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  トップページ > 震災情報のページ > 全国商工新聞 第2973号 5月 9日付
 
 

東日本大震災からの地域復興に向けた緊急提言
―大災害の教訓を次代に生かすために―

2011年4月20日
全国商工団体連合会

はじめに

 2011年3月11日に発生した東日本大震災は、地震・津波・原発事故が重なる未曾有の大災害となった。震災後1カ月という時点で死者・行方不明者は2万7000人を超えているが、全容はいまだつかめず、余震も続いている。
 この災害の特徴の一つは、マグニチュード9.0の大地震と大津波が広域かつ大規模な被害をもたらしたことである。町そのものが消失し、多くの住民や家屋とともに、工場や店舗、車両や船など多大な生産設備が押し流された。漁場や田畑も大打撃を受け、役所や公的機関の機能さえ奪われる事態となった。
 加えて、東京電力福島第1原発が冷却機器と電源を喪失し放射能物質の漏洩・拡散を引き起こし、被害をより深刻にしたことである。しかし、この事態は決して「想定外」ではなく、専門家の指摘や国会での追及にもかかわらず、東京電力がもうけ優先で安全対策を怠ったこと、さらには事故初動での対応に問題があったことによる二重の「人災」というべきである。
 また、重大な被害を受けた地域には、世界の3大漁場のひとつに数えられる三陸沿岸があり、高度な加工技術を持つ企業が立地するなど、日本経済に与える影響は非常に大きい。国内経済の自律的な回復をめざす上で、この地域の中小業者や農林水産業者を中心とした復旧・復興が欠かせない。
 こうした意味からも、多くの学ぶべき教訓を引き出し、今後に生かしていく必要がある。われわれ全国商工団体連合会も被災地の県連や全国の仲間とともに、被災者救援と被災地復旧の支援に奮闘してきた。また、今後の復興ビジョンづくりについて、特に地域産業との関わり、個人と地域の再生のあり方といった分野にも焦点を当てて論議を進めてきた。
 ここに、一定の成果を提言のかたちで発表するものである。
 短時日ということもあり、われわれの議論は決して十分とはいえない。原発事故への提言も補う必要がある。しかし、復興構想会議を中心とした政府の復興計画づくりが大きく動き出しており、地域での雇用と経済を担う中小業者の立場からの意見を国・自治体の政策に反映させることが早急に求められている。
 この提言が、国民的な論議を深めていく上での契機となり、具体的な被災者救済や復旧・復興、あるいは今後の防災行政や都市計画、さらにはエネルギー政策に生かされることを望む。

1、被災地の住民生活と中小業者の経営の再建に向けて

 このたびの大震災の被災地は岩手、宮城、福島を中心に北海道、青森、茨城、千葉をはじめ、関東圏を含む東日本各地に及んでいる。当然のことながら、被災地の復旧・復興は、それぞれの地域の成り立ちや特性をしっかり踏まえたものにしていかなければならない。
 そのなかでも、共通しているのは、地域に密着して仕事をしてきた中小業者や農林水産業者を被災地の復旧・復興の中心に位置づけることの重要性である。
 中小業者や農林水産業者は地元の資源やつながりを生かして物をつくり、加工し、流通させ、雇用を維持し、地域経済を支えてきた。地元の中小業者・農林水産業者が再建し元気に営業することが復興への確かな力となる。

提言1
生活再建、地域社会の再建こそ、復興の土台。個人の生活再建に最大の優先順位を置く。

(1)被災者生活再建支援金の増額と対象の拡大を
 被災地の復旧・復興のためには、被災者の生活、暮らしを元に戻すことが重要であり、その第一歩は居住の場を確保することである。
 そのためには、被災者生活再建支援法・生活再建支援制度を改正し、支援対象を全半壊に限定する規定を撤廃するとともに大幅に拡充する必要がある。生活再建支援金は、基礎支援金(現行100万円)を200万円以上に、住宅の再建方法に応じて支給する加算支援金(現行200万円)を300万円以上とし、合計500万円以上を住宅本体の再建や改修にも使えるよう、改善すべきである。
 また、生活再建を支援するということであれば、営業と生活が一体となっている中小業者の店舗や工場なども当然、対象にすべきである。
(2)コミュニティーや就業機会の保障を重視した住宅復興に
 被災地には住宅再建の資力のない高齢者も多いことから、災害公営住宅の建設による居住保障の確保も大切である。その場合、コミュニティーの保障とケア機能、漁業、水産加工業、農業などの就業機会の保障を組み合わせた高齢化対応の住宅復興とすることが大事である。兵庫では、復興公営住宅での孤独死も2000年以降の5年間で237人に上るといわれているが、その苦い経験も踏まえ、コミュニティーの欠落した住宅の復興としてはならない。
(3)あらゆるセーフティーネットを拡充し、生活再生を支援する
 被災者の生活再生に当たっては、当座の生活費や復旧・復興のための費用などを迅速に行き渡らせる必要がある。制度活用の要件とされるり災証明の発行は本人の申告を尊重し、迅速に発行されなければならない。生活福祉資金の要件緩和や審査の簡素化、貸付額の増額、受付場所の拡充などをはじめ、あらゆるセーフティーネットの拡充と状況に見合った柔軟な対応が求められる。
(4)災害関連法令・制度を非常時にこそ使いやすいものに
 災害関係の法律は、災害対策基本法、災害救助法、被災者生活再建支援法はじめ、関係法令も多く、支援内容、対象、要件等が複雑に入り組んでいる。これらの法律・制度を災害救助から生活再建、復興に至る各段階で被災者の実態と要求に即して運用できるよう改善・拡充し、非常時にこそ使いやすい制度にする必要がある。

提言2
復興の推進力、雇用創出の担い手である地域産業の再建を復興計画に位置づける

 住宅が再建できても働く場が再生できなければ地域は復興しない。人が元の場所に戻るには、働く場がなければならない。営業と生活が一体となっている自営業層への直接支援を行い、活力を引き出すことが地域の復興には欠かせない。中小商工業や農林水産業など、地域産業の再建へ向けた施策を復興計画のなかに位置づける。地域の中小業者支援に逆行し、復興の妨げとなる環太平洋連携協定(TPP)には参加すべきではない。
(1)中小業者の店舗、工場への直接支援を
 大震災によって家だけでなく店舗や設備など、すべてを失った中小業者にとって、貸付のみによる「自力復興策」ではとても再建できない。
 農業や漁業では独自の法体系の下で直接支援が行われてきた。中越地震の際には、養鯉場(池)の補修にも補助が行われている。個々の事業資産であるだけでなく、生存権的財産であり、雇用の場や避難所にもなるなど、公共的な性格を併せ持っている中小業者の店舗、事務所、工場などを対象に、限度額500万円以上の再建・補修支援制度を創設する必要がある。
 そして、災害救助法第23条1項7号(生業に必要な資金、器具又は資料の供与又は貸与)を発動させ、事業再開を支援する。
 また、中小業者はリースを組み、店舗を賃貸するなど多様な形態で自営している。震災が呼び起こした経済危機を乗り越えるためにも、幅広い中小業者のリース料や工場家賃など、固定費負担を軽減する直接支援が求められている。
(2)債務免責などの特別措置で、地域産業の再建を促す
 多くの被災業者のささやかなる願いは、「せめて、ゼロからのスタート」を切れるようにしてほしいというものである。過去の震災・津波などの自然災害で負債を負っている業者もおり、「裸一貫からやり直し」ならまだしも救われるが、二重、三重のローンやリースの支払いを抱えての再出発は不可能に等しい。
 政府が行う債権放棄の対象を高度化資金だけにせず、さらに広げ、使用不能となった資産や中小業者に対する金融機関の債権の買い取り、被災者の過去の借金・債務を免除、免責する特別措置を行い、生活再建と営業再開への意欲を育てることが重要である。また、設備・運転資金などの事業再生資金を無利子・無担保・長期で貸与するなど、未曾有の大震災の事態に即応した事業再開への支援を行う必要がある。
(3)復旧・復興に伴う公共工事の地元発注、施設の共同利用を推進する
 被災地のがれき撤去や仮設住宅の建設に地元建設業者や水産関連業者、また、その従業者が携われるようにする方向が示されている。しかし、仮設住宅建設が急ピッチで進められるなか、受注した企業から、遠く県外の業者に応援(外注)依頼がされ、単価たたきも行われている。地元発注を徹底し、「ピンハネ」を防止するために、発注元となる国や自治体からの直接払いを行う必要がある。
 仮に、大手建設業者やハウスメーカーが震災復興関連事業を受注する場合でも、必ず地元中小業者や被災住民への発注、雇用を義務付ける。
 また、小規模事業者なども多いことから、倉庫、店舗・作業所、冷蔵庫など、当面の事業再開に必要な施設を公共施設として建設・整備し、共同利用できるようにすることも重要である。
 地域産業の重要な部分を漁業や水産加工、農業が担ってきた経緯も踏まえ、漁船の共同使用や震災で使えなくなった田畑の復旧を国の責任で行うなど、地域の実情や被害の実態に合わせて、第1次産業の復興支援を強化する。

2、住民本位の災害に強いまちづくりを進めるために

提言3
被災者が参加し、地域コミュニティーを生かしたネットワーク型防災システムの確立を図る

 東北地方は総じてまだ地域コミュニティーが存在し、生きた役割を果たしていることから、被災者が参加し、住民が主人公のネットワーク型防災システムを実現する基盤がある。これを無視し、市民不在の「都市計画決定」や復興計画を行ってしまえば、なんの愛着も持てないまちとなる恐れがある。
 地域単位で住民参加による防災システムの具体化を図り、復興計画の策定も地域での議論を積み上げて合意形成を図る必要がある。被災者が知らぬ間に「元のまち」からはじき出され、移転に移転を重ねるうちに地域がバラバラになってしまっては真の復興はできない。地域の絆、結びつきを大事にした復興を図るために、地域の中小業者を含む住民参加のシステムを具体化する。
 また、すべての校区を単位として地域福祉・防災センターを設置し、住民主体で運営を図るようにすることも忘れてはならない。

提言4 行政によるトップダウンの「都市計画」「都市整備」の押し付けではなく、住民と地域産業を主体にした被災者・住民が主人公の復旧・復興計画を策定する

 地域の復旧・復興計画を考える上で大切なことは、被災者の痛苦の体験や思いに心を寄せることである。橋や道路、港などインフラが整備され、立派な防波堤や高層復興住宅が建設されたとしても住民がいなくなったのでは、話にならない。復旧・復興の主体はあくまでも地域住民であり、住民の意思や生活文化、民俗性を大切にし、地域の特性を踏まえた自治体ごとの復興計画づくりを進めるべきである。その際、地域の実情を熟知し、専門的知識を蓄積している公務労働者の役割発揮が期待される。
 地域主体、住民主人公の復興計画づくりの手順としては、まず、住民の発意に基づく住民主導の復興計画案を策定し、地域住民と行政との協同と連携によって計画決定へと進む必要がある。この計画の中で、市街地の復興のための、土地区画整理事業、市街地再開発事業、住宅地区改良事業、さらに、防災集団移転促進事業なども住民合意の下で総合的に位置付けられるべきである。
 莫大な費用を注ぎ込みながら、住民・中小業者のためにならない再開発計画が政府、財界主導で進められるという失敗を二度と犯してはならない。

提言5
大規模開発・プロジェクトによるまちづくりではなく、自然との調和を図った災害に強いまちづくりを進める

 被災者の生活確保・再建および地域の経済活動の継続・復興のためには、これらの活動を支える市街地の復興および住環境整備が不可欠となる。
 また、被災者の生活と密接に関連するガス、水道、電気、通信、道路等の都市基盤施設については、迅速な復旧を行うことが望まれる。災害によって脆弱性が明らかになった施設については、耐震性の強化等を含む、より安全性に配慮した都市基盤施設の復興を実施していくことが求められる。自然の驚異に謙虚な姿勢を忘れず、自然環境と調和した施設づくりを考えなければならない。
 阪神・淡路大震災では、約10兆円といわれる被害総額に対して10年間で660事業・17兆円の「復興計画」が策定された。そこでは、神戸空港や高速道6基幹軸など震災復興と直接関係のない大規模プロジェクトが組み入れられ、「震災特需」で潤う大企業と住宅や職を失い生活が再建できない被災者との格差を生み出した。
 復旧事業が迅速・効率的に行われる必要はあるが、「開発優先」「ゼネコン奉仕型」のハコモノづくりに終始してはならない。災害復旧事業は、「地域循環」の基本を貫き、地域経済に貢献するよう、被災者の雇用と仕事確保に十分配慮して行われるべきである。

3、原発被害の損害賠償を直ちに行い、既存施設の総点検を

 東京電力福島第1原発の爆発・放射能漏れ事故によって、自然豊かな環境やまちが汚染され、何の罪もない住民がふるさとから追い出されている。放射能汚染が深刻な地域では、震災による犠牲者の確認も、家に帰ることもままならない。1カ月を経過した時点でも事態は収束せず、避難生活を強いられる住民・中小業者は不安と怒りを募らせている。
 農業や漁業だけでなく、あらゆる地域産業が放射能汚染による被害を受け、国全体の経済活動にも重大な影響が広がっている。
 こうした現状を踏まえ、緊急に次の2点を提言する。なお、この原発事故・放射能汚染からどうやって地域を再生・復興させるかも重要な課題となっている。こうした問題についての提言は別途行いたい。

提言6
東京電力と国は福島原発事故を人災と認め、中小業者への損害賠償を直ちに行う。

 福島県下の中小業者は、「福島への輸送料は3倍」「製品は受け取れない」といわれ、「福島ナンバーの中古車は値がつかない」「宿泊予約はすべてキャンセル」など、放射能汚染を理由にした実害を受けている。長年、苦労して築いてきたのれん・信用・得意先などすべてを失い、たとえ放射能から逃れたとしても、ローンや借り入れの返済などは容赦なく迫ってくる。このままでは中小業者は生きていけない。
 政府は「経済被害対策本部」などを設置し、賠償方針や補償範囲などを検討している。これまで、農産物や海産物の被害補償は表明されているが、中小業者の営業被害の補償については明らかにされていない。
 福島原発の事故は、「安全神話」をふりまき、安全対策をなおざりにして原発を推進してきたことによるもので、まさに「人災」である。重大な事故を引き起こした東京電力(東電)と、原発建設を推進した自民党政権以来の政府の責任は重大である。東電と政府は加害責任を認め、通常の営業を行っていれば得られた利益をはじめ、ローンやリースなど債務の返済、固定費などの支払いによって中小業者がこうむった損害を賠償すべきである。その第一義的責任を負う東電は直ちに損害賠償の仮払いを行う必要がある。また、東電は補償や避難への対応のためにも、万全の体制を取り、住民・業者の相談に乗るべきである。

提言7
新たな原発建設計画を全て中止し、既存施設の総点検を行う。

 地震が頻発するわが国には、北海道から鹿児島県まで、13道県に17カ所・54基もの原子力発電所があり、54基もの原発が稼働している。さらに、民主党政権は原発の新増設計画を推し進め、14基が建設中か計画中となっている。稼働中の原発には、近い将来、発生が予想される東海地震の震源域にある浜岡原発(静岡県)もある。
 原発の危険性が誰の目にも明らかとなったいま、新たな原発建設計画をすべて中止し、既存施設の総点検を直ちに行う必要がある。
 そして、原発依存のエネルギー政策から、自然エネルギー(再生可能エネルギー)への転換を図るべきである。自然エネルギーの活用を自治体の地域づくりに位置づけ、主要な公共機関や病院、大企業には自家発電の設備なども備えるように促していかなくてはならない。
 「大量生産、大量消費、大量廃棄」、いわゆる「24時間型社会」というエネルギー浪費の社会のあり方を見直し、食糧やエネルギーなど地域社会に欠かせない戦略物資は地域内で自給できるよう、産業構造の転換と強化を図るべきである。そのためにもこうした分野で、中小業者の力が発揮されるよう、育成・支援する必要がある。

4、復興財源は財政の無駄の削減と大企業・大資産家の応能負担で


提言8
復興財源は消費税などの大衆課税とせず、政党助成金や米軍への思いやり予算など不要不急の財政の見直しと、大企業の内部留保の活用や応能負担の原則による適正な課税によって賄う。

 復興財源をめぐり、「復興税」など庶民増税で賄う案が取り沙汰されている。民主党の特別立法チームがまとめた「東日本大震災復旧復興対策基本法」(素案)は、財源として特別法人税や特別消費税の創設、「震災国債」の日本銀行による引き受けの検討を盛り込んだ。
 しかし、再建をめざす被災者にも容赦なく負担を強要し、景気を底から冷やす消費税増税による財源論を容認することはできない。重要なことは、「応能負担」「生活費非課税」の原則に立って財源を確保することである。
 2011年度予算は、大企業と大資産家に2兆円もの減税をばらまく一方、5兆円規模の軍事費や中小企業予算に匹敵する規模の米軍への「思いやり予算」の5年継続を盛り込んでいる。こうした無駄遣いと大企業・大資産家への減税バラマキをやめ、被災地復興に振り向けるべきである。また、年間320億円もの政党助成金は、政党がその気になれば直ちに復興財源に回すことができる。
 併せて、不要不急の大型公共事業やグアムの米軍基地建設費の肩代わりを中止し、高速道路無料化、原発の建設・推進経費をやめれば、年間5兆円程度の財源確保が可能になる。
 また、従来の国債とは別枠で「震災復興国債」を発行し、大企業に引き受けさせることによって、中小業者や労働者の犠牲の上にため込んだ巨額な内部留保を活用させることができる。

結びにかえて

 いま、被災地には、「新築した家が引き渡す直前に津波で流された。工事代はもらえないが、材料代は払わなければならない」と融資を申し込み、信用に応えて再出発をめざす中小業者がいる。水産業者は「2年で収穫できるワカメの養殖から始めるか」と励まし合い、農家は「必ず再生したい」と歯を食いしばっている。
 しかし、この苦難を被災者のものだけにしてはならない。東日本大震災は未曾有の大災害となり、被災住民に多大な艱難辛苦をもたらしている。しかし、国民がその持てる英知と共同の力を発揮すれば、必ずこれを乗り越えることができる。
 いまだ予断を許さない福島原発事故によって、「安全神話」は打ち砕かれた。エネルギー政策の根本的転換が世界でも始まっている。また、震災を契機に、市場原理による経済効率第一主義が、国民生活を支えるライフラインや防災設備などの脆弱さの原因になっていることも明らかになった。
 自治体職員はじめ従事者の献身的な奮闘で支えられているものの、医療や福祉、公務労働の現場は民活の推進で手薄になっている。合併して大きくなった自治体ほど被災者への対応が遅れ、車に依存した地方経済とまちは、燃料が供給されないと直ちに機能不全に陥る。計画停電で消費生活のあり方にも見直しが必要だろうことは被災地ばかりか多くの国民が痛感したところでもある。
 わが国は、経済が行き詰まり、その打開をどう見出すかが切実な課題となっていた。この震災から得た教訓を踏まえ、わが国経済社会の矛盾を深くえぐり、根本的に見直し、転換する契機としなければならない。
 われわれは、その際、歴史と伝統を継承し、地域性豊かな被災者主人公の地域の復興を果たす上でも地域に根ざした小企業・家族経営が、大きな力を発揮しなければならないと考える。そして、この立場から、東北の復旧と日本経済の再生に力を尽くす。

全国商工新聞(2011年5月 9日付)
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