(素案)を道議会に提出し、その後、道内7地域で説明会を開き、6月の策定をめざしています。

北海道にも大型店が続々出店し、自治体に危機感が広がっています(写真は札幌市東区のアリオ札幌=イトーヨーカドー
全国で2番目
 北海道新聞(4月5日付)によると、「同様のガイドラインを策定するのは、熊本県に次いで2カ所目」。ガイドラインは、大型店舗の郊外拡散を防ぐ狙いで、事業者に事前に情報の提供を求め、地元関係者や知事が意見を表明できるようにするというものです。
 具体的には、(1)対象は延べ床面積1万平方メートル以上の商業施設(2)都市計画法や大店法に基づく手続きの3カ月前に道に出店計画の提出を求める(3)既存店舗も含め、「地域貢献計画書」を提出してもらう(4)道は、計画書の内容を公開し、市町村や住民から意見を募集、この意見と知事の意見を公開し、事業者側に伝える(5)事業者の意見も公開する‐というもの。
 すでに北海道では「店舗面積が1000平方メートルを超える大型店が03年〜05年度の3年間に112店開業し、一方で、道内の中心商店街の空き店舗率は、98年1・0%から04年には6・8%にも急増」(朝日新聞4月22日付)しており、もはや大型店対策は、一刻の猶予もならない事態になっています。
 ガイドラインはこうした状況を受けた対策ですが、この間の、道議会での論戦や各地の説明会で、実効性に大きな疑問が出ています。一番大きな問題点は、罰則のつく条例ではないため、「ガイドライン」では強制力がないことです。二つ目は対象が床面積1万平方メートル以上と大きすぎるだけでなく、1万平方メートル未満の複数店舗の場合は対象にできないこと、三つ目には、市町村及び住民の意見の内容に「大店立地法第13条により、地方公共団体による需給調整(近隣の中小小売商店の売上の影響など)は禁止されている」を「勘案すること」として、商店街や地域経済がもっとも大きな影響を受けている中心的な問題についての意見を禁じていることです。四つ目は、「地域貢献計画」の期間が3年間と短く、数値目標を求めない、実効性の弱いものになっていることです。
 道は、こうした疑問に「今後検討をする」としながらも、これまでの答弁では具体的なものを示していません。
 北海道商工団体連合会(道連)は昨年12月に、道と交渉し、「大型店の出店を規制し、地域経済を振興するまちづくり条例」の制定を求めてきました。また1月には、道内180の商店街に、北海道連のとりくみを知らせるダイレクトメールを送り、共に道への働きかけを訴えました。

さらに改善を
 北海道連は「ガイドライン」に先立って道が明らかにした「北海道小売商業振興方策」(素案)に対して積極的に意見を表明。各地でおこなわれた「ガイドライン」の説明会にも民商の役員らが積極的に参加し、地域の業者と一緒に意見を述べ、「ガイドラインではなく、条例を」「床面積をもっと下げてほしい」「地域貢献計画に数値目標を」などと改善を求めました。
 国の「まちづくり3法」の改正に対応した道のとりくみですが、その背景には道民と中小業者の衰退するまちに対する行政の対応への怒りと切実な要求があります。
 北海道連は、引き続きこれらの施策が実効性のあるものとなるよう、運動を強めています。

山形県
駆け込み申請抑制など 「広域調整要項」スタート

 山形県では「市町村土地利用計画の広域調整要綱」を今年4月1日からスタートさせました。これは現在国会で審議中の「まちづくり3法」の改正案に盛り込まれている広域調整の強化が実施される前に、大型店(床面積1万平方メートル超)などが駆け込み申請することの抑制と、行政圏を越えて市町村の考え方を反映させようとするためです。
 大型店や公共公益施設の郊外立地がすすんだ結果、中心市街地が空洞化し、まち全体の活力が低下していることや無秩序な出退店で遊休地の発生や都市経営コストの増大、地域コミュニティーの維持困難などの問題が大きくなっています。
 また、大型店などのように行政圏を越えて影響が及ぶ施設については、現在の個別の規制法では市町村単位の規制であり、市町村が意見を述べる機会が少なかったことから、「要綱」をつくったものです。
 要綱では(1)関係市町村等連絡調整会議を設置し、広域的集客施設の立地について意見をとりまとめ・調整する(2)県としてブロック別土地利用調整会議を開催し、市町村の土地利用に対し調整・確認する(3)市町村の土地利用マスタープランを策定・変更する場合に県が連絡調整会議を開き、調和の取れた土地利用を図る‐の制度になっています。

福岡県
「再生へ」知事に提言 県連の要望も一部反映

 「まちなか再生」のあり方について検討をすすめてきた「福岡県中心市街地再生検討委員会」は4月25日、麻生渡県知事に対して「提言」をまとめました。
 大型店などの立地は、原則としてまちなか以外での立地を抑制し、ゾーニングの強化で立地できない場所を定める。また広域的な影響を伴う場合は県が判断する制度を創設すること‐‐などを必要としています。ただ郊外立地の抑制は、まちなかに大規模集客施設を誘導するためであることも明確にしています。
 福岡県商工団体連合会(県連)は昨年7月、県に独自条例の制定など大型店の出店規制を要望。担当者は「現行の『まちづくり3法』は機能していない状態。要望は同感で、現状を危ぐしている。実効性のある措置を検討したい」と発言していました。
 今回の「提言」は初めて県として大型店規制を打ち出し、不十分ながら要望をある程度反映したものです。

規制の強化とさらに補強を
 「提言」は、まちなか再生の必要性について「『まちなか』は、自動車に依存した暮らしの普及、大型店の幹線道路沿線や郊外への進出、居住人口の減少、経営者の高齢化、空き店舗の増加などで衰退が深刻になっている。まちなかはまちの中心として各種機能を培ってきた『まちの顔』であり、県内各都市の発展に向けてまちなかの再生は緊急の課題」と強調し、そのために優先的にとりくむ施策の一つに、大型店などの大規模集客施設の適正立地を図ることをあげています。「提言」に基づいて県は07年3月までに大規模集客施設の立地可能な地域を示す立地ビジョンを策定する予定です。
 県連では5月10日に熊本市が都市計画法34条を用いてイオンの出店を不許可にしたように、現行法を活用した規制の強化と「提言」をさらに補強する施策を求めることにしています。

「大型店で活性化」は幻想
大分県・別府市
商工会議所など反対 市民集会に1500人

「考える会」が開いた市民集会。会場いっぱいの1500人が参加しました
誘致の是非を争点に市長選
 大分県別府市が打ち出した、楠港跡地(約2万平方メートル、市有地)にKKイズミ(本社、広島市)の大型商業施設「ゆめタウン別府」を誘致する問題は、誘致の是非を最大の争点とする出直し市長選に突入しました。(21日投開票)
 ことの発端は、04年8月24日、別府市楠港埋立地誘致企業選定委員会が、誘致企業にKKイズミを選定したことからです。別府市のアンケートでも「商店街への影響が心配」の意見が最も多く、別府商工会議所が反対を決議。浜田博前市長は05年1月28日、「当分の間、凍結する」と表明して、イズミ誘致関連議案の議会提案を先送りしていました。ところが06年1月4日、「凍結」を解除することを表明したのです。
 この動きを知った別府商工会議所や、まちづくりグループなどは「別府市民の財産・楠港跡地を考える会」を結成し、「楠港跡地を考える市民1000人集会」を1月15日に開催。約1500人が参加しました。集会で別府商工会議所の高松右門会頭は「大型商業施設を誘致することによって、まちが活性化するというのは幻想」と発言。集会に参加した別府民主商工会(民商)の渡邊冨造会長(65)=小売り=は「別府は観光都市。海あり山ありの別府の景観を守ることが大事。大型店は既存の商店・商店街をなくしてしまう」と話していました。また別府民商は別府商工会議所の齋藤哲専務理事と懇談。大型店問題を報じた商工新聞を広げて話し合い、「市長辞任・選挙再出馬は問題のすり替え、別府の自然を守り、商店を守ることが大事」と齋藤専務理事は語っていました。

反対署名数は市民の過半数

 「考える会」がとりくんだ反対署名は約1カ月間で別府市の人口の過半数、当初の目標の2倍の7万人を超えました。署名運動に参加した会員は「きれいな海岸線を壊し、商店街を壊す大型商業施設には反対」と民商事務所に署名用紙を取りにくるなど民商としても積極的にとりくみました。
 一方、別府市地域婦人団体連合会の役員有志は、住民投票条例の制定を請求するための署名活動をおこない、住民投票条例制定の直接請求をしました。これら一連の動きで、別府市議会観光経済委員会は、立地協定締結の議案を審査延期(審議未了)とし、本会議でも本会議採決の対象とせず、誘致議案は予想どおり廃案となりました。
 別府市はその後、住民投票条例制定にかかわる臨時市議会を4月4日開会しましたが、浜田前市長は初日の本会議終了後、住民投票を避けるため、辞職。出直し市長選となったものです。
 
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